上 下
197 / 1,022

妖怪族の国14

しおりを挟む
 ナゴミちゃんは名残惜しそうに僕に握手を求めてきた
 すっかり懐いてくれて嬉しい限りだよ
 天狗族の里のすぐお隣、ほぼ森に囲まれた未開のジャングルのような場所が鵺族の里だ
 鵺族はかなり強力な種族で、妖術や幻術に長けている。昔は妖狐族と激しく争ってたそうだけど、危険な魔王が現れたことで結束して以来喧嘩はないそうだ
 ではなぜ鵺族ではなく妖狐族が族長になったのか。それは九尾族が生まれたから
 鵺族と九尾族では力に差があり、力を重んじる鵺族は九尾族に勝てないと知って二番手に甘んじたらしい
 ちなみに妖怪族の中での序列は力、天狗族が場を取り仕切ることが多いのは、一番調和を取るのがうまいかららしい
 鵺族の里での案内はクウキョさんの娘、次期当主のウツロちゃん。人見知りはないけど寡黙だ
「ようこそ・・・。こっち、案内する」
 う、うん、可愛いけど、苦手かも
「ここ」
 ウツロちゃんが指さしたのは森の中のひらけた場所。そこには広範囲にわたって色とりどりの花が咲き乱れていた
「ここは?」
「花壇」
 会話が続かない・・・
 どうしよう、グイグイ行ってみていいのかな? でも嫌われちゃうのは嫌だなぁ
「この花はなんていうの?」
「キリキリマイ。触るの、気を付けて。葉っぱ、良く切れる」
 なるほど、確かにこの葉っぱ、カッターみたいに鋭い
「そっちはデンカノホウトウ。これも、葉っぱよく切れる。あれはネンネコ。花の形が猫そっくり。あれはカタカムナ。大昔の女神の名前ついてる」
 花、好きなのかな? すごく流暢に鼻息荒く説明してくれてる
「すごいねウツロちゃん。詳しいんだね」
 褒めてみると、胸を張ってどうだとばかりな顔
「これくらい、当然。お花、私は世界一詳しい」
 何この可愛い子・・・。抱きしめたくなるじゃない
 寡黙だけど、好きなこととなると結構話してくれた。特に花関しての知識はすごくて、どんな花だろうと詳しく説明してくれた
「この花、みつが甘くておいしい。飲んでみて」
 花の花弁を摘み、その裏を吸ってみる
「甘! ハチミツくらい甘いね!」
 僕達の絶賛の声をまるで自分のことのように喜んでる。可愛すぎます
「満足、した?」
「うんうん、いい花畑だね」
「でしょ? ここ、私が、作った」
 一同その発言にびっくりした。これだけ広大な土地をウツロちゃんは一人で開拓して、一人で花を植えて育てたんだとか。しかも花は年中違った様相を見せるように計算しつくしているらしいからさらに驚いた
「私、本分身、使える。いくらでも、分体を作り出せる」
 本分身とは妖術の一種で、普通の分身と違って実態を持った分身を作り出せる妖術だ
 それぞれ意思を持っているからそのみんなで協力して花畑を作り出したらしい
「小さいのにすごいね」
「む、小さくない。これでも一人前の証、持ってる」
 胸元からお父さんのクウキョさんが書いたと思われる免許皆伝と手書きで書かれた小さなプレートを取り出した
「お父さん、認めてくれた。私、もう大人」
 本来もう少し年を取らないとこの証はもらえないらしく、ウツロちゃんはあまりにも優秀だったからクウキョさんが手書きの物をくれたらしい
 クールに見えて子煩悩なんだクウキョさん
「これで大人、わかってくれた?」
「うん、やっぱりウツロちゃんはすごいよ!」
 それで機嫌を直してくれたみたい
「次、こっち。ここ、お父さんが考えた。あとらくしよんという遊び場」
 あ、アトラクションのことか。どんなものか楽しみだ
「これ。風に乗って、空を飛ぶ。急降下して、目標の的に着地。そこの景品もらえる」
 どうやら風の妖術で空中に浮かんで、そこから急降下で降りて着地の妖術がかかった的を狙うゲームみたい
 たとえ的から外れても着地妖術はこの辺り一帯にかかってるから大丈夫らしい
「景品かぁ、何がもらえるのかな?」
「それは、お楽しみ」
 クフフと笑うウツロちゃん。こんな一面もあるのか。やっぱりかわいいなぁ
 準備をして、僕らはそのアトラクションへと乗り込んだ
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

異世界転生はうっかり神様のせい⁈

りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。 趣味は漫画とゲーム。 なにかと不幸体質。 スイーツ大好き。 なオタク女。 実は予定よりの早死は神様の所為であるようで… そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は 異世界⁈ 魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界 中々なお家の次女に生まれたようです。 家族に愛され、見守られながら エアリア、異世界人生楽しみます‼︎

処理中です...