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黒の国25‐4前編

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 九十四階層
 カラフルな部屋に八人の男女が立っている
「強者の気配」
「よく来たね~」
「初めまして、ですわ」
「六人も? 大丈夫、ですかね?」
「ラフィナ、いつでも行けるよ!」
「僕達最初に行っていいかな?」
「私達が最初だとすぐ終わっちゃうわよ?」
「大した自信じゃない。ま、リーダーの私は最後でいいわよ」
 八人はこれからの戦いを楽しみにしているみたい
 よし、期待に応えられるよう、いや、むしろ期待を超えるくらい頑張ろう
「まずは俺から行かせてもらう。異論は?」
「ないよ~。シュウエンさんならみんな納得してくれるって」
「うんうん」
 最初に僕らの前に立ちはだかったのは燃えるように赤い髪と目の鬼人?の男性
 鎧まで真っ赤だ
「俺はシュウエン、八魔人が一人、赤のシュウエンだ。さて、全員で来てもいいが、どうする?」
「この人相当強いわ。私にやらせて!」
 クノエちゃんが名乗りを上げた
 なんだかんだでクノエちゃんも戦いが好きなのかな?
 クノエちゃんが刀を抜く
 それに応じるようにシュウエンさんも刀を抜いた
 その刀は刀身まで赤くて、まるで燃えてるみたい
「焦熱地獄の炎、おぬしのような童に止められるか?」
「ふん、やって見せるわよ。これでも次期九尾族の長なんだからね!」
 二人の戦いが始まった
 刀の重なり合う音が聞こえ、火花が散る
 その速さはとても人の目で追えるものじゃない
 精霊である僕達ですら一瞬見失いそうになるくらい
「百花豪炎《ひゃっかごうえん》!」
 シュウエンさんの刀から弾け出す炎
 それがクノエちゃんの服を焦がす
 でもクノエちゃんの職剣術士は、火に耐性があるためあまり効いてないみたい
「ならこっちも! 九重炎《ここのえにし》」
 九個の火球を刀に纏い、放った
「やるな」
 シュウエンさんはその炎を簡単に撃ち落とす
「紅移火《くれないうつりび》!」
 シュウエンさんの刀から炎が吹き出る
 そのままクノエちゃんとつばぜり合いになり、シュウエンさんの刀の炎が蠢き始めた
 じわじわとクノエちゃんの刀から体へと這って行く炎
「くっ」
 火に耐性があると言っても、常時纏わりつかれればだんだんとダメージになっていく
 クノエちゃんは一旦飛びのいて体についた炎を振り払った
「ほお、あれを振りほどくか、ならば・・・。獣遊火《けものあそび》!」
 今度はシュウエンさんの炎が大きな狼の形に変わる
「げ、そんなの反則じゃない!」
 燃える狼はクノエちゃんに向かって走り出した
「でもそのくらいなら! 紅孔雀べにくじゃく!」
 クノエちゃんの炎が九枚の羽になり、燃える狼に降り注いだ
 狼は形を保てずに消え去る
「ふむ、これでも駄目か。では秘剣技! 焦炎天斬しょうえんあまつぎり!」
 高く飛び、全身を燃え上がらせながら落ちて来るシュウエンさん
 熱くないのかな?って場違いな疑問が浮かぶのを振り払ってその戦いに見入った
 クノエちゃんはまっすぐにその炎を見、受け止めた
 地面が抉れるほど激しい衝撃を、クノエちゃんは見事に耐えた
「いいぞ! お前とは本気でやってみたくなった!」
「なら私も、本気で!」
 シュウエンさんを撃ち返す
「灼熱剣技、天神風あまつかみかぜ
 ゆっくりとした動きで刀を振るシュウエンさん
 そこから焼けつくような風が吹き始める
 まずい、こっちにもダメージが!
 僕は結界でその風を防いだ
 クノエちゃんは風に立ち向かって刀を構えている
「まだだ、灼熱奥義、天葬滅てんそうめつ!」
 風の中、一瞬でクノエちゃんとの間合いを詰める
 勝負はその一瞬で着いた
「九尾流剣術奥義、九連王牙きゅうれんおうが!」
 九つの刀が出現し、そのうちの一つがシュウエンさんの動きを止め、残りの牙がシュウエンさんを仕留めた
「く、まさか俺がこのような童に・・・。ハハハ、いいぞ童、いい戦いだった」
 クノエちゃんの力を認め、嬉しそうに笑うシュウエンさん
「もう! 何やってるんだよシュウエンさん」
「ハハハ、すまんすまん、だが分かったろう? 一筋縄ではいかんぞ」
「うん、だろうね。いける? メロルビア」
「ええ、女の子ばっかりなのが残念だけど、私で終わらせるわ」
 今度は全身が青い女の子
 鋭い触手が幾本も生えてて、かなり際どい衣装だ
 それなのに顔立ちはおとなしそう
「では、私と戦いましょう。私はメロルビア、八魔人の一人、青のメロルビアです」
 メロルビアさんは触手をうねうねと動かし、丁寧にお辞儀をする
「ではここは私が、いいですか? リディエラ様」
「うん、頑張ってねテュネ」
 テュネに任せれば大丈夫そう
 二人は前に出て、お互いにお辞儀をする
「精霊、なのですね?」
「ええ、よくわかりましたね」
「私、気配を探知するのが得意なんです」
 談笑してるけど、お互い戦う気は満々みたい
 既に構えてる
「それでは参ります! 激奏、流水剣舞!」
 ハープを剣に変え舞いを舞うようにメロルビアさんへ斬りかかった
「ブルーレイン」
 メロルビアさんが視界から消えたと思ったら、十人ほどに増えた
 そこから触手による攻撃が雨あられとテュネを襲う
「重奏、音斬」
 そんな触手攻撃をいともたやすく切り刻むテュネ
 全ての攻撃が見えているからこそ対応できるんだろう
「スカイウォーク」
 メロルビアさんが空を駆け始めた
「フルペイン」
 触手がのび、空中からテュネを捕らえようとしている
 素早く動いて躱すけど、メロルビアさんの触手はいつの間にか床からも生えていた
 それに掴まれる
「う、ダメージが・・・」
 どうやらこの触手、触れられるだけでダメージを受けるみたい
「ふふ、捕まえた」
 メロルビアさんが微笑みながらテュネに近づいてくる
「もう、終わりよ」
 触手でテュネをぐるぐる巻きにすると、どんどん体力が奪われていった
「く、爆奏、終焉のレクイエム」
 まだ自由の奪われていなかった右手だけでハープを鳴らす
 するとそのハープが爆発した
 自分ごと相手を巻き込む捨て身の戦法だ
 至近距離でその爆撃を受けたためメロルビアさんは一気に戦闘不能になって倒れた
「う、そ、なんであなたは倒れて、ないの?」
「あなたの触手のおかげです」
 どうやら触手に巻かれてたおかげで自分へのダメージは最小限だったみたい
 不幸中の幸いってやつだね
「あらら、メロちゃんまでやられちゃった。なら次は、アトロン、行きなさいよ!」
「なんで僕が君の言うこと聞かなきゃいけないのさ」
「いいじゃない聞いてくれたって! 友達でしょう!」
「だって君、僕のこと食べたじゃん」
「それはっ、しょうがないでしょ! 私だって操られてたんだから!」
 どうやらこの紫と黒の二人、昔何かあったみたい
「とにかく、今は私がリーダーなんだから!」
「分かったよ。しょうがないな」
 紫色の少年が歩いてくる
「さぁ、次は僕だよ」
 少年は指をパチンと慣らした
「シームルグ、おいで」
 空から大きな鳥が現れ、少年に頬ずりする
「僕のシームルグは強いよ。勝てるかな?」
 少年はシームルグと言う怪鳥を撫でた
 シームルグは一鳴きしてこちらに向かって来る
「では~、次は私が~、行きますね~」
 フーレンがシームルグと対峙した
 大丈夫かな?
 一抹の不安はあるけど、変なドジをしなければ大丈夫だと思う
 うん、大丈夫だと思おう
 大杖を構えたフーレン
 一体と一匹の戦いが始まった
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