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白黒 鬼姉妹の冒険13

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 テンセン先生はゆっくりと語り始めた
 仙力とは仙人が扱う力で、神が使う神力に近いもの
 その秘術は仙人の国である桃源郷に代々受け継がれている 
 そう、私たち鬼仙の先祖であるモモタロウの故郷
 ちなみに鬼人族の首都トウゲンはこの桃源郷から付けられたものらしい
「妖術は無事に操れるようにぃ操れるようにぃなりましたぁからぁ、次はぁ、仙力をぉ扱えるようにぃならないとぉいけませんねぇ」
 仙力、一体どんな力なのかな?
 私とお姉ちゃんが使ってたのはちょっとした傷が治る程度のものだったけど
「まぁ、桃源郷のことはぁ、私にもわかりませんからぁ。自分たちの目でぇ確かめるしかぁないですねぇ」
 先生が言うには、桃源郷は閉ざされた国で、外界との接触を断ってるらしい
 侵入してくる者には容赦なくて、うわさでは桃源郷付近に出たSランクの魔物を一撃で倒したという目撃証言もあるくらい強い人が多いんだって
「ではぁ、先生からぁ、卒業証書を授与ぉしますぅね」
 テンセン先生が卒業証書としてくれたのは、可愛い狐のスタンプだった
「クスッ、可愛いでしょぉ? 私のお気に入りぃなんですよぉ」
 確かに可愛い!
 紙に押されたスタンプを丁寧に梱包して、大事なお守りとして懐にしまった
「では先生、今までありがとうございました!」
 お姉ちゃんに合わせてみんなでお辞儀をする
「またいつでもぉ、遊びに来てくださいねぇ」
 私たちは先生たちに別れを告げて妖怪族の国を出た
 今度は他の集落も行ってみよう! クノエ姫と一緒にね
 国を出ると桃源郷を目指して北へ歩き出した
 ここから距離は少しあるけど一週間もあればつくかな?
 それにしても閉鎖された国か・・・
 父様や母様は行ったことがあったみたいだけど、私たちはまだ一度も訪れてない
 入国させてくれるかかなり心配だよ
「今日はもう遅いからこの辺りで一泊しましょう」
 河原に到着すると、お姉ちゃんは簡易のテントを組み立て始めた
 このテント、鬼ヶ島の雑貨屋に売ってたんだよね
 なんでも異世界から来た人が作ったんだって
 便利だよね~
 さて、水を汲んで木を集めて、魚を取って
 これで良し、今日はオサカナヤイターノ(魚を塩焼きにしたものをハクラが勝手に名付けたもの)だね
 焼きたてを一口ハムり
 おお!これは!
 フワフワの身とぱりぱりの皮に絶妙な塩加減!
 幸せの味ですよ
 アカネが骨を喉に引っ掛けた以外はトラブルもなくて、綺麗な星空を見ながら寝袋というアイテムに入って眠りについた
 この寝袋も同じ雑貨屋で買ったものなのです!
 次の日、再び歩き出した私たちは、アカネの提案で赤い狼に乗って移動することにした
 この子たち、すりすりと頭を寄せてくるからすっごく可愛い
 やっぱりアカネに一番懐いてて、召喚された狼たちはぺろぺろとアカネをなめていた
「これでスピードアップですね。アカネにしてはいい提案だったと思いますよ」
「にしてはは余計っすよ」
 キキとアカネは本当に仲がいいね
 犬猿の仲? この二人に至ってはそんなことはないのですよ

 それから三日
 予定より早く桃源郷の国境まで来ることができたんだけど、霧がかかっててよく見えない
 迷わないように全員をロープでつないでから中に入ることにした
 一寸先も見えない霧に段々と不安になって来た
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「うん、アカネ、キキ、ソウカ、いる?」
「いるっすよ」
「います」
「・・・」
 あれ、ソウカの声がしない
「ソウカ! 大丈夫!?」
「・・・」
 相変わらず返事がない
 ソウカが答えないなんてありえない
 あの子は寂しがりやだから私たちから一人で離れるなんてことしないはず
「どうしようお姉ちゃん、ソウカが」
「慌てないで、こういう時は落ち着いて耳を澄ましてソウカの声がするのを待ちましょう」
 その場でとどまっていると霧が晴れてきた
 私達がいたのは竹に囲まれた広場
 その広場の中央に、ソウカの死体が転がっていた
「え? ソ、ソウカ?」
 血まみれのソウカは何も答えない
 触ってみると恐ろしく冷たくなっていた
「そ、そんな、ソウカ」
 涙があふれて止まらない
 みんなで名前を呼ぶけどソウカが起き上がることはなかった
 ソウカの死体を背負おうとかがむ
 ふと周りを見ると今度はキキが消えていた
「え、キ、キキ・・・?」
 ドサリと何かが目の前に落ちて来る
 それはキキの死体
 首が捻じれ、苦悶の表情で死んでいる
「キキ! 嘘でしょ!」
 お姉ちゃんも泣きながら戸惑っている
「あっ」
 アカネの声がした
 振り向いたけどアカネの姿はすでに消えていて、またどさりと目の前に何かが落ちてきた
 アカネの死体
 今度は胴体を真っ二つに切られていた
「あ、あぁあ、うわぁあああ!」
 私たちはなりふり構わず泣いた
 死体となった友人たちに覆いかぶさるようにして
 そして、気が付いた
 死体だと思っていたのは岩の塊
 さらにアカネたちはすぐそばで眠っていることに
「な、何が起きてるの?」
 お姉ちゃんは涙をぬぐい、状況を確認した
 アカネたちには傷一つついてなくて、ただ眠っているだけだった
 ここで気配に気づいた
 竹藪の中から何かがこちらを見つめている
「誰!」
 気配はすぐに竹藪から飛び出し、私達の前に立った
 正体は整った顔立ちの私達と同じくらいの歳の少年
「驚かせてしまったかな? すまない、一応敵かどうか確認させてもらったんだ。気を悪くしたなら謝るよ。あ、一応自己紹介をさせてもらうと、僕は伏羲ふっき、桃源郷の仙人だよ。ようこそ、鬼仙の姫たち」
 まだ頭の整理がついてない中、伏羲と名乗る少年は恭しくお辞儀をした
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