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黒の国18

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 二十一階層目
 ここはやばい
 ずーっと水源地帯が続いてるんだけど、サメのような魔物がずっと回遊している
 しかもかなり好戦的。そして今も来てる怖い怖い怖い
 大きな歯をのぞかせてこちらを飲み込もうとしている
 僕は結界を張ってその攻撃を回避した
 ガキーンと結界を噛んで歯が砕ける
 しかしそこはサメらしく、すぐに新しい歯に生え変わっていた
「ウォーターランス! アクアカッター!」
 フーレンが水魔法で応戦してくれるおかげで、大量のサメに取り囲まれることはなかった
 でも、なかなか前に進めない
「あ、もうすぐ岸ですよ。あそこから道が続いているみたいです」
 アスラムが指さしている方向には明かりが見え、そこからまたダンジョンのような道が続いている
 ひとまずサメを何匹か倒しながらそこまで泳いだ
「ふ~、体がふやけちゃった。しっぽもびちゃびちゃ。わっちのふさふさ尻尾が~」
 クノエちゃんは水に濡れた子犬みたいになってる
 可愛い
「私の~魔法で~、乾かしてあげるね~」
 フーレンが炎魔法で簡易のたき火を作ってくれた
 みんな水に濡れてるから乾かすのにちょうどいいね
 クノエちゃんは震えてるし
 僕たちは精霊だから寒くはないんだけどね
 でも、体はちゃんと乾かさないと、濡れたままだと動きにくいんだよね
「よし、大体乾いたかな?」
 一時間ほどで服もクノエちゃんの毛も乾いた
 クノエちゃんは元通りフワフワの毛並みになってる
「では進みましょう」
 エンシュを先頭に先に進んだ
 道中は魚の頭にタコの体を持った不気味な魔物が徘徊してて、クノエちゃんがグロッキーになっていた
 そいつらは動きが鈍いんだけど、時折生臭くて真っ黒な墨を吐いてくるから厄介だ
 別に変な弱体効果とかもないんだけど、とにかく不快
 でも倒すとなぜか薬草効果のある海藻を落としてくれる
「うぅ、もう早く次の階層に行こうよー」
 うねうねした魚タコを見るたびにクノエちゃんがそう促す
 迷路をしばらく歩き続けてようやく階段を見つけた
 バイバイ魚タコ、もう会わないといいね
 そう願ってた
 でも、叶わなかった
 次の二十二階層は魚タコプラス魚カエルに魚犬と言った頭が魚の魔物が大量にうごめいてた
 さすがにこれは、トラウマになりそう
 夢に出てきたら漏らす自信がある
「もう! 何なのよもう!」
 クノエちゃんは憤って刀で魔物たちを切り裂きまくっている
 そのたびに周囲に生臭い臭いが漂ってきて、思わず息を止めたくなる
 あ、精霊だから息はしてないんだけどね。臭いはね、わかるんだ
 そこからは臭い地獄
 クノエちゃんは途中で吐いちゃってた
「もうしばらく、魚は見たくない」
 ようやく階段に着いた頃にはクノエちゃんにトラウマが植わってしまったようだ
 
 そして二十三階層から二十五階層
 平面な船に乗って進み、時折飛び込んでくる水系の魔物を倒す
 今度の魔物は気持ち悪い見た目じゃなくて、ウミヘビや角の生えた魚、二十一階層にいたサメなどが相手だった
 難敵だったのは巨大なタコとイカのコンビ
 二十五階層に出たこいつらは非常によくできたコンビネーションで付け入るスキがない
 たくさんの触手が襲い掛かってきて、その上毒性のある墨まで吐いてくるから厄介だ
 僕の結界で攻撃を防ぎつつ、魔法やエンシュの飛連脚ひれんきゃく、クノエちゃんの火炎式燕かえんしきつばくらめといった飛び技で少しずつダメージを与えて行って何とか倒せた
 このタコイカコンビ、これでボスじゃないって言うんだから驚きだ
 前の階層で倒した蜘蛛よりはるかに強かったよ

 二十六階層目
 超巨大なクラーケンの体の上だった
 その上に出てくるイカ戦士複数と戦って見事に勝利!
 さっきのタコイカにくらべれば楽だったけど、剣を複数持った戦い方は意表を突かれたなぁ

 二十七階層
 ここもまだ巨大クラーケンの上
 ちょっと嫌な予感がしてくる
 ここではイカ魔法使いとイカ槍術士との戦い
 魔法で牽制されつつ、槍が繰り出される
 ここはフーレンの雷魔法とアスラムの土壁が役に立った
 イカ魔法使いは水魔法しか使ってこなかったので、大量の水を吸収してくれる土壁が大活躍
 魔法使いたちの攻撃がやんだところをフーレンが雷魔法で一掃した
 テュネが魔法強化のロックを歌ってくれたので、雷魔法も数倍の威力になっている
「順調ですね。このまま一気に駆け抜けましょう!」
 雷魔法で弱ったイカたちをエンシュの蹴りとクノエちゃんの刀が炸裂して次々に撃破していった

 二十八階層と二十九階層
 もちろん巨大クラーケンの体の上
 頭頂部あたり?で、イカ耳が見えている
 ここではなぜかタコとイカが混じった混戦部隊が襲ってきた
 連携も取れてて、結構戦いにくかったけど、雷魔法が有効だとわかったのでここは意外と楽に突破できた
 最後に出てきたタコとイカのリーダーみたいな戦士二匹も、雷魔法の直撃を喰らって動けなくなり、クノエちゃんの刀にぷすりとやられて倒された

 そしていよいよ三十階層
 嫌な予感は当たった
 超巨大なクラーケン、それがボスだったのだ
「ここまでよくたどり着いた」
 海岸のようなステージに広がる海
 これが魔法による仮想空間と言うんだからびっくりだよ
 その海いっぱいくらいの巨大クラーケンは語り掛けてきた
「わしがここの主、クラーケンのポチじゃ」
 ん? なんというか、ユニークな名前をお持ちで・・・
 そこからポチさんの非常に長い話が始まった
 かつて別の世界で人間たちに掴まり、ぼろぼろになっていた自分を黒族が助けてくれたこと、素敵な名前をもらって嬉しかったこと、ここで仕事を与えられたのを誇りに思っていること等々、約三時間にもわたる壮大な自分語りをずーっと聞かされた
 そして話が終わったと同時に、宝箱が出現した
「ほれ、このステージはクリアじゃ。 先に進むといいぞ」
「え? 戦いは?」
「戦いならさっき散々したじゃろうに。ここはわしの話を聞いてもらう部屋じゃ。 ほれ、宝箱の中身を忘れずに行くんじゃぞ」
 ポチさんは笑顔?で手を振った
 宝箱の中身は召喚用オーブ
 どうやらポチさんを召喚できるみたいだ
 う~ん、せまい迷宮だと召喚しようにもできないよねぇ
 なんせ五十メートルはあるんだもんポチさん
 まぁありがたく受け取って次に行こう
 ポチさんに別れを告げて階段を上って三十一階層へ向かった
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