上 下
140 / 1,022

白黒 鬼姉妹の冒険9

しおりを挟む
 次の気配は公園から南に少し行った場所にある崖
 見上げるとはるか上の方に木々の枝葉が伸びているのが見えた
 そこまで上がろうと崖に手をかけた瞬間に大きな岩が転がり落ちてきた
「うわ、危ないっすね!」
 岩はアカネの横をすれすれで落ちた
 当たっていれば死んでいたかもしれない
「おやおや、はずしてしまいましたな。ほっほ、私も耄碌したものですな」
 崖の上からコヅチ先生の声がする
 アカネたち、あんな先生に習ってたのね・・・
 確かに逃げ出したくなるのもわかる
「ここまで登ってくるですな。私にタッチできれば終わりですな」
 コヅチ先生の手にはすでに巨大な岩が持たれている
 それを振りかぶって、投げてきた
「ひぃ!」
 今度はキキの真横に落ちた
 なるほど、確かにぶっ飛んだ先生みたい
 でも、よけながら崖を登るだけなら
「行くよみんな!」
 私は妖力を手足にこめて崖を登りやすくした
 これによって岩肌に手足が張り付くようになる
 登り始めるとさっそく岩が転がり落ちて来る
 さっきみたいに振りかぶって投げて来ないあたりコヅチ先生も手加減してるのかな?
 岩を避けながらどんどん上がって、半分近くまで登ると、今度は丸太や木槌が落ちてきた
 木槌は先生のお手製なのか、堕ちてきた一つを掴んで見てみると、コヅチと名前が彫ってあった
 転がってくる分にはいくらでもよけようがあるからクミズ先生よりも安心かも
 と、思ってたんだけど、三分の二ほど登ったところで壮絶な攻撃が始まったのです
「これなら楽勝っすよ! だてにあのおっさんの攻撃受けてないっす!」
 私はアカネのこの発言のせいだと思ってるんだよね
 グシャという嫌な音がした
 アカネが肩に木槌の直撃を受けた
 落ちてきていた木槌の軌道が急に変わって直角に曲がり、アカネに直撃した
「ぐぅ、痛いっす、すいませんハクラ様、ちょっと、自分リタイアっす」
 アカネは落ちていき、地面に激突したけど、赤鬼特有の頑丈さがあるからこのくらいの高さなら落ちても大丈夫
 むしろ地面の方が抉れてるよ
 アカネはそのままミズキ先生の治療を受けている
「ほっほ、まず赤いのがリタイアですな。次は誰ですかな?」
 先生はまだ妖力を纏っているだけで妖術は使っていない
 つまりこれでもかなり手加減してるってことなんだよね
「私が結界を張ります! 姫様たちは私の後ろからついてきてください!」
 キキが王守盾によって私たちを先生の攻撃から守ってくれる
 この能力、本当に全方位の攻撃を防いでくれる
「ほほぉ、やりますな。では少し力を開放しますかな」
 先生がついに妖術を解放した
「絶技」
 先生は崖を駆け下りてきた
 その手には木製の刀と大き目の木槌が握られている
 そういえば、ここの生徒の子供に聞いたことがある
 コヅチ先生は長刀と鉄槌を使った戦闘を得意としてて、鉄槌で地面を揺らして相手の体制を崩したあとに刀で相手を斬るんだとか
 その生徒ちゃんたちが遠足で山に行ったとき、Aランクの魔物が出たのをコヅチ先生が一瞬で切り伏せたんだって
 Aランクを一撃・・・。つまりコヅチ先生も精霊様たちと同じくらい強いってことなのかな?
 おっと、そんなこと考えてる暇はない
 先生は目前まで迫っていた
「ほい」
 先生の木槌が崖を穿つと、崖が縦に裂けた
「ひっ、崖が」
 それによってキキの結界が解けてしまった
 そこを先生の木刀が思いっきり振りぬかれ、キキの脇腹にあたる
 そのインパクトの瞬間キキはとっさに両腕で防御したみたいだけど、両腕の骨が砕ける音と、キキのあばらが粉砕される音が聞こえてキキは落ちていった
「黄色いのも落ちたようですな。次は青いのか、それとも白か黒か」
「そう簡単にやられるような私たちじゃない!」
 お姉ちゃんが黒を解放したみたい
 コヅチ先生が視界を奪われてる
「ふむ、所詮はこの程度ですな」
 でもあっさり破られてコヅチ先生はまっすぐにお姉ちゃんを狙って走り出した
「危ないです~」
 ソウカが光りを屈折させて先生の目をくらませた
 そっか、こういう使い方もあるのね
「ほぉ、やりますな」
 先生が感心していると
「眷属大召喚!」
 アカネが復帰して昇ってきていた
 その周りにはたくさんの赤い狼が群れを成して走ってきている
「いくっすよおっさん! 大行進、オオカムイ!!」
 赤い狼がさらに召喚された
 どんどん召喚され、やがてそれは一つの牙となって先生に襲い掛かる
「ぐ、おお、これは・・・」
 その牙に飲み込まれ、先生はアカネの拳を叩き込まれた
 アカネはそのボーイッシュな見た目通り、格闘術も得意で、特に拳による連撃は岩をも砕くほど
 そんな攻撃をまともに受けた先生は大丈夫なのかな?
 あ、そんな心配いらなかったみたい
 全く効いてないよこの人
「ほっほっほ、いい攻撃でしたな赤いの。だが、まだまだ精進が必要ですな。とりあえずは及第点といったところですな」
 コヅチ先生は優しく微笑んだ
 こうしてみると気のいいおじいちゃんに見える
「では次へ進むですな」
 コヅチ先生との修行が終わった
 アカネ、大活躍だったね
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...