上 下
130 / 1,022

黒の国10

しおりを挟む
 それから三日ほどで資料は集まった
 予定より早かったのはみんな頑張ってくれたからみたいだ
 集まったのは数十枚の達筆に書かれた古文書と、巻物、それに十数冊の本
 これらに目を通していき、重要そうな情報を書き出していった
「あ!ここ見て!」
 最初にその情報を見つけたのはクノエちゃんだった
 全員クノエちゃんが持っていた巻物に目を通す
 ・・・
 うん、読めない
「なんて書いてあるの? 達筆すぎて読めないんだけど」
「えっとですね。闇の手より解放されし黒の者は、東にて消息を絶ったもよう。依然その足取り掴めず。異なる反応により妨害を受け、これ以上の捜索を断念せざるを得ない。だって。ご先祖様はどうやら黒族を探してたみたいね。ほらここ、私達一族の家紋である九つの尻尾が書いてある」
 ほんとだ。九本に分かれた尻尾のようなものが巻物の最後に書かれてある
「東と言うと魔の樹林あたりですね。あそこは魔力が濃すぎて我々でも入ろうとする者はいません。どうやらその森が怪しいみたいですね」
 カンナさんは地図を見ながらそう教えてくれた
「魔の樹林なら聞いたことがあります。精霊もおらず、魔物の跋扈する危険区域、確かにそこなら可能性がありそうです。しかし、私たちでも危険な区域をどうやって探索すべきでしょうか?」
 テュネの質問にはサニア様が答えてくれた
「私たちが先行します。大体の場所が分かりましたから私たちの監視の力で発見できると思いますよ。それに魔物程度なら私たちが蹴散らせますし」
 頼もしい。神様が二柱もついててくれるんだからこれほど心強いこともないね
 見た目は僕くらいの子供だけど、この二柱の神様は相当に強いってアマテラス様も言ってるし
 それにしても黒族はなんでこんな危ないところに入ったんだろう?
 静かに暮らしたいならもっといい場所があったんじゃないかな?
「ひとまず準備を整えて明日向かいましょう。今夜は英気を養うためにごちそうを用意させますよ」
 カンナさんの言葉でクノエちゃんの目が輝いた
「やったー! ごちそうごちそう! わちきあんみつとー、おしることー、ぱふぇが食べたい!」
「はい、そちらもデザートに用意させます」
 それを聞いてクノエちゃんは飛び跳ねて喜んだ
 なんだかんだでクノエちゃんも子供だからね。無邪気に飛び跳ねる姿がすっごく可愛い。と言うか僕もごちそうときいてワクワクしてる
 その日の夜、宴のようにして食事会が開かれた
 テュネたち大人はお酒を片手に様々な料理を食べている
 お刺身の盛り合わせ、これは小さな船くらい大きな船盛だ。輝くようなお刺身が並べられていて宝石みたい
 銀毛牛のステーキ、食べやすいようにサイコロ状に切り分けられてる。口に入れた瞬間とろけるような食感と油の甘みが広がる
 こんなに種類があったの?ってくらいに豊富なスープやみそ汁、シチューの入った鍋が並んでいる
 その数約四十種類だ
 そしてサラダや和惣菜、中にはコロッケらしきものやトンカツ、唐揚げなんかも山盛りで置かれていた
 全ての料理がビュッフェ形式で並んでて、どれでも自由に好きなだけ食べれた
 クノエちゃんなんかはご飯そっちのけでデザートのコーナーをせかせか動き回っている
 そんなに食べれるの?
 みんな大満足で食事会を終えて、用意された部屋へと戻って行った
 なんと、あれだけあった食事は全てなくなり、綺麗に平らげられた皿を見て給仕の人達が驚いてた
 大食漢のエンシュなんかみんなの注目を集めてたね
 部屋に戻る前に僕らは温泉に行くことにした
 そう、ここは温泉も湧いてるんだ
 それも天然の露天風呂。一応九尾族の城の中にあるんだけど、一般市民も無料で入れるらしい
 女風呂では既に露天風呂に何人か妖狐族の女性が浸かっていた
 僕たちも体を洗ってゆっくりと温泉に浸かる
 いよいよ明日は黒族に会いに行く
 なんとか闇人たちの情報を掴んで、妖精たちの敵をとってあげたい
 でも、僕たちに勝てるんだろうか?
 それに黒族の人達が情報を話してくれるかどうかも分からない
 いまだに闇人の目撃情報なんかも上がって来てない
 あれ以来全くの沈黙を保っている闇人
 でももし再び動き出して、母さんや精霊、妖精たちを襲ったら・・・
 そう思うと怖い
 今は、考えないようにしよう
 必ず闇人から僕がみんなを守るんだ
 決意を胸に、僕は眠りについた
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

処理中です...