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魔族の国24

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 温泉も回ったことだし、ちょっと気になっていた定食屋に来てみた
 なんでもワイバーンの肉やコカトリスの卵、バイコーンのハンバーグ等々を使った珍しい魔獣料理を提供してくれる店らしい
 この温泉街でも名物みたいだからこれは食べるしかない
 店に入るとさっそく良い匂いが漂ってくる
「いらっしゃいませ~」
 魔族の店員のお姉さんに席に案内されて、メニュー表を置いてくれた
 ペラペラとめくると、コース料理が目についた
 その時々で旬の料理が出て来るらしい
「これにしてみようか」
 値段もお手ごろだ
 5人分注文して料理ができるのを待った
 継がれたお水を飲んでみると、透き通るような柔らかい飲み口
「水美味しい! なにこれ!」
「確かに、普通の水ではないですね。温泉水ですか?」
「はい! そちらはミネラルに富んだこの土地ならでわの温泉水でして、うま味成分が特に多いんですよ。しかも若返り効果があるとも言われてるんです!」
 嬉しそうに店員さんが語ってくれた
 なるほど、この美味しさはうま味成分か
 出汁? いや違うか
 でも、温泉水にしてはかなり飲みやすい
 ミネラルもいっぱいあるのに軟水?って言うのかな?柔らかい感じ
 水に舌鼓を打っていると、最初の料理が運ばれてきた
 一品目はマンドラゴラの甘煮
 柔らかく煮こんであって、甘辛いソースによく合ってる
 大根みたいな見た目だけど、味はニンジンに近いかも
 次に来たのは薬草とエルレッドという真っ赤なジャガイモ、それとハイスピードピッグのベーコンを使ったジャーマンポテトのようなもの
 胡椒がふんだんにかけられているんだけど、それが香りを引き立てている
 お次はメインディッシュの魚料理
 宝魚メロカという魚を使ったムニエルだ
 マーセルというレモンのような果物の果汁を絞って食べてみる
 柔らかくてふっくら食感
 味もしっかりとしていて、油が良く乗っている
 どことなく鯛みたいな味だね
 でも、鯛よりももっともっと味が濃い
 生臭くない魚の良い香りが体を駆け巡る
 魚を平らげたと同時にメインの肉料理が運ばれてきた
 待ってました! ワイバーンステーキ!
 シンプルに岩塩と黒コショウで味付けされてる
 でもこの料理には実は二つの楽しみ方があった
 一つはそのまま塩コショウだけで。これは素材そのものの味をしっかりと出してあった
 口に肉汁が広がる
 鶏肉のような柔らかさと牛肉のような濃厚な風味、豚肉のようにうま味の詰まった味
 甘みもあって噛むほどに程よい弾力が歯を押し返してくる
 もう一つの楽しみ方はマーセルソースをかけてさっぱりといただくんだ
 レモンのような風味が相乗効果になって味がしっかりとする
 しかも噛み応えが変わった
 柔らかさがさらに増して、口の中でとろける
 マーセルには肉を柔らかくする効果があるらしい
 最後にデザート!
 マロリンゴというこの土地で育ったリンゴを使ったタルト
 その名の通りまろやかな味がする
 甘みはまるでハチミツみたいだ
 シャクシャクとした歯ごたえと芳醇な香り
 これなら何個でもイケそう!
 ふぅ、大満足だった
 お腹もいっぱいになったことだし、宿に帰って明日に備えよう
 温泉はまだまだいっぱいある

 三日目
 今日は火山のふもとにある火山温泉に向かうことにした
 普通の人は入れないほどの温度らしいから人間は入れない
 僕たちのようなエレメント体や温度に強い竜人、魔族と言った種族くらいかな
「この辺りは熱いね。火山帯があるからかな」
「そうみたいですね。心地いいですよ」
 エンシュの力が増している
 いや、エンシュだけじゃなくてアスラムもみたいだ
 この土地は地と炎にあふれているからだろうね
「あ、あそこに~、温泉があるみたいです~」
 フーレンが空から位置を確認してくれる
「あー! これは大変です~!」
 突然フーレンが大声をあげた
「この先で魔族の女性が魔物に襲われてます~!」
 それは大変だ!
 僕たちは空を飛んでまっすぐその場所へ向かった
 駆け付けると、魔族の女性が今まさに魔物の毒牙にかかろうとしていた
 比喩じゃなくて本当の毒牙だ
 真っ黒な蛇型の魔物が数十体
「あれはヴェノムパイソンです。一匹一匹はBランクですが、数が集まればSランクにもなります。あの数ですとAランク相当ですね」
 一斉に女性にとびかかるパイソンたち
 その間に入り、僕は刀を振るった
 そう、鬼ヶ島で打ってもらった刀だ
 これには炎のオーブがついている
 よってこれで斬ったモノは燃え上がるのだ!
 ものの数分でパイソンの群れを薙ぎ払い、生き残ったパイソンも逃げ出した
「ふぅ、大丈夫ですか?」
「ありがとうございます!」
 女性は僕にすがって来た
 あの、僕の背丈だと豊満なお胸が当たってますよ?
 ひとまず女性を落ち着かせて、怪我を癒した
 女性は何度もお礼を言って温泉の方へと走っていった
「あ、行っちゃった。また何かあるといけないから一緒に行こうと思ったのに」
「走れるなら大丈夫でしょう。それに向かう方向は同じです。何かあればすぐに追いつくでしょう」
 テュネがフラグめいたことを言う
 何かありそうな予感が・・・。そしてその予感は当たってしまった
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