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魔族の国11

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「たっ、助けて! リーダーがデスワームに襲われて負傷したの!」
 僕らが駆け付けると、白い軽鎧を着た女性が助けを求めてきた
 見た感じから彼女は戦士かな?
 彼女の案内で急いでそのリーダーの元へ向かうと、彼女の仲間と思われるナイト風の男性と戦士風の男性が道を塞ぐほど大きなワームと戦っているのが見えた
 エンシュとアスラムが助けに入り、残る僕らは負傷したリーダーの男性を抱えて後ろに下がった
 彼はワームに体当たりされ、どうやら肋骨を骨折し、その骨が肺に刺さったのか呼吸困難に陥っているみたいだ
「すぐに回復させます! フルヒール!」
 僕は欠損すら治す精霊魔法をかけて彼の傷を癒した
「う、ぐ、これは、呼吸ができる・・・。君たちが治してくれたのか? すまない助かった。これで仲間を助けに行ける」
 立ち上がって戦闘に向かおうとする彼を引き留めた
「何故止めるんだ? このままでは仲間の身が危ない! 君の仲間も危険にさらされてるんだぞ!」
「いえ、もう終わったみたいなので」
 エンシュとアスラムは一仕事終えた顔をしてこちらに帰って来た
 その後ろであっけにとられた冒険者二人
「す、すごいな君たち、デスワームと言えばBランクだぞ? ここいらでも屈指の強さだ」
 うん、そりゃこの二人は四大精霊だしね
 精霊のトップだからね
「もう歩けそうですか?」
「あぁ、助かったよ。お礼と言っては何だがこれを」
 彼が手渡してくれたのはダイアの原石だ
「たくさん採れたから気にしなくていいよ。命を助けてもらったからね」
 彼らと別れ僕たちは再び採掘に戻った
 ルビーは結構とれたので次はサファイアにエメラルドかな
 オパールなんかもいいかも
 あ、それぞれ別の宝石をアクセにするのもいいね
 例えばテュネならサファイア、きっと青色がテュネによく映える
 エンシュならルビーで、フーレンはトパーズ、アスラムはスモーキィクオーツかタイガーアイかな
 僕だったら何だろう?
 オパール?水晶? やっぱりダイアかなぁ? グフフ
 ダイアは魔力をこめやすくてマジックアイテムに加工しやすいみたい
 それぞれが着飾る分とは別にダイアのマジックアイテムを持っておくのもいいかもしれない
 よし、それならダイアを掘りに行くかな
 確かこの道の一番奥だったはず
 ダイアのとれる付近には危険な魔物も出るらしいので気を付けながら進まないとね
「リディエラ様、敵です。恐らく噂のアロロです」
 突然テュネが声をあげて注意を促した
 確か毒爪のある人に似た種族だったっけ?
 僕らは気配を消してこちらに来ている魔物を物陰から見た
 どうやら奴らは何かを抱えているみたいだ
 じっと息をひそめて目を凝らすと、抱えられているものの正体が分かった
 ダイアの原石と人だ
 まだ生きているみたいだけど奴らは肉食だ。このままだと食べられてしまう
「テュネ、エンシュ、彼らを助けよう」
 僕の声に返事をして二人は立ちあがり、洞窟が崩れないよう下位の精霊魔法を放った
「フレア!」
「ウォーターバレット!」
 二人の声が洞窟に響き、アロロの一団に直撃した
 悲鳴と共に抱えていた荷物と人が転がる
 人の方はどうやら痺れているだけみたいだ
 フーレンが風を使って後方へと運び、僕が痺れと傷を癒した
「た、助かったぜ嬢ちゃんたち」
 囚われていたのは僕たちを馬鹿にした冒険者のおっさ、おじさんたちだった
 アロロを倒しきった二人が戻ってくると、おじさんたちは非礼を詫びてくれた
「すまなかったな。これはわびのしるしと礼の品だ」
 そう言って渡してくれたのはミスリル鉱石だった
「え? こんなすごそうなのもらえないですよ」
「いいからいいから、もらってくれ、失礼なことを言って悪かった」
 彼らは僕に深く頭を下げた
 それなら遠慮なくもらうとしよう
 ミスリルって聞いたことあるけど、凄そうってだけでよく知らない
 でも、テュネたちの反応を見るにいいものなんだと思う 
 彼らに別れを告げると、目的のダイアを掘り始めた
 時折魔物が襲い掛かって来るけど、ここいらの魔物なら相手にならない
 あっさりと倒しながら採掘を続け、僕ら5人分を掘り終えると入り口に戻った
 ダイアをマジックアイテム加工屋に預け、他の宝石をアクセサリー加工屋に預けた
 二日後にはできるみたい
 それまではここの宿をとって露店商や食事を楽しむことにしよう
 ちなみにミスリルはエルフが加工できるみたいなので今度行ったときに頼んでみよう
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