上 下
73 / 1,022

エルフの国9

しおりを挟む
 ファガロトを探して森の中を探索するけど一向に見つからない
「一体どこに行ったのかな? 気配もないし・・・」
 僕たちはひとまず社に戻ることにした
 社にはすでに何人かのエルフの巫女が待っていた
 その中の一人、一番年長のリーダー巫女であるセレティさんが様子を聞いてきた
「そうですか、一体ファガロト様はどこへ行ってしまわれたのでしょう・・・。昨日は何事もなく出てきてくださったのに」
 巫女たちは悲しそうな顔をしている
 誰かが悲しそうな顔をするのは見たくない。絶対に見つけよう
「僕、もう一度探してくる。今度はもっと範囲を広げるよ。フーレン、一緒に来て。空中から探すんだ」
「はい~、わかりました~」
 他の三人の精霊には何かあった時のために待機しておいてもらった
 もしまたあの熊みたいな魔物が襲ってくるとも限らないしね
 上空から探し始めて約十分、社から遠く離れた森のさらに奥地に白い何かが走るのが見えた
「フーレン、あそこ」
 フーレンが持ち前のホークアイで確認する
「あれは~、恐らくファガロトですね~。あれ~? 何かに追われてるみたいです~」
 さらに加速してファガロトを追う
 その後ろには先ほど倒した熊と同じ魔物が涎を振りまきながらファガロトを追っていた
「もう一体いたのか! フーレン、皆を呼んできて! 僕があいつを食い止める」
「で、でも~、リディエラ様に危険が~」
「いいから早く!」
 おろおろするフーレンを行かせ、僕はファガロトと熊の間に入った
 熊の目は血走っていて、結構怖い
 あの四人が苦戦した相手だ
 震えを抑えながら熊に魔法を撃つ
「ライトレイ!」
 上級の魔法で牽制してみたけど、毛を少し焼いた程度でダメージがない
「う、これはまずいかも」
 熊は僕よりも大きな手のひらを振り上げて僕に振り下ろした
 そこまで速い攻撃じゃなかったからよけれたけど、直撃したら多分死ぬなこれ
「そうだ、できるかは分からないけど試してみよう」
 僕にはひそかに考えていたことがあった
 精霊魔法には協力して放つ合成魔法がある
 これは二人から複数人で魔法を合成してより強力な効果を得る魔法なんだけど
 僕には複数の属性魔法が使える
 もしもこれを同時に展開できたなら、僕一人で合成魔法が使えるかもしれない
 僕は魔力を溜めて集中した
 相手はこちらに向かって走ってきている
 く、間に合わない!
 飛びのいて避けようとしたその時、熊の攻撃をファガロトが防いでくれた
「私が止めます! その魔法を完成させてください!」
 ファガロトはどうやら話せるようだ
 彼女に感謝しつつ、魔法を合成していった
 四大精霊の合成魔法よりも多く属性を混ぜ込み、練り上げる
 イメージは虹
「セッテカラミティマギア!」
 空に巨大な魔法陣が浮かび、そこから七色の光が降り注いだ
 それは的確に熊を包み込み、一瞬のうちに骨も残さず消滅させた
 あとには大きな穴が開き、黒い口を開けていた
「リディエラ様! ご無事ですか?」
 フーレンがみんなを連れてきてくれたようだ
 僕は大きな魔法を使った反動で意識を失った

 気が付くとエルフの街にある宿のベッドに寝ていた
 周りを見ると、テュネたちのほかにエルフたちも心配そうな顔でみている
「あれ? 僕は一体・・・。ファガロトはどうなったの?」
 ファガロトは意外とすぐ近くにいた
 僕のお腹の上に乗っている
 結構な巨躯だったはずなんだけど、僕のお腹の上にいるのは子犬サイズ
 すごく可愛い
「この通り私は無事なのです! ありがとうございます!」
 小さなファガロトは僕に感謝の言葉を伝えてくれた
 そのあと僕の魔力が回復すると、テュネが深刻な顔で僕を叱った
「リディエラ様、もう二度と一人で合成魔法を使わないでください。あれは強力な力です。本来であれば数人で魔力を共有して行うもの、一人で発動すれば魔力を多量に奪われ、最悪死んでいてもおかしくありませんでした。ですから、どうか、どうか二度と・・・」
 また泣かせてしまった
 申し訳なく思いながら僕は深くうなずいた
 心配を掛けたくなかったからやってみたことだったけど、逆にもっと心配させてしまったみたいだ
 これからは使わないように気を付けよう
 何はともあれ、無事ファガロトも見つかったことだし、巫女たちも安心したみたいだ
 それにしてもあの熊の魔物は一体何だったんだろう?
 誰も見たことがないみたいだし、新種もしくは異世界から流れ込んできた可能性が高いみたいだ
 これも調査が必要だね
 シノノに頼んで部下たちを派遣してもらい、調査してもらうことにした
 原因がわかり次第連絡をくれるだろう
 僕たちはこの魔物が発生した原因がわかるまで、もうしばらくここに滞在することにした
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...