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鬼人族の国21

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 六日目
 この日は特に行事はないみたいだね
 屋台は相変わらず盛況し、たくさんの国から様々な種族が観光に訪れている
 妖精に近い種族のエルフやホビット、鍛冶に精通しているドワーフ
 ドラゴンに近いドラグニュートやリザードマン、スネークマン
 驚いたのは、種族の垣根を超えたカップルも多々いたことだ
 例えば人間と獣人、妖精とエルフ、鬼人とマーマンなどなど
 この世界にも当然差別はあるらしい。でもそれはごく一部の話で、種族など障害ではないのだ
 今日はのんびりと祭りの情景を楽しみながらグダグダと過ごすつもりなんだ
 ベンチに腰かけて祭りを楽しんでいた精霊たちと話していると、僕の目の前で女の人が派手に転んだ
「大丈夫ですか?」
 僕は声をかけてその人を助け起こす
「あ、ありがとうございます。急いでいたもので」
 その人を一目見て気づいた。この人、魔族だ
 よほど慌てているのか、すぐにその場を後にしようとしている
 でも四大精霊と他の精霊たちが取り囲むようにその人を引き留めた
「あなた、血の匂いがしてますよ?」
 エンシュが睨みながらその人の手を掴む
「っく、放せ!」
 女の人は手を振りほどくと無理やり囲みをすり抜けて走って行ってしまった
「気になりやすねなんだか、あちきがあの者の動向を探ってまいるでやんす」
 そう言ったのは影の精霊シノノだ
 ショートヘアを上で結ってちょんまげのようにしていて、まるで忍び装束のような服を着ている
 偵察が得意だそうで、先の祭典でも活躍していた娘だ
「ごめんなさいね、お願いするわ」
 テュネがお礼を言うと、シノノは魔族の女性を追って走っていった
 すぐに姿が見えなくなる
 影に入り込んで影から影へ一瞬で移動できるそうだ
「シノノに任せておけば大丈夫でしょう。お祭りに戻りましょう」
 アスラムがのんびりと言った。それならひとまずシノノに任せておこう
 場合によっては僕たちも何かしなきゃいけなくなるかもしれないので心の準備だけはしておこうと思う
 それにしても血の匂いがしたなんて物騒だ
 幸いこの祭りで流血騒ぎは一切起きていない。彼女は一体どこで血を浴びたんだろう
 気になったけどシノノが報告を持って帰るまでは下手に動かないことにした
 それから再び来ていた精霊や妖精たちと話したり、多種族の人達と交流したりしていたら日が暮れてきた
 晩御飯、どうしようかな?
 きょろきょろとあたりを見回していると、鉄板焼きの屋台が見えた
 この屋台、移動式なので今まで気づかなかったけど、相当色々な具材があるみたいだ
 お肉はもちろんのこと、豊富な海鮮類や朝とれた新鮮な野菜類もある
 早速呼び止めて食べてみることにした
 どうやらその場で焼いてくれるらしい
 具材によってベストな焼き加減をしてくれるのだという
 ただ、牛肉は焼き加減を選べるみたいだね
 僕は良く焼いたのが好みなのでウェルダン、テュネとエンシュもウェルダン、フーレンはレア、アスラムはミディアムレアといった具合だ
 まず前菜として新鮮野菜。パプリカやブロッコリー、ロッキャロという真っ赤なニンジンのような野菜に大根を輪切りにしたものまで焼かれた
 どの野菜も甘みが強い
 次に海鮮、イカタコ、ホタテ、エビ、ウニ、白身魚
 特にウニをソース状にしてエビに塗ったものは口の中でとろけるようで、幸せをかみしめているようだった
 そしていよいよお肉。お肉はさっき注文した通りに焼いてくれた
 肉汁を閉じ込めるように焼いてくれているので口の中でうま味がジワリと広がっていって幸せ
 牛を大切に育てているのがわかる
 最後にしめとして焼きめしを作ってくれた
 肉汁をソースと絡め、そこにまずニンニクチップを投入
 いい具合に焼けてきたところでご飯が入る。良い匂いだ
 ぱらぱらに焼けた焼き飯はニンニクの香りが程よくきき、お肉のうまみまでご飯が吸っている
 脂っこいかと思いきや、意外とあっさりしていてしめにぴったりだ 
 どうやら最後にいれた魚介のエキスが脂分をあっさりとさせてくれる正体だろう
 お腹いっぱいになって宿屋に戻った
 いよいよ最終日
 この日は二回目の抽選によってアマテラス様がお願いを聞いてくれる日だ
 選ばれるのは当たった十人だけ、今度こそ選ばれるといいなぁ
 そして、夜には盛大に花火が打ちあがる
 これも見ないとね。明日を楽しみに僕たちは露天風呂に浸かった後眠りについた
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