上 下
48 / 1,022

鬼人族の国16

しおりを挟む
 二日目、この日は屋台がさらに出店される日だ
 今はまだ食べ物の屋台だけだけど、三日目四日目から遊びの屋台が出るらしい
 射的、輪投げ、くじ、型抜き、ヨーヨーすくい、広場では水鉄砲による対戦型のゲーム
 それに、人魚救いという変わったものまであった
 この人魚救い、その名の通り鬼人族の実力者を倒して、姫のような格好をした人魚を助け出すと商品をもらえるというものだ
 もともと異世界の人が伝えた金魚すくいを聞き間違えて始まったゲームらしい
 敵である鬼人の人の強さはピンキリで、くじを引いて強さが決まる
 一番弱い鬼人に当たれば戦わずして商品をゲットできることもあるらしい
 ちなみに一番弱いのは設定だけで、本来はかなり強いとのこと
 これはもう開催されているみたいだから、あとでやってみることにしよう
 まずは腹ごしらえだ
 屋台を見て回ると鬼人国名物、鬼握りという看板が見えた
 美形のお兄さんお姉さんが手で握ったおにぎりを味わえるらしい
 具材は梅、こんぶ、鮭、てんぷら、高菜、わさび漬け、鳥そぼろなどなど、約30種類から選べる
 さらにはそれらを組み合わせることもできるらしい
 作り方はまず炊き立てご飯をパットに置いて少し冷まして人肌にする
 それを手のひら大にすくい、中に具材をこめて握る
 握り方はふんわり優しくだ
「美味しそうです~、私、あちらのお兄さんの握ったのが食べたいです~」
 フーレンが目を輝かせて吸い寄せられるように向かってる
 このままではお兄さんごと襲いかねないので、この屋台で食事にすることになった
 おにぎりを買った人には無料で熱いほうじ茶が出るみたい
 まあまずは注文だ
 僕は鮭と梅の組み合わせに高菜と明太子の組み合わせの二個
 テュネはわかめの塩焼きとトビコの塩漬け、魚の粗煮の二個
 エンシュはベーコンと桜鹿のしぐれ煮の二個
 アスラムは梅とたくあん、ムカゴ(山芋のツルにできる栄養素の塊)の塩焼きの二個
 フーレンは焼き鳥とカレー風味のタンドリーチキンのような鶏肉の二個
 目の前で素早く握られていく鬼握り、見ているだけでお腹がすいてきそう
 あっという間に出来上がった鬼握りが配られていく
 僕は一口おにぎりを頬張ってみた
 途端に広がる梅の香りと鮭の程よい塩加減
 具材はたっぷりと詰まってて、僕の小さな口でどこから食べてもすぐに具に当たるほどだ
 鮭と梅を食べ終わり、ほうじ茶をすする
「あつっ」
 熱いと思ったけどよく考えたら炎の魔法でもない限り火傷はしないんだった、それにこの暑さの中熱々のお茶を飲むとどっと汗が出そう、出ないけど・・・
 でも、どこかすっきりとして、むしろ清涼感が吹き抜ける気がする
 次に高菜と明太子。ピリッと辛い具はご飯にすごく合っていて、すぐに平らげてしまった
 そのおにぎりを食べ終わると、店員の鬼人のお姉さんが冷たく冷えた緑茶を出してくれた
 水出しでゆっくりとお茶の成分を溶かしこんでいる味わい深いお茶だと説明してくれる
 クイッと飲むと、熱々だったほうじ茶の効果か、体中が涼しくなっていく
 なるほど、涼しさをも味合わせてくれるということか
 おにぎり、すごくおいしかったです
 普段も普通に出店しているみたいなので今度行ってみよう
 季節ごとに具材も変わるというので今から楽しみだ
 腹ごしらえも終わったところで、今日からすでに開かれているらしい遊びの屋台に向かった
 まずは射的に挑戦
 幻獣や神獣を可愛くアレンジしたぬいぐるみや、お菓子の詰め合わせ、ハクラ姫やクロハ姫、三獣鬼や他の幹部のアイドルグッズなどが景品としておかれている
 僕はユニコーンのぬいぐるみを狙って撃った。その弾は見事にユニコーンの角に当たり、転がり落ちる
「おめでとうお嬢ちゃん!」
 屋台のおじさん(と言っても若く見えるイケメン)がぬいぐるみを僕に渡してくれた
 嬉しい、この子とは夜一緒に寝ることにしよう
 ん? 思考が子供に戻ってる気がするけどまぁいいか。今は本当に子供なんだしね
 次は型抜き
 綺麗に抜ければ景品ゲットだ
 龍を模した型が一番点数が高いので迷わずそれを選んだ
 ここで型抜きが分からない人に説明しておくと、型抜きとは砂糖などで出来たお菓子に絵が掘ってあり
 針を使ってその絵の通りに形を抜くことができれば点数をもらえ、その点数に応じた景品がもらえる
 砂糖菓子なので削った部分はもちろん食べることができる
 ちなみに柄の部分がひび割れたり崩れたりすると失敗だ
 龍の型抜きはかなり難しく、ゆっくりと針を刺していった
 今までにないほどの集中力で抜いて行く
 三十分くらいかけてようやく抜き終わった
 我ながら非常にきれいに抜けたのではないだろうか
 屋台のおじさん(もちろん若く見えるイケメン)に持っていくと、おじさんは型をじっくりと見て
「すごいじゃないかお嬢ちゃん、完璧だよ」
 僕は誇らしくどや顔をした
「ここから景品を選んでね」
 景品の中にはゲーム屋台無料券(祭り終わりまで有効と書かれてる)、大きなハクラ姫とクロハ姫のぬいぐるみ、鬼ヶ島アイドルズの限定サイン色紙
 そしてなんと、鬼ヶ島製造の刀一振りというものがあった
 これには自分の好きなようにデザインができる特典までついていた
 刀、欲しい
 僕はその景品をもらうことにした
 なぜここまで景品が豪華なのか? もちろんそれほどまでにこの龍の型抜きが難しいからだ
 この祭りで最初に屋台が出された59年前から今までで僕を含めて三人しか成功していないらしいよ
 刀の引換券をもらい、後で工房へ行くことにしてまた屋台を楽しんだ
 途中に焼きトウモロコシやたこ焼きなどを挟みながら充実した祭りを過ごす
 人魚救いは明日にしようっと
 それに明日は御神輿が出るそうなのでそちらも見学することにしよう
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

処理中です...