上 下
316 / 487

アラマキ

しおりを挟む
 アラマキはサミダレで育ての親であるトガツメヒメの前に正座していた
「ふむ、そうか、ありがとうアラマキ、ほれこっちへ」
「はい」
 トガツメヒメはアラマキを近寄らせると、その頭をよしよしと撫でた
 最高に幸せそうな表情を浮かべるアラマキ
 普段国の中ではクールビューティーで通っているアラマキ
 誰からも頼られる存在の勇者アラマキ
 その実甘えん坊のアラマキ
 まだまだこどもなのであった
「では拙はこれからまたフィオナ殿の元へ戻ります」
「そうか、気を付けるのじゃぞ」
 トガツメヒメが昔のように抱きしめてくれたことで、アラマキは元気が出た
「では行ってまいります母上!」
「うむ・・・。おとそうじゃ、これを渡し忘れておったわ」
 トガツメヒメの手に現れる美しい刀
「神刀浮月じゃ。おぬしなら使いこなせるじゃろうて」
「ありがとうございます母上! 拙は、拙は嬉しいです!」
 子供の用に無邪気な顔
 トガツメヒメは満足そうにうなづいた
 そしてフィオナの元へと向かうアラマキ
「さてと、わらわもやるべきことをやるかの。よっこらしょっと」
 トガツメヒメは立ち上がると、綺麗な着物を脱ぎ去って、戦闘用衣装へと着替える
 その目はいつもの優しい目ではなく、獲物を狙う獣のように鋭くなっていた
 ふっと息を吐いてその場から消える
 そして次の瞬間にはサミダレ国の南端、大きなクレーターができた場所にいた
 そこにいるスケルトンのような何か
「やはり復活して追ったか、しかも・・・」
 スケルトンはサミダレヒメの方を見る
 そして腰にさした刀を抜くと、その姿が変わる
「魔刀の魔王ヒカゼ・・・」
 この魔王はトガツメヒメの養子の一人だった
 数百年前、力を求め、魔刀に飲まれ魔王となった男
 その男が蘇った上に、生前よりもはるかに力を持っている
 トガツメヒメは一瞬悲しそうな顔をすると、自身も刀を抜き、一瞬手を駆けると、ヒカゼに背を向けた
「すまなかったヒカゼ、わらわはお前を救えなかった」
 魔神となったはずのヒカゼはその場に崩れ落ち、砂となって消えた
「刹那の剣鬼、この名もとうに捨てた名じゃが、愛する子を送るためならば、再び剣鬼ともなろう」
 悲しみに涙を流した後、トガツメヒメは城へと帰った
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう

天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。 侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。 その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。 ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜

よどら文鳥
恋愛
 フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。  フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。  だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。  侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。  金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。  父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。  だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。  いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。  さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。  お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。

処理中です...