猫になったから気ままに暮らしたい

異世界人6

　鬼人にして爆破の力を持っている帝国十二覇人の一人、爆砕のテンリ
　彼女は気性こそ荒いが、人を傷つけるような者ではなかった
　特に子供には優しく、自身も孤児だったためか孤児院を経営していた
　そんな彼女が、女子供関係なく大殺戮に及んでいる
　とてもではないが、このような惨劇を起こすような者ではない
「あああ、あの人が、なんで・・・」
　まだ帝国がおかしくなり始めた頃、ピューリーはテンリに会ったことがあった
　口調は男っぽく、しかし優しい
　彼女の大きな手が撫でた頭の感触を今でも覚えている
　あれは本当に誰かを守るための手だった
「ともかくテンリがおかしくなったのはやはり帝国がおかしくなったことに連なるのだろう。たとえば、人格を変えられたか、奪われてしまい命令に従っているのか・・・」
「テンリさんはきっと操られてるのよ！　そうじゃなきゃあんなに優しい人がこんなひどいこと・・・」
「ともかくダットソンは帝国に攫われたのだろう。いよいよ帝国との戦争が近づいているってことだ・・・。当然帝国十二覇人との戦いも避けられんだろうな」
「待って、今リーダーから情報が。これ見て」
　ピューリーがポケットから出したのはスマホのような端末
　異世界人同盟にはこういったものが支給されており、緊急的な連絡はこれで取ることになっている
「え、パリス、ケイト、ドリシアの三人が！？」
　仲間の異世界人で、一つの国を拠点に活動していた三人が襲撃され攫われたとの情報
　三人はそれぞれの能力で連携を取るため今まで負けたことがなかった
　そんな三人が何もできずに負け、攫われたのだ
　その情報にピューリ―の顔はさらに曇る
「そ、そう、帝国十二覇人が・・・」
　三人を襲ったのは十二覇人の一人であるオプサリス
　ケイジからの情報を二人に伝える
「そうか・・・。あの三人が負けるとは、帝国十二覇人はそこまでの力を持っていたのか」
　ひとまず救い出した王女含めた生き残りを、異世界人同盟の本拠地で面倒を見ることにした
　この国は小さな国であったため、もはや国としては機能しないだろう
　帝国を操っているであろう何者かの手により、様々な国への十二覇人による単独攻撃
　それだけで国が亡ぶほどの戦力
　もはや帝国との戦争は間近と思われた