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帝国十二覇人 魔導麗人1
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鎧を着た女性がラーゾリア帝国の城へと転移魔法で現れる
場所は城の自室
そこで兜を脱ぐ
長い赤髪がファサッと流れ落ちる
「ふぅ・・・。あの少女。たかだか一桁ほどしか生きていない少女があれほどの魔法を、まだ魔法の基礎すら知らないはずだが・・・」
女性の名はアリュエナ・ヴァンシルバ
エルダーエルフというエルフ族の仲でも特に魔力の高いエルフで、元々彼女は孤児だった
誰も彼も信じれない
日々を生きるのも生死にかかわる
盗みだって働いたし、泥水だって啜った
誰も自分を見ない
そして彼女は病にかかった
手足が先から腐り始め、すぐにでも治療をしなければ命にかかわる病だった
「もう、死んでもいいかな」
誰もいない路地裏で倒れ、指一本動かすことですら激痛を伴う
ただ死を待つばかり
「何も楽しいこと、なかったな」
空を仰ぎ、自身の死を悟った時、何か温かいものが自分の体を包み込むのが分かった
不思議と体が軽くなり、手指が動く
ゆっくりと起きあがると、そこにはローブを着た男が立っていた
「おいで」
手を差し伸べる男
だがアリュエナは警戒した
「誰・・・? 私を治して、売るつもり?」
男を奴隷商人だと思ったのだろう
それほどにエルダーエルフは価値が高い
そのため彼女は普段耳を長い髪で隠していた
「大丈夫だ」
男はフードを脱ぎ、顔を見せた
その男はアリュエナもよく知る顔
この国の皇帝だった
皇帝の顔はコインにもなっているし、街中にあふれている
いくら孤児で情報にうとい少女でもその顔はよく知っていた
「なんで、あなたが・・・」
「すまない、私はまだこの国をちゃんと分かっていなかった。君のような子を、これ以上増やさないと約束しよう。だから、私に力を貸してほしい」
アリュエナは差し出された手を取った
かつての自分を思い出していたアリュエナ
魔法なんて知りもしなかった幼少時代に皇帝に拾われ、魔法の才能を開花させた
皇帝の役に立てると意気込み、今や帝国の実力者十二人からなる十二覇人となった
皇帝は優しい人だった・・・
「陛下、あなたは変わった・・・」
エルフと人間とでは時間の進み方が違うため、まだ少女と言ってもいい見た目のアリュエナだが、皇帝は既に老体となっていた
その皇帝は数年前から様子がおかしくなっている
急に侵略戦争を始め、いくつかの国を滅ぼし、見た目も、目が虚ろで言葉もたどたどしい
それを誰も疑問にも思わない
この国自体も明らかにおかしくなっていた
「それでも陛下、私は、あなたに尽くします」
アリュエナは再び兜をかぶると自室から出た
場所は城の自室
そこで兜を脱ぐ
長い赤髪がファサッと流れ落ちる
「ふぅ・・・。あの少女。たかだか一桁ほどしか生きていない少女があれほどの魔法を、まだ魔法の基礎すら知らないはずだが・・・」
女性の名はアリュエナ・ヴァンシルバ
エルダーエルフというエルフ族の仲でも特に魔力の高いエルフで、元々彼女は孤児だった
誰も彼も信じれない
日々を生きるのも生死にかかわる
盗みだって働いたし、泥水だって啜った
誰も自分を見ない
そして彼女は病にかかった
手足が先から腐り始め、すぐにでも治療をしなければ命にかかわる病だった
「もう、死んでもいいかな」
誰もいない路地裏で倒れ、指一本動かすことですら激痛を伴う
ただ死を待つばかり
「何も楽しいこと、なかったな」
空を仰ぎ、自身の死を悟った時、何か温かいものが自分の体を包み込むのが分かった
不思議と体が軽くなり、手指が動く
ゆっくりと起きあがると、そこにはローブを着た男が立っていた
「おいで」
手を差し伸べる男
だがアリュエナは警戒した
「誰・・・? 私を治して、売るつもり?」
男を奴隷商人だと思ったのだろう
それほどにエルダーエルフは価値が高い
そのため彼女は普段耳を長い髪で隠していた
「大丈夫だ」
男はフードを脱ぎ、顔を見せた
その男はアリュエナもよく知る顔
この国の皇帝だった
皇帝の顔はコインにもなっているし、街中にあふれている
いくら孤児で情報にうとい少女でもその顔はよく知っていた
「なんで、あなたが・・・」
「すまない、私はまだこの国をちゃんと分かっていなかった。君のような子を、これ以上増やさないと約束しよう。だから、私に力を貸してほしい」
アリュエナは差し出された手を取った
かつての自分を思い出していたアリュエナ
魔法なんて知りもしなかった幼少時代に皇帝に拾われ、魔法の才能を開花させた
皇帝の役に立てると意気込み、今や帝国の実力者十二人からなる十二覇人となった
皇帝は優しい人だった・・・
「陛下、あなたは変わった・・・」
エルフと人間とでは時間の進み方が違うため、まだ少女と言ってもいい見た目のアリュエナだが、皇帝は既に老体となっていた
その皇帝は数年前から様子がおかしくなっている
急に侵略戦争を始め、いくつかの国を滅ぼし、見た目も、目が虚ろで言葉もたどたどしい
それを誰も疑問にも思わない
この国自体も明らかにおかしくなっていた
「それでも陛下、私は、あなたに尽くします」
アリュエナは再び兜をかぶると自室から出た
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