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一章 神を名を持つ少女
1話③ 誰かの人生を自分の手で
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ミリナと呼ぶ少女は、倒れた俺に向かって手を伸ばしてきた。
「あと━━━━、すいません。怪我してるのに倒してしまって」
「いや、いい。怪我してるとかは関係ないし、無事だからなんともないよ」
俺は彼女に起こして貰った。冬の日ということもあって、手は冷たくて、力は愛守香や編美に比べて遥かに弱かった。
多分、彼女と会うのはこれだけだろう。少し何が聞いてみたい。
俺はもう1度名前を聞いた。彼女は純粋に答えてくれて、さらには追加で聞いた学年も答えてくれた。その応えは━━少し意外で。
「中3!」
と反応してしまった。
「え、何か不満ですか?」
彼女は口を膨らませた。自分の小ささを気にしていたのか、自分が小さく見られることに不満を見せていた。
別に俺が驚いた理由は、体が小さかった訳ではない。
「いやいや、俺は別に、もう12月くらいなのに、受験生がサッカーしててびっくりして━━━━」
「ああ、そんなことですか」
彼女は胸をなでおろすようだった。
「背の低さは別に凄いと思うぞ。だって、あれだけ体格差がある中でボール持ちまくってたんだから?」
20センチ近くの身長差があるディフェンダーが、数人いる中でのドリブル出来ていたのだ。
「え? ああ、ありがとうございます」
「だけど、受験勉強真っ只中でサッカーしてるって━━━━びっくりして……あ、もしかしてあんまり言えないことか? だったら━━」
彼女は俺の横に座った。普段から異性と関わることが多かったからなのだろうか、年上の何の関係も無い男の横に座るのは少し驚いた。隣に腰掛ける彼女からは、悲しい雰囲気を持っていた。
「別に、私は勉強するつもりですよ━━━━。だけど、サッカーもしたいんです」
その時、俺は何かを打ち明けられていると感じた。前を向けば、彼女がいたグラウンド。太陽が沈み始めて、段々と陽の光が赤くなっていく。俺達とともに照らされるグラウンドとその周辺には二人しかいなかった。
「それで?」
俺は彼女の話を待つ。
「私、本当は強いところ行きたいんですよ、だけどそこは家的に難しくて━━━━。あまりお金が無くて━━━━」
経済的な理由か━━━━。確かに、サッカーの強豪校はだいたいが私立であり、お金はかかる。よっぽどの名プレイヤーとして認識されない辺りは、特待生としての経済的優遇措置はつけられないのだろう。
「だから県立にいくしか無いってことか……?」
「はい」
「強いところに行きたいって、プロになりたかったり━━━━するのか?」
「そうですけど、なっても━━?」
彼女はより頭を垂れて、重苦しく口にした。
「なっても、お金が稼げない━━━━」
この子はとことんお金について考えている。金銭面とは難しい話だ。東大生の両親の平均所得は年々増えているとか聞いたことがあるし、お金が無いから夢をあきらめなければならない状況になる子どもが増えているのが今の日本の現状だ。
さらに、女子サッカーリーグ。創設はされたものの、J1になれば最低でも500万くらいは払われる男子に比べ、なかなか収入が取れない女子。実力不足なら、若くても当然のように首を切られるし、妊娠した時の対応も、女子なら考えたことがあってもおかしくない。
だから偏差値がいい高校に行って、いい大学に行って、どこかに就職する気しか無いんだろうなと考えているのだろう。
とすればなおさら疑問だ。どうして彼女は中3の12月にもなってここでサッカーを? サッカーしてる暇では無いと考えるのが普通だろう。
「私が中途半端で、勉強しなきゃなんないのに、こうやって先生に無理いってサッカーさせてもらってる身なんですよ━━」
「なるほどな。俺は分かった━━━━」
それから数分が経った。俺はただ前を向いて、彼女のことを考える。となりから鼻をすする音が聞こえる。彼女はサッカーしたくても、なかなか出来そうになくて、辛い思いをしている。
「なあ、俺たち似てるかもな」
っと俺は彼女の方を向いた。
「そうですか?」
涙目になった彼女は、こちらを向く。体の大きさから、下からこちらを向ける彼女の姿が堪らなくなってきた。男はなんて単純なんだろうかって思う。
「膝、俺高2なんだけど、もう卒業までサッカー選手、出来そうにないんだ」
彼女は視線を足に向けた。包帯やらギプスやらでぐるぐる巻にされた俺の右膝を見る。思いきり靭帯がぶっ壊れて、こういう状況になってしまった。
試合中だった。負けていて、必死に相手ゴールを目指そうと上がっていった時だった。強烈なスライディングが襲ってきて、そこで━━━━。
涙を流した。俺にスライディングを食らわせたやつはイエローカードを貰った。だけど、事故の要素も多かったからレッドカードにはならない。だから俺の高校は、交代枠も使い切っていて、残り時間は少ないのに、1人少ない状況で戦うことになったのだ。
その試合で━━━━俺の高3の先輩たちは━━━━━━。
「そうなんですか」
いつの間にか、俺たちはお互いに、対応に困ることを言い合っていた。赤の他人同士なのにだ。
「記憶違いだったら謝るけど、俺たち完全に初対面のはずたけど━━━━」
「いや。ごめんなさい。知らない人のほうが言えたんです。知った人に言ったら、逆に気を遣われて、嫌なので。だからこれは、ここだけの話でお願いします」
「分かった」
俺はそうとしか言えなかった。だからこそ彼女は俺に打ち明けた。
気がつけば、彼女はベンチから立っていた。そのまま歩き出した。
「それじゃあ私、チャリで帰りますので」
そうして去っていった。
ミリナという少女。俺は彼女の才能を高く評価している。これから先プロになる? そんな次元では無い。
長い長いサッカーの歴史。その中で、サッカーの歴史に名を残した選手は数少ない。ペレ、マラドーナ、クライフ、そしてメッシ。特にメッシは、今の多くのサッカー少年たちが憧れてきた選手だ。
メッシがワールドカップを制覇した時のことだ。(PK無しならメッシより多い)大会4得点のフリアン・アルバレス、大会最若手賞を獲ったエンソ・フェルナンデスなどの若い選手たちは、幼少期にメッシに憧れてきた。
母国の偉大な先人であるマラドーナと比べて、ワールドカップを獲っていないとメッシは強く批判された。その他の代表タイトルも、決勝で力尽きるばかりで、得にはモチベーションが消え失せ、代表引退を一度宣言したことすらもあった。だけど、アルゼンチンのために必死に戦うメッシ、彼のために必至に戦う若者の姿勢もまた、アルゼンチン代表を優勝に導いた大きな要因だ。
俺もまた、アルゼンチン人ではなく日本人だが、メッシに憧れた人間の一人。彼になろうとボールを蹴ったこともある。だけど、練習して、成長して、大きくなっていくごとに実感する。「メッシは神であり、俺たちが追いつけるところにはいない」と。
あまりにも最強すぎる彼の才能。ネイマールのような、彼もまたワールドクラスの選手であるのにも関わらず、人智を超えたサッカー選手としてメッシを褒めている。
もちろん、男女の差を考慮してだが、俺はその才能と同レベルの少女を見ているような気がした。この子は、もしかしたら、女子サッカー界の神になれるのかもしれない。
だけど、いくら才能を持っていても、大切なのは本人の意思。才能にあった職についたとしても、本人が楽しくなければ、その人が可愛そうだ。だから、ミリナという少女も、本当はサッカー以外のことをしたいというのならば、むりやりサッカーをさせるわけにもいかない。
「だけど、私はサッカーもしたいんです」
頭の中に、彼女の言葉が木霊する。
俺は━━━━彼女を━━━━━━。
それを実現するには━━━━。
でも━━━━、俺は━━━━━━。
途端、俺は走り始めていた。怪我も知らない。関係も知らない。ただ、俺は彼女がもう━━━━、だから━━━━。
ドサリ。体は正直だ。右足が崩れる。その場に倒れる。先程と同じように松葉杖がどこかに行く。
「ちょ━━━━━━何やってるですか」
ミリナという少女、いや、ミリナは駆け寄ってくる。
「お前に伝えたいことがあって来た」
「伝えたいこと━━━━私たち、初対面のはずでは━━?」
さっき言ったような言葉を聞く。だけど、それは関係ない。俺はただ、ミリナに伝える。俺の意志を。
「俺は、来年から生時高校女子サッカー部監督になる、飛口紡久だ」
「え、監督? 高2なのに━━━━」
俺は続ける。力の限り叫ぶ。膝の痛みも、悔しさも全てかき消すように、救いを求めるように、ミリナに届けたい。
「俺は、怪我でプレイヤーとして出られなかった全国大会に、監督として出たい! そのためにお前が必要だ! 俺の高校に来てほしい」
「それって、スカウトってことですか?」
まだミリナはおどおどしていた。当然といえば当然だ。だが、本当に大切なのかはここからだ。ミリナに絶対にうちに入ってもらうために、俺は条件を突きつける。
「ああ。そうだ。特待は無いけど、うちは県立だから金銭面は多分大丈夫だ。部費は払ってもらうけどな」
まだだ。それ以上に彼女の心を掴む条件がある。年齢的には重すぎる。だけど自信を持て。他人の人生を変える決意をしたのだ。
「ただし! 俺は、お前を、宇宙一の選手にしたい!」
「な━━━━! 私が━━━━」
周りに何を思われようが関係ない。俺の意志と、彼女を信じたい。ミリナを肩を掴む。
「うわっ!」
びっくりされようが関係ない。俺はただ━━━━お前が━━━━。
「家族を楽させたいんだろ! 迷惑かけたくないんだろ! 大丈夫だ! お前は! この世界の中で! 一番のプレイヤー━━━━、《神》になる!」
未来を俺に預けろと言ったのだ。断れても仕方がない。だけど、俺はミリナを━━━━救ってあげたいだけなのだ。
「あと━━━━、すいません。怪我してるのに倒してしまって」
「いや、いい。怪我してるとかは関係ないし、無事だからなんともないよ」
俺は彼女に起こして貰った。冬の日ということもあって、手は冷たくて、力は愛守香や編美に比べて遥かに弱かった。
多分、彼女と会うのはこれだけだろう。少し何が聞いてみたい。
俺はもう1度名前を聞いた。彼女は純粋に答えてくれて、さらには追加で聞いた学年も答えてくれた。その応えは━━少し意外で。
「中3!」
と反応してしまった。
「え、何か不満ですか?」
彼女は口を膨らませた。自分の小ささを気にしていたのか、自分が小さく見られることに不満を見せていた。
別に俺が驚いた理由は、体が小さかった訳ではない。
「いやいや、俺は別に、もう12月くらいなのに、受験生がサッカーしててびっくりして━━━━」
「ああ、そんなことですか」
彼女は胸をなでおろすようだった。
「背の低さは別に凄いと思うぞ。だって、あれだけ体格差がある中でボール持ちまくってたんだから?」
20センチ近くの身長差があるディフェンダーが、数人いる中でのドリブル出来ていたのだ。
「え? ああ、ありがとうございます」
「だけど、受験勉強真っ只中でサッカーしてるって━━━━びっくりして……あ、もしかしてあんまり言えないことか? だったら━━」
彼女は俺の横に座った。普段から異性と関わることが多かったからなのだろうか、年上の何の関係も無い男の横に座るのは少し驚いた。隣に腰掛ける彼女からは、悲しい雰囲気を持っていた。
「別に、私は勉強するつもりですよ━━━━。だけど、サッカーもしたいんです」
その時、俺は何かを打ち明けられていると感じた。前を向けば、彼女がいたグラウンド。太陽が沈み始めて、段々と陽の光が赤くなっていく。俺達とともに照らされるグラウンドとその周辺には二人しかいなかった。
「それで?」
俺は彼女の話を待つ。
「私、本当は強いところ行きたいんですよ、だけどそこは家的に難しくて━━━━。あまりお金が無くて━━━━」
経済的な理由か━━━━。確かに、サッカーの強豪校はだいたいが私立であり、お金はかかる。よっぽどの名プレイヤーとして認識されない辺りは、特待生としての経済的優遇措置はつけられないのだろう。
「だから県立にいくしか無いってことか……?」
「はい」
「強いところに行きたいって、プロになりたかったり━━━━するのか?」
「そうですけど、なっても━━?」
彼女はより頭を垂れて、重苦しく口にした。
「なっても、お金が稼げない━━━━」
この子はとことんお金について考えている。金銭面とは難しい話だ。東大生の両親の平均所得は年々増えているとか聞いたことがあるし、お金が無いから夢をあきらめなければならない状況になる子どもが増えているのが今の日本の現状だ。
さらに、女子サッカーリーグ。創設はされたものの、J1になれば最低でも500万くらいは払われる男子に比べ、なかなか収入が取れない女子。実力不足なら、若くても当然のように首を切られるし、妊娠した時の対応も、女子なら考えたことがあってもおかしくない。
だから偏差値がいい高校に行って、いい大学に行って、どこかに就職する気しか無いんだろうなと考えているのだろう。
とすればなおさら疑問だ。どうして彼女は中3の12月にもなってここでサッカーを? サッカーしてる暇では無いと考えるのが普通だろう。
「私が中途半端で、勉強しなきゃなんないのに、こうやって先生に無理いってサッカーさせてもらってる身なんですよ━━」
「なるほどな。俺は分かった━━━━」
それから数分が経った。俺はただ前を向いて、彼女のことを考える。となりから鼻をすする音が聞こえる。彼女はサッカーしたくても、なかなか出来そうになくて、辛い思いをしている。
「なあ、俺たち似てるかもな」
っと俺は彼女の方を向いた。
「そうですか?」
涙目になった彼女は、こちらを向く。体の大きさから、下からこちらを向ける彼女の姿が堪らなくなってきた。男はなんて単純なんだろうかって思う。
「膝、俺高2なんだけど、もう卒業までサッカー選手、出来そうにないんだ」
彼女は視線を足に向けた。包帯やらギプスやらでぐるぐる巻にされた俺の右膝を見る。思いきり靭帯がぶっ壊れて、こういう状況になってしまった。
試合中だった。負けていて、必死に相手ゴールを目指そうと上がっていった時だった。強烈なスライディングが襲ってきて、そこで━━━━。
涙を流した。俺にスライディングを食らわせたやつはイエローカードを貰った。だけど、事故の要素も多かったからレッドカードにはならない。だから俺の高校は、交代枠も使い切っていて、残り時間は少ないのに、1人少ない状況で戦うことになったのだ。
その試合で━━━━俺の高3の先輩たちは━━━━━━。
「そうなんですか」
いつの間にか、俺たちはお互いに、対応に困ることを言い合っていた。赤の他人同士なのにだ。
「記憶違いだったら謝るけど、俺たち完全に初対面のはずたけど━━━━」
「いや。ごめんなさい。知らない人のほうが言えたんです。知った人に言ったら、逆に気を遣われて、嫌なので。だからこれは、ここだけの話でお願いします」
「分かった」
俺はそうとしか言えなかった。だからこそ彼女は俺に打ち明けた。
気がつけば、彼女はベンチから立っていた。そのまま歩き出した。
「それじゃあ私、チャリで帰りますので」
そうして去っていった。
ミリナという少女。俺は彼女の才能を高く評価している。これから先プロになる? そんな次元では無い。
長い長いサッカーの歴史。その中で、サッカーの歴史に名を残した選手は数少ない。ペレ、マラドーナ、クライフ、そしてメッシ。特にメッシは、今の多くのサッカー少年たちが憧れてきた選手だ。
メッシがワールドカップを制覇した時のことだ。(PK無しならメッシより多い)大会4得点のフリアン・アルバレス、大会最若手賞を獲ったエンソ・フェルナンデスなどの若い選手たちは、幼少期にメッシに憧れてきた。
母国の偉大な先人であるマラドーナと比べて、ワールドカップを獲っていないとメッシは強く批判された。その他の代表タイトルも、決勝で力尽きるばかりで、得にはモチベーションが消え失せ、代表引退を一度宣言したことすらもあった。だけど、アルゼンチンのために必死に戦うメッシ、彼のために必至に戦う若者の姿勢もまた、アルゼンチン代表を優勝に導いた大きな要因だ。
俺もまた、アルゼンチン人ではなく日本人だが、メッシに憧れた人間の一人。彼になろうとボールを蹴ったこともある。だけど、練習して、成長して、大きくなっていくごとに実感する。「メッシは神であり、俺たちが追いつけるところにはいない」と。
あまりにも最強すぎる彼の才能。ネイマールのような、彼もまたワールドクラスの選手であるのにも関わらず、人智を超えたサッカー選手としてメッシを褒めている。
もちろん、男女の差を考慮してだが、俺はその才能と同レベルの少女を見ているような気がした。この子は、もしかしたら、女子サッカー界の神になれるのかもしれない。
だけど、いくら才能を持っていても、大切なのは本人の意思。才能にあった職についたとしても、本人が楽しくなければ、その人が可愛そうだ。だから、ミリナという少女も、本当はサッカー以外のことをしたいというのならば、むりやりサッカーをさせるわけにもいかない。
「だけど、私はサッカーもしたいんです」
頭の中に、彼女の言葉が木霊する。
俺は━━━━彼女を━━━━━━。
それを実現するには━━━━。
でも━━━━、俺は━━━━━━。
途端、俺は走り始めていた。怪我も知らない。関係も知らない。ただ、俺は彼女がもう━━━━、だから━━━━。
ドサリ。体は正直だ。右足が崩れる。その場に倒れる。先程と同じように松葉杖がどこかに行く。
「ちょ━━━━━━何やってるですか」
ミリナという少女、いや、ミリナは駆け寄ってくる。
「お前に伝えたいことがあって来た」
「伝えたいこと━━━━私たち、初対面のはずでは━━?」
さっき言ったような言葉を聞く。だけど、それは関係ない。俺はただ、ミリナに伝える。俺の意志を。
「俺は、来年から生時高校女子サッカー部監督になる、飛口紡久だ」
「え、監督? 高2なのに━━━━」
俺は続ける。力の限り叫ぶ。膝の痛みも、悔しさも全てかき消すように、救いを求めるように、ミリナに届けたい。
「俺は、怪我でプレイヤーとして出られなかった全国大会に、監督として出たい! そのためにお前が必要だ! 俺の高校に来てほしい」
「それって、スカウトってことですか?」
まだミリナはおどおどしていた。当然といえば当然だ。だが、本当に大切なのかはここからだ。ミリナに絶対にうちに入ってもらうために、俺は条件を突きつける。
「ああ。そうだ。特待は無いけど、うちは県立だから金銭面は多分大丈夫だ。部費は払ってもらうけどな」
まだだ。それ以上に彼女の心を掴む条件がある。年齢的には重すぎる。だけど自信を持て。他人の人生を変える決意をしたのだ。
「ただし! 俺は、お前を、宇宙一の選手にしたい!」
「な━━━━! 私が━━━━」
周りに何を思われようが関係ない。俺の意志と、彼女を信じたい。ミリナを肩を掴む。
「うわっ!」
びっくりされようが関係ない。俺はただ━━━━お前が━━━━。
「家族を楽させたいんだろ! 迷惑かけたくないんだろ! 大丈夫だ! お前は! この世界の中で! 一番のプレイヤー━━━━、《神》になる!」
未来を俺に預けろと言ったのだ。断れても仕方がない。だけど、俺はミリナを━━━━救ってあげたいだけなのだ。
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