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14話
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「俺とドラルが初めて会ったのは4年前、王国が無謀にも決行したドラル進攻の時だ」
いつかは聞かれるだろうと思っていた話だから面倒くさいながらも諦めて話始める。だが、アルが何も知らないのには違和感があり、そこにドラルが何かしているのは間違いない。
「王国が大した戦力も揃えずにドラルの城に進攻して失敗した後、フロンを始め王都までの街は全て見捨てられた。王国所属の兵士だけでなく冒険者も全員、王都の護りについたせいでな」
あの時のフロンに居た人の表情は印象的だった。
知らないところで決められた進攻が失敗して頼りにしていた王国兵が退き、頼みの冒険者ですら金に物を言わせて取り上げられた。
本来ならフロンに防衛線を築き止めるべきで、そうでなくともフロンに居る人を避難させるくらいは最低限やるべきだったはずだ。
それなのに、事もあろうに王国はフロンから避難しようとした人を逃がさなかった。関所を止め逃げられないようにして犠牲になることを強いたのだ。フロンを与えればドラルの気も治まるだろうと思っていたのだろう。
王国に見捨てられ自衛の手段を奪われ殺されるのを待つのみ。それでも子供たちを守ろうと立ち上がろうとしていた。
絶望しかないと分かっていながらも足掻こうとするその表情に心を動かされた。
「俺はその時たまたまフロンに居たから単騎でドラルの城に行った。それでドラルと戦ってる間に意気投合して国王を殺したってだけの話だ」
言ってしまえばドラルも被害者だ。種族的に敵対しているとはいえドラル自身は人間に対して敵対心はなかった。
それでも刃を向けられたら振り払う必要はある。その相手がフロンの人では気の毒だと思った。だから落としどころを提案したのだ。
「ご主人様が国王を殺したのですか?」
アルが真っ先に反応するかと思ったが、意外にも食いついてきたのはララだった。
「俺が殺す訳ねぇだろ。戦争が始まった以上落としどころが必要になる。それで巻き込まれた街が犠牲になるくらいなら適当に戦争を始めた国王が責任を取るのが道理だろ。だからドラルを王城に連れてって国王を殺させた」
「そうだね。あの時は私たちも王城に居たけど急にドラルを連れて来たからビックリしたよ」
「何で七英雄が居ながら国王が殺された?止めることはできたはず」
今度はルルが食いついてきた。淡泊なのかと思っていたが、スライムの時の話といい意外といろんなことが気になるようだ。
「私に言われても困るかなー。これでもあの時の私は七英雄だと末端なんだよ?決定権なんてないよ」
「七英雄には序列があるのですか。ご主人様は序列何位なのですか?」
「ゼギくんは1番下だよ。私よりも唯一下だもんねー。まぁ、序列なんて入った順番で決まってるだけだからそうなってるだけだけどね」
序列なんてあってないようなものだ。それで面倒な仕事を押し付けられるとか雑用をやらされるとかはない。それでも外向けに序列というものがついていた方が何かと都合がいいから入った順で序列がついているだけだ。
「では強さだとどうなのですか?」
「うーん、難しい話だね。1対1で戦うこと前提ならゼギくんかグラちゃんかシアンちゃんかな?でもゼギくんが本気で戦ってるところは見たことないからやっぱりゼギくんかな」
「七英雄同士でも本気は見たことないのですか?」
ララもルルも七英雄の話がやけに気になるようだ。七英雄から直接話を聞ける機会は中々ないし人間側の最高戦力だから気になるのも分かるが、それにしても何か裏があるように見える。
「寧ろ七英雄同士だから本気を見せないんだよ。本気を見せたら本気で戦う時に不利になるからね」
「メナは何人かの本気を見たことあるだろ」
「うん。いざ戦う時とか危なくなった時に誰を敵に回しちゃダメで誰を味方につければいいかは見定めておかないといけないからね。私は七英雄の中だと弱いから」
「ですが情報収集は武器になってそれを使えるのは強さになるのではないですか?」
本当にそう思っているのかフォローしているのかララがそんなことを聞く。が、それは違う。
組織のような集では情報収集は大きな力になるが個として見たら弱い。今メナが話しているのは個のことで、そのことを痛いほど分かっているメナは苦笑いしながら答える。
「考え方が甘いかなー。全て分かっていたとしても対応できない相手、それが七英雄だったりハオだったりするの」
「だったら誰かと組めばいいだけだろ。メナの情報にはそれだけの価値がある。情報収集とか面倒くせぇし誰にでもできる訳じゃねぇ」
これはお世辞とか少し落ち込んでいるメナを励ますような意味合いはなく、本心だ。ある程度強い奴は全員独自の情報網を持っていて七英雄はメナだけで事足りるが、それとは別に持っている。それは七英雄同士が味方ではないからだ。
俺の場合はそれが腐れなのだが、メナに変わるなら魔王の動向も探れるようになり今の状況には噛み合う。おまけに他の七英雄の動きも鈍化させられて都合もいい。逆に敵になられたら面倒くさいことこの上ない。
そういう意味合いで言ったのだがメナにきつく抱きしめられる。
「もう!ゼギくん好き!ゼギくんと一緒に戦う!」
「面倒事を持ってこないなら勝手にしろ。それでずっと黙ってるが、アルは納得したのか?」
そうアルの方へ顔を向けるとアルの顔つきがいつもと違った。その表情はドラルを彷彿とさせる。
「ドラルか、四獣を通してくると思ったんだけどな。アルの中に仕込んでたのか」
「久しいな、ゼギウスよ。お前がこれを聞いているということは、俺は死に、それでもアルメシアの面倒を見てくれているのだな。ありがとう。アルメシアにはゼギウスに関する記憶を全て封印してある。お前を探しに人間界へ行くなんて血迷った行動もしかねないからな」
アルもといドラガが苦笑いを浮かべるが、その様からはドラガが甘やかしてきたのが伝わってくる。
「そう思ったなら少しは鍛えとけ」
何のスキルを使ったかは分からないが俺とドラガの出会いをトリガーに俺へのメッセージを残していたようだ。メッセージということは当然、俺の返す言葉は届かない。それでもつい返してしまう。
「今も面倒も見てくれてるだろうがこれからもアルメシアのことを面倒見てやってくれ。なんなら結婚してもいいぞ。お前になら任せられるからな。ただ、結婚したら昼寝はやめろよ。それと家事も統治も手伝うんだぞ。それを全部守れるなら結婚してもいい」
「アホ抜かせ」
「って話が逸れたな。分かってると思うがアルメシアが敵討ちなんて馬鹿なことを考えたら止めてやってくれ。絶対だぞ。アルメシアじゃハオには勝てない。それは俺の敗北からも分かるだろ。絶対だぞ。絶対にアルメシアを止めろよ。止めなかったら怨むからな」
相変わらずの親バカさに呆れたような笑みが溢れる。
「最後に俺の夢をお前に託す。俺とゼギウスが仲良くなれたように人間と魔物の共存できる世を作ってくれ。そんな未来を期待してるぞ」
最後に笑うといつもの間抜けなアルの顔に戻った。
「思い出したのじゃ!お主、いつも城に来ては寝ておった阿呆じゃな。母上が近づくと阿呆が移ると言っていたのじゃ!」
「確かにアルの母親にはそう言われたな」
少し懐かしい気持ちになった。そう言ってアルを遠ざけておきながら自分も混ざって悠々と酒を飲んでいたのを覚えている。名前はなかったが、優しくて温かさのあるいい奴だった。
「でも納得いったのじゃ。確かにお主はよくこの城に来ておった。我はほとんど会っておらぬし父上も母上も怠け者だと言っておったがお主の話をする時は嬉しそうじゃった。これでお主になら心置きなく頼める。父上の仇を取ってほしいのじゃ」
「分かった」
いつかは聞かれると思っていたものの何故今聞かれたのかは分からなかったが、どうやら俺に頼んでいいのか考えていたようだ。1度口にしかけて飲み込んだのもそういうことなのだろう。
アルは変なところで諦めが早かったり気遣ったりする節がある。それはいいことなのだろうが、面倒な事は断る俺からしたらただの手間だ。まぁ、数名ほど見習ってほしい奴等はいるが。
そう思いながら頭をハオ戦へと切り替えた。
いつかは聞かれるだろうと思っていた話だから面倒くさいながらも諦めて話始める。だが、アルが何も知らないのには違和感があり、そこにドラルが何かしているのは間違いない。
「王国が大した戦力も揃えずにドラルの城に進攻して失敗した後、フロンを始め王都までの街は全て見捨てられた。王国所属の兵士だけでなく冒険者も全員、王都の護りについたせいでな」
あの時のフロンに居た人の表情は印象的だった。
知らないところで決められた進攻が失敗して頼りにしていた王国兵が退き、頼みの冒険者ですら金に物を言わせて取り上げられた。
本来ならフロンに防衛線を築き止めるべきで、そうでなくともフロンに居る人を避難させるくらいは最低限やるべきだったはずだ。
それなのに、事もあろうに王国はフロンから避難しようとした人を逃がさなかった。関所を止め逃げられないようにして犠牲になることを強いたのだ。フロンを与えればドラルの気も治まるだろうと思っていたのだろう。
王国に見捨てられ自衛の手段を奪われ殺されるのを待つのみ。それでも子供たちを守ろうと立ち上がろうとしていた。
絶望しかないと分かっていながらも足掻こうとするその表情に心を動かされた。
「俺はその時たまたまフロンに居たから単騎でドラルの城に行った。それでドラルと戦ってる間に意気投合して国王を殺したってだけの話だ」
言ってしまえばドラルも被害者だ。種族的に敵対しているとはいえドラル自身は人間に対して敵対心はなかった。
それでも刃を向けられたら振り払う必要はある。その相手がフロンの人では気の毒だと思った。だから落としどころを提案したのだ。
「ご主人様が国王を殺したのですか?」
アルが真っ先に反応するかと思ったが、意外にも食いついてきたのはララだった。
「俺が殺す訳ねぇだろ。戦争が始まった以上落としどころが必要になる。それで巻き込まれた街が犠牲になるくらいなら適当に戦争を始めた国王が責任を取るのが道理だろ。だからドラルを王城に連れてって国王を殺させた」
「そうだね。あの時は私たちも王城に居たけど急にドラルを連れて来たからビックリしたよ」
「何で七英雄が居ながら国王が殺された?止めることはできたはず」
今度はルルが食いついてきた。淡泊なのかと思っていたが、スライムの時の話といい意外といろんなことが気になるようだ。
「私に言われても困るかなー。これでもあの時の私は七英雄だと末端なんだよ?決定権なんてないよ」
「七英雄には序列があるのですか。ご主人様は序列何位なのですか?」
「ゼギくんは1番下だよ。私よりも唯一下だもんねー。まぁ、序列なんて入った順番で決まってるだけだからそうなってるだけだけどね」
序列なんてあってないようなものだ。それで面倒な仕事を押し付けられるとか雑用をやらされるとかはない。それでも外向けに序列というものがついていた方が何かと都合がいいから入った順で序列がついているだけだ。
「では強さだとどうなのですか?」
「うーん、難しい話だね。1対1で戦うこと前提ならゼギくんかグラちゃんかシアンちゃんかな?でもゼギくんが本気で戦ってるところは見たことないからやっぱりゼギくんかな」
「七英雄同士でも本気は見たことないのですか?」
ララもルルも七英雄の話がやけに気になるようだ。七英雄から直接話を聞ける機会は中々ないし人間側の最高戦力だから気になるのも分かるが、それにしても何か裏があるように見える。
「寧ろ七英雄同士だから本気を見せないんだよ。本気を見せたら本気で戦う時に不利になるからね」
「メナは何人かの本気を見たことあるだろ」
「うん。いざ戦う時とか危なくなった時に誰を敵に回しちゃダメで誰を味方につければいいかは見定めておかないといけないからね。私は七英雄の中だと弱いから」
「ですが情報収集は武器になってそれを使えるのは強さになるのではないですか?」
本当にそう思っているのかフォローしているのかララがそんなことを聞く。が、それは違う。
組織のような集では情報収集は大きな力になるが個として見たら弱い。今メナが話しているのは個のことで、そのことを痛いほど分かっているメナは苦笑いしながら答える。
「考え方が甘いかなー。全て分かっていたとしても対応できない相手、それが七英雄だったりハオだったりするの」
「だったら誰かと組めばいいだけだろ。メナの情報にはそれだけの価値がある。情報収集とか面倒くせぇし誰にでもできる訳じゃねぇ」
これはお世辞とか少し落ち込んでいるメナを励ますような意味合いはなく、本心だ。ある程度強い奴は全員独自の情報網を持っていて七英雄はメナだけで事足りるが、それとは別に持っている。それは七英雄同士が味方ではないからだ。
俺の場合はそれが腐れなのだが、メナに変わるなら魔王の動向も探れるようになり今の状況には噛み合う。おまけに他の七英雄の動きも鈍化させられて都合もいい。逆に敵になられたら面倒くさいことこの上ない。
そういう意味合いで言ったのだがメナにきつく抱きしめられる。
「もう!ゼギくん好き!ゼギくんと一緒に戦う!」
「面倒事を持ってこないなら勝手にしろ。それでずっと黙ってるが、アルは納得したのか?」
そうアルの方へ顔を向けるとアルの顔つきがいつもと違った。その表情はドラルを彷彿とさせる。
「ドラルか、四獣を通してくると思ったんだけどな。アルの中に仕込んでたのか」
「久しいな、ゼギウスよ。お前がこれを聞いているということは、俺は死に、それでもアルメシアの面倒を見てくれているのだな。ありがとう。アルメシアにはゼギウスに関する記憶を全て封印してある。お前を探しに人間界へ行くなんて血迷った行動もしかねないからな」
アルもといドラガが苦笑いを浮かべるが、その様からはドラガが甘やかしてきたのが伝わってくる。
「そう思ったなら少しは鍛えとけ」
何のスキルを使ったかは分からないが俺とドラガの出会いをトリガーに俺へのメッセージを残していたようだ。メッセージということは当然、俺の返す言葉は届かない。それでもつい返してしまう。
「今も面倒も見てくれてるだろうがこれからもアルメシアのことを面倒見てやってくれ。なんなら結婚してもいいぞ。お前になら任せられるからな。ただ、結婚したら昼寝はやめろよ。それと家事も統治も手伝うんだぞ。それを全部守れるなら結婚してもいい」
「アホ抜かせ」
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相変わらずの親バカさに呆れたような笑みが溢れる。
「最後に俺の夢をお前に託す。俺とゼギウスが仲良くなれたように人間と魔物の共存できる世を作ってくれ。そんな未来を期待してるぞ」
最後に笑うといつもの間抜けなアルの顔に戻った。
「思い出したのじゃ!お主、いつも城に来ては寝ておった阿呆じゃな。母上が近づくと阿呆が移ると言っていたのじゃ!」
「確かにアルの母親にはそう言われたな」
少し懐かしい気持ちになった。そう言ってアルを遠ざけておきながら自分も混ざって悠々と酒を飲んでいたのを覚えている。名前はなかったが、優しくて温かさのあるいい奴だった。
「でも納得いったのじゃ。確かにお主はよくこの城に来ておった。我はほとんど会っておらぬし父上も母上も怠け者だと言っておったがお主の話をする時は嬉しそうじゃった。これでお主になら心置きなく頼める。父上の仇を取ってほしいのじゃ」
「分かった」
いつかは聞かれると思っていたものの何故今聞かれたのかは分からなかったが、どうやら俺に頼んでいいのか考えていたようだ。1度口にしかけて飲み込んだのもそういうことなのだろう。
アルは変なところで諦めが早かったり気遣ったりする節がある。それはいいことなのだろうが、面倒な事は断る俺からしたらただの手間だ。まぁ、数名ほど見習ってほしい奴等はいるが。
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