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13話

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何が起こっているのじゃ?

それが目覚めて最初に抱いた疑問だ。周りにはララとルル、スーにゼギウス…それとあと1人誰かは分からないが、人が居て見舞いにでも来られているような雰囲気がする。ゼギウスが来るとは余程なことがあったのだろうか。

どうして自分が見舞われているのか分からない。それでもララの焦りようから深刻な状況なのは分かる。それが自分と関係しているかは分からないが良くないことが起きている、又は起きようとしているのは間違いない。

その内容を聞こうと体を起こそうとするが重すぎて起き上がれない。どうやら体内の魔力がほとんど残っておらず体が動かせないようだ。

それでも足掻こうとしていると、それに気づいたのかゼギウスが近寄ってくる。

「起きたか、アホ」

そう顔の前にゼギウスの手を翳されると次第に体が楽になっていく。ゼギウスの魔力を少し流し込まれているようだ。

少しすると体は楽になり起こせるようになる。

「何があったのじゃ?」

「外見てみろ」

相変わらず扱いが雑だと思いながら立ち上がり窓から外を見てみると驚きで声が出なかった。

まるで高位の魔物が戦った後のように凄惨な状態になっている。スカーが攻めてきたのだろうか。それで、その戦いで自分は意識を失った?

「助かったのじゃ」

どこか腑に落ちないがこの城が無事なことにお礼を言う。ゼギウスには助けられてばかりだ。自分の力が足りないとはいえ情けない。

「あの…アルメシアさんは意識を失う前のことを覚えていますか?」

不思議そうな表情を浮かべてララが聞いてくる。これが腑に落ちなかったことに関係しているのだろうか。

「覚えておらぬな。そこに居る者も誰かは分からぬ」

「じゃあ改めて名乗ろうかしら。アリスティア・L・メナドール、七英雄の1人で《色欲の人形使い》って言えば分かるかしら?」

その名前を聞いて思い出した。血の気が引いていくような感覚がする。

自分がこの惨状を生み出し、守ろうとしていたはずの城を壊しそうになっただけでなくララやルル、自分の配下たちをも危険に曝した。魔力の暴走を起こしたとか、父上の仇の名前を聞いて冷静さを失ったとか、関係ない。それで言い訳するようなら上に立つ資格はない。

自分の情けなさに涙が出てくる。

「済まぬ…申し訳なかったのじゃ…」

「思い出したか。やっぱりドラルはハオにやられたんだな?」

ハオという名前を聞いて再び暴走しそうになるが、体内の魔力が少ないのも幸いして何とか堪える。

「うむ。父上はハオとの戦いに敗れ亡くなったのじゃ」

「そうか…」

ゼギウスは初めてあった日のように天を仰いで目を瞑る。

「お主は彼奴と戦うつもりなのか?」

「さぁな。バカなこと考えないように先に言っとくぞ。アルじゃ天地がひっくり返ってもハオには勝てねぇ」

「そんなことは分かっておる。お主の足元にも及ばぬ我が彼奴の足元にも及ばないのは理解しているつもりじゃ。だから……いや、何でもないのじゃ」

自分では絶対に勝てない。だけど、もしかしたゼギウスなら…

そう一瞬、頭を過るが言葉を飲み込む。決して父上の二の舞にしてはいけない。また自分はお留守番で、見えないところでやられていくのを見過ごす訳にはいかない。

そう思っているとゼギウスはどこか諦めたように溜息を吐く。

「はぁ…本当、何で俺はこうも面倒事に巻き込まれるかね…」

「それはゼギくんがそういう星の元に生まれたからだよ」

「ならその星を呪う。先に言っとくが勝率は良くて30%、継戦はできて1週間だ」

まるで戦うことを決めたような言い方だ。自分の言葉の続きを察してそう判断したのではないかと不安になる。もしそうなのであれば絶対に止めなければならない。

「さっすがゼギくん私はそう言うと思ってたよ」

「ならぬ!父上でも勝てなかったのじゃぞ!お主が勝てるという保証がどこにあるのじゃ!」

「勝てる保証のある戦いなんてねぇよ。それにアルだって俺に戦わせようとしたんだろ?」

確かにゼギウスに戦ってほしかった。自分では絶対に勝てないことが分かっているなら父上と親交のあった人に倒してもらいたい。そういう気持ちはある。

しかし、あの偉大だった父上が勝てなかった相手を誰かに任せていいのだろうか。ましてやゼギウスは勝率30%だと言っているのに任せるなんて無責任が過ぎるのではないか。

自分には思い入れがあり命を懸けてもいいくらい重要なことだが、ゼギウスにとっても同じくらい重要なことかと言われたら違う。それなのに押し付けていい訳がない。

「確かにお主なら勝てるかもしれぬと頼もうとした。それは認めるのじゃ。だけど勝率30%と聞いて我の敵討ちに巻き込める訳がなかろう。ましてやお主は魔物に敵対心がある訳ではない。それなのに巻き込むのは無責任じゃ。これは我とハオの問題じゃ」

「そういう訳にはいかないよ。これはアルメシアちゃんだけの因縁じゃない。私の因縁でもあるの。それを勝手に止めないでよ」

そうメナドールが割って入る。どういう因縁があるかは知らないが因縁があるのであればハオの強さは知っているはずだ。ゼギウスが言った勝率30%が大袈裟ではないことも分かるはず。それなのに押し付けようとするなどあり得ない。

「お主はゼギウスを殺そうとしておるのか!」

「魔王にここまで言わせるなんてゼギくんも罪な人だね~。アルメシアちゃんは分からないかもしれないけどゼギくんは負けないよ。そう信じてるから私はお願いするし任せるの」

「それで死んだらどうするつもりじゃ!」

信じてるから。そんなものは当てにならない。信じていれば帰ってくるのなら父上だって今もここに居るはずだ。そういった想いを全て壊すほどハオは強い。

もうあんな悲しい思いをしたくはない。メナドールはそういった経験がないから簡単に頼んでしまうのだろう。それを責めることはできない。きっと自分も父上の経験がなければそうしていたから。

だから自分のためにもメナドールにそういった思いをさせないためにも止めなくてならない。

「だから死なないよ。ゼギくんは勝つから」

「答えになっておらぬ!」

「お前らうるせぇな。少し黙れ」

激しくなっていく言い合いを止めたのはゼギウスのその一言だった。

その言葉に自分もメナドールも黙る。

「何で俺が戦うのにお前たちが言い争ってんだよ…俺はな、踏み倒せる恩は踏み倒す。返すのが面倒くせぇからな」

真剣に話し始めたかと思ったらいきなり屑のような発言をする。そこに呆れそうになるがゼギウスの言葉は続いた。

「だけど返すべき恩は返さないといけねぇとも思う。なんだかんだアルにもメナにもそこそこな恩がある。だからここらで恩返しして恩を押し付けてやるよ。ハオなんて馬鹿面倒くせぇ恩はこの先何があっても返し切れねぇから俺は怠けた生活が送れる。分かるか?俺はここで、面倒事を1つ熟せば楽できるんだよ。だからハオと戦う。それだけだ」

所々屑だったり約束してもないことが紛れ込んでいたりするがゼギウスの素直になれない部分が出ているのだろう。いや、怠けた生活を送りたいのは本心か。

「ゼギくんって素直じゃないよね」

「うむ。我もそう思うのじゃ」

「でもそういうところも可愛い~」

メナドールはゼギウスを抱きしめている。その光景に恋仲なのかと一瞬思ったが、ゼギウスの溜息が出ていそうな表情を見て違うと分かった。それにどこか安心する。

このまま話が逸れていきそうな雰囲気があるが1つ確認しておかなければならないことがある。

「お主と父上はどんな関係だったのじゃ?」

どれだけ優しさや打算といった様々な思惑があったとしてもこれだけは聞いておかないと自分がゼギウスにハオのことを頼むことはできない。それ相応の関係でなければゼギウスがやる気になっているとはいえ、全力で止める。

そんな思いを込めて聞くとゼギウスは面倒くさそうに喋り始めた。
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