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砂漠の旅
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「暑いなぁ……」
俺はひたすら砂漠を歩いていた。
暑いというか熱い。焼けてしまいそうだ。なぜこんな場所にこなきゃならないんだと思ったが、来ようと思ったのは自分である。
「やっぱり止めるかな」
『先ほどから何度もそう言っているぞ。引き返すならさっさと引き返せ』
「いやまぁそうなんだけどさ」
耳ではなく頭に響いた声に、俺は慌てることなく返す。もういい加減聞き慣れた。俺の持つ聖剣の声だ。
「ここまで来て帰るのももったいなくないか?」
『だったらぼやくな、キクチ』
「それとこれとは別問題なんだよ」
言い返したら、聖剣は黙った。単に呆れているだけだというのが、付き合いも長くなった俺には良く分かった。
以前もこの砂漠に足を踏み入れたが、あの時よりも暑くなってる気がする。そういえば、仲間たちに「この暑さ、何とかできないのか」と言われたなと思う。あの時は「無理だ」とすげなく断ったが。
「《水防御》」
魔法を唱えた。俺の頭上に水の壁ができる。それがいい具合に太陽の光を弱めてくれる。
「雨」
さらに一言加えると、水の壁から雨のように水が落ちてくる。フーッと息を吐いた。気持ちいい。
『そんなことができるなら、最初からやっておけば良かったのではないか?』
「うるさい。うっかり忘れてたんだよ、文句あるか」
『我は暑かろうと寒かろうと関係ないから、どちらでも構わぬが』
「それはそれで腹立つ」
こいつは剣なのだから、気温など関係ないのは確かだろうが、羨ましいというよりムカつくレベルだ。いっそ、どこかに捨ててやろうか。
『……………』
が、聖剣からの無言の圧力に、俺は苦笑した。
「冗談だ」
『……ふん』
俺が歩くのに合わせて、頭上の水の壁も一緒に動く。先ほどまでの暑さが驚くくらいに和らいだ。そして暑いのがマシになると、意識は別のことを考える。
「なぁ、本当に昔はこの砂漠に雨が降っていたのか?」
『そうだ。自然に降る雨ではなく、何者かが降らせていたようだがな』
以前にこの砂漠に足を踏み入れたときと同じ回答だ。これが、俺がこの砂漠に足を踏み入れた理由。どうせ何も目的がない、旅というより放浪だ。だから、その"何者か"を探してみようと思ったのだ。
暑すぎて後悔しかけてるけど、そもそも水魔法の適性のおかげでどうにでもできると思ったから、ここに来たのだ。うっかり忘れてた俺が悪い。
そんなこんなで、水の壁の力が弱まったら魔法を唱え治しつつ、砂漠を彷徨う。そして数日後、俺は何かの存在を感じ取って足を進めて、見つけたものは……。
「なんだあれ」
俺は思わず声に出していた。
俺の知らない砂漠の魔物かと思ったが、そうではなかった。そこにあったのは虹のように輝く壁、もしくは結界とでも言えばいいだろうか。半径数メートルほどの半円形の形をしたそれが、砂漠の上にドンとあったのだ。
「……何か、いるか?」
『そのようだな』
虹色の壁の中には何かの姿があるようだが、はっきりとは見えない。
「どうしようか」
『壊せばいいのではないか?』
「そんなあっさりと。敵か何かと思われたらどうするんだ」
『中にいるのが味方だとは限らないのではないか?』
「……そうかもしれないけど」
悩んだが、結局俺は聖剣を抜いた。この虹色の壁が中にいる者が出した可能性もあるが、逆にこの壁に囚われている可能性もあるからだ。もし仮に敵対することになっても、魔族たちとの戦いを勝ち抜いた俺だ。早々後れを取ることもないだろう。
「《水の付与》」
魔法を唱えると、聖剣が水に覆われる。蒼く輝いて、鋭い刃を形作った。そして虹色の壁に向かって、斬り付ける。
一回で十分だった。たったそれだけで切れ目が入り、そこから罅が入っていく。それが全体に広がると、壁は跡形もなく消え失せた。
「よし」
俺は頷いて、その何かの姿に目を向ける。動く様子はない。念のため、聖剣は抜き放ったまま近づいていく。
「ゾウ、か?」
はっきり見えてきた姿に、俺はつぶやく。テレビなんかで見たことのある動物のゾウとそっくりだ。そいつが横倒しになっている。
動く様子のないそのゾウに、もしかして死んでるんだろうかと思いつつ、さらに近づく。そして聞こえたのは。
スピー、スピー、スピー……
「寝てるのかよっ!」
思わず叫んでいた。
俺はひたすら砂漠を歩いていた。
暑いというか熱い。焼けてしまいそうだ。なぜこんな場所にこなきゃならないんだと思ったが、来ようと思ったのは自分である。
「やっぱり止めるかな」
『先ほどから何度もそう言っているぞ。引き返すならさっさと引き返せ』
「いやまぁそうなんだけどさ」
耳ではなく頭に響いた声に、俺は慌てることなく返す。もういい加減聞き慣れた。俺の持つ聖剣の声だ。
「ここまで来て帰るのももったいなくないか?」
『だったらぼやくな、キクチ』
「それとこれとは別問題なんだよ」
言い返したら、聖剣は黙った。単に呆れているだけだというのが、付き合いも長くなった俺には良く分かった。
以前もこの砂漠に足を踏み入れたが、あの時よりも暑くなってる気がする。そういえば、仲間たちに「この暑さ、何とかできないのか」と言われたなと思う。あの時は「無理だ」とすげなく断ったが。
「《水防御》」
魔法を唱えた。俺の頭上に水の壁ができる。それがいい具合に太陽の光を弱めてくれる。
「雨」
さらに一言加えると、水の壁から雨のように水が落ちてくる。フーッと息を吐いた。気持ちいい。
『そんなことができるなら、最初からやっておけば良かったのではないか?』
「うるさい。うっかり忘れてたんだよ、文句あるか」
『我は暑かろうと寒かろうと関係ないから、どちらでも構わぬが』
「それはそれで腹立つ」
こいつは剣なのだから、気温など関係ないのは確かだろうが、羨ましいというよりムカつくレベルだ。いっそ、どこかに捨ててやろうか。
『……………』
が、聖剣からの無言の圧力に、俺は苦笑した。
「冗談だ」
『……ふん』
俺が歩くのに合わせて、頭上の水の壁も一緒に動く。先ほどまでの暑さが驚くくらいに和らいだ。そして暑いのがマシになると、意識は別のことを考える。
「なぁ、本当に昔はこの砂漠に雨が降っていたのか?」
『そうだ。自然に降る雨ではなく、何者かが降らせていたようだがな』
以前にこの砂漠に足を踏み入れたときと同じ回答だ。これが、俺がこの砂漠に足を踏み入れた理由。どうせ何も目的がない、旅というより放浪だ。だから、その"何者か"を探してみようと思ったのだ。
暑すぎて後悔しかけてるけど、そもそも水魔法の適性のおかげでどうにでもできると思ったから、ここに来たのだ。うっかり忘れてた俺が悪い。
そんなこんなで、水の壁の力が弱まったら魔法を唱え治しつつ、砂漠を彷徨う。そして数日後、俺は何かの存在を感じ取って足を進めて、見つけたものは……。
「なんだあれ」
俺は思わず声に出していた。
俺の知らない砂漠の魔物かと思ったが、そうではなかった。そこにあったのは虹のように輝く壁、もしくは結界とでも言えばいいだろうか。半径数メートルほどの半円形の形をしたそれが、砂漠の上にドンとあったのだ。
「……何か、いるか?」
『そのようだな』
虹色の壁の中には何かの姿があるようだが、はっきりとは見えない。
「どうしようか」
『壊せばいいのではないか?』
「そんなあっさりと。敵か何かと思われたらどうするんだ」
『中にいるのが味方だとは限らないのではないか?』
「……そうかもしれないけど」
悩んだが、結局俺は聖剣を抜いた。この虹色の壁が中にいる者が出した可能性もあるが、逆にこの壁に囚われている可能性もあるからだ。もし仮に敵対することになっても、魔族たちとの戦いを勝ち抜いた俺だ。早々後れを取ることもないだろう。
「《水の付与》」
魔法を唱えると、聖剣が水に覆われる。蒼く輝いて、鋭い刃を形作った。そして虹色の壁に向かって、斬り付ける。
一回で十分だった。たったそれだけで切れ目が入り、そこから罅が入っていく。それが全体に広がると、壁は跡形もなく消え失せた。
「よし」
俺は頷いて、その何かの姿に目を向ける。動く様子はない。念のため、聖剣は抜き放ったまま近づいていく。
「ゾウ、か?」
はっきり見えてきた姿に、俺はつぶやく。テレビなんかで見たことのある動物のゾウとそっくりだ。そいつが横倒しになっている。
動く様子のないそのゾウに、もしかして死んでるんだろうかと思いつつ、さらに近づく。そして聞こえたのは。
スピー、スピー、スピー……
「寝てるのかよっ!」
思わず叫んでいた。
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