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第十五章 帰郷
モントルビアの教会
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第二章に出てきた教会の神官、フロイドの再登場です。
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モントルビア王国の端。荒野にポツンと一軒だけ建つ教会。
いつものように、レソントの街から馬でここまでやってきたフロイドは、空を見上げた。
何が、とは分からない。だが、空気が明らかに変わったのは、三ヶ月ほど前だ。
遙か遠くの空に、突如登った光の柱。その光が空に突き刺さり、一瞬で消えた。その直後、街道にたくさんいた魔物が何かに怯えるようにして、去っていった。それから嘘のように、魔物の出現が減った。
それらの事実から導き出されるのは、一つの答え。
すなわち。
――勇者様が、魔王を倒したのだ、と。
フロイドの住むレソントの街では、すでにそれが既知の事実として知れ渡り、お祭り騒ぎになっている。
だが、とフロイドは思う。
それが公式発表として出されていないのだ。
魔国から戻ってきた勇者たちが最初にたどり着くのは北の巨大帝国、ルバドール帝国。
戻ったその時点で、ルバドール帝国から世界中に向けて「魔王討伐」の報がもたらされるだろう。そう思うのに、そうした話が一切ない。
まあレソントなど、モントルビアでも外れの街だから、もしかしたらすでに王都にはその報せが届いているのかもしれないが。
ふう、と息を吐いたフロイドは、教会の中に入ろうとして、目の端に人影を捉えた。そちらに視線を向けて……フロイドは大きく目を見開く。
そこにいたのは、かつてこの教会で出会った六人の冒険者たち。……ほぼ間違いなく、勇者一行であろうと、フロイドが思っている者たちだった。
※ ※ ※
「フロイドさん、お久しぶりです。こんにちは」
挨拶してきたのは、その六人の中の紅一点。リィカだ。
この教会に来たときは、限界ギリギリのボロボロの姿だったが、今のリィカは元気そうに見えた。
「ええ、お久しぶりですね、リィカさん。皆様方も」
リィカに挨拶を返し、他の五人の顔も見つつ挨拶する。
皆、元気そうだ。体調が悪そうな様子もなく、大きな怪我を負っている様子もなく、安心する。
「それで、どうされましたか?」
正直に言えば色々問いただしたい気持ちも多いのだが、フロイドは彼らが勇者一行だと名乗ったのを聞いたわけではない。
彼らが言わないことを、勝手に聞くのは失礼だろう。そう思い、素知らぬふりして質問した。
その問いに答えたのも、リィカだった。
「はい。その、地下の魔方陣、使わせて頂きたいのです」
「使う……!?」
フロイドは驚愕した。
地下にある魔方陣。
前回の勇者、シゲキを故郷に帰すために、仲間の神官が研究して描いた魔方陣。しかし、それは結局発動することなく、帰すことは叶わなかったのだ。
それを今、リィカははっきりと「使う」と言ったのだ。
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モントルビア王国の端。荒野にポツンと一軒だけ建つ教会。
いつものように、レソントの街から馬でここまでやってきたフロイドは、空を見上げた。
何が、とは分からない。だが、空気が明らかに変わったのは、三ヶ月ほど前だ。
遙か遠くの空に、突如登った光の柱。その光が空に突き刺さり、一瞬で消えた。その直後、街道にたくさんいた魔物が何かに怯えるようにして、去っていった。それから嘘のように、魔物の出現が減った。
それらの事実から導き出されるのは、一つの答え。
すなわち。
――勇者様が、魔王を倒したのだ、と。
フロイドの住むレソントの街では、すでにそれが既知の事実として知れ渡り、お祭り騒ぎになっている。
だが、とフロイドは思う。
それが公式発表として出されていないのだ。
魔国から戻ってきた勇者たちが最初にたどり着くのは北の巨大帝国、ルバドール帝国。
戻ったその時点で、ルバドール帝国から世界中に向けて「魔王討伐」の報がもたらされるだろう。そう思うのに、そうした話が一切ない。
まあレソントなど、モントルビアでも外れの街だから、もしかしたらすでに王都にはその報せが届いているのかもしれないが。
ふう、と息を吐いたフロイドは、教会の中に入ろうとして、目の端に人影を捉えた。そちらに視線を向けて……フロイドは大きく目を見開く。
そこにいたのは、かつてこの教会で出会った六人の冒険者たち。……ほぼ間違いなく、勇者一行であろうと、フロイドが思っている者たちだった。
※ ※ ※
「フロイドさん、お久しぶりです。こんにちは」
挨拶してきたのは、その六人の中の紅一点。リィカだ。
この教会に来たときは、限界ギリギリのボロボロの姿だったが、今のリィカは元気そうに見えた。
「ええ、お久しぶりですね、リィカさん。皆様方も」
リィカに挨拶を返し、他の五人の顔も見つつ挨拶する。
皆、元気そうだ。体調が悪そうな様子もなく、大きな怪我を負っている様子もなく、安心する。
「それで、どうされましたか?」
正直に言えば色々問いただしたい気持ちも多いのだが、フロイドは彼らが勇者一行だと名乗ったのを聞いたわけではない。
彼らが言わないことを、勝手に聞くのは失礼だろう。そう思い、素知らぬふりして質問した。
その問いに答えたのも、リィカだった。
「はい。その、地下の魔方陣、使わせて頂きたいのです」
「使う……!?」
フロイドは驚愕した。
地下にある魔方陣。
前回の勇者、シゲキを故郷に帰すために、仲間の神官が研究して描いた魔方陣。しかし、それは結局発動することなく、帰すことは叶わなかったのだ。
それを今、リィカははっきりと「使う」と言ったのだ。
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