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第十四章 魔国
VS魔王ホルクス④
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(なるほど魔王か。凄まじいものだな)
泰基は、暁斗の放った衝撃波を受け止める魔王を見て、改めてそう思う。
ゲームでもフィクション作品でも何でもなく、現実としての魔王を見て、心からそう思ったのだ。
暁斗の放った衝撃波は、側で見ているだけでもその威力には汗が流れる。よくあんな威力を出せるものだと思う。
それをたった右腕一本で受け止める魔王。だが、それが魔王にとってやりやすい防御なのだということに、泰基は気付いていた。
もし両手で防御しようとすれば、両手に魔力を集めなければならない。それよりは、右手だけに絞って防御する方がやりやすいのだ。
しかし、だからこそ隙も生まれる。右側に魔力が集中しているから、左側は無防備だ。一気に倒せなくてもいい。確実に隙をついていけばいい。
「《氷の竜巻》!」
四天王フロストックとの戦いで使えるようになった混成魔法。泰基が使える魔法の中で、一番強力な魔法を、無防備な左側に放った。
だが、魔王は冷静だった。
暁斗の放った衝撃波が、一瞬で消え失せる。そして、泰基の放った《氷の竜巻》を見て、体をひねり右手を向けた。その瞬間だった。
「《水蒸気爆発》!」
リィカが無防備な左側へ混成魔法を放った。
魔王が目を見開き、左手を前に出す。《水蒸気爆発》を受け止めた。そして同時に、その右手は氷の竜巻を受け止めていた。
「お、おおぉぉ、おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
魔王が叫ぶ。
《氷の竜巻》だけではなく、《水蒸気爆発》も魔王を貫けない。その手で受け止められている。だが、その威力はまだ残っている。
「《風の付与》!」
両手が塞がった魔王の元に、アレクが飛び込んだ。エンチャントを唱える。さらに、アレクが魔剣に魔力を流したのが分かった。同時に、緑色の風のエンチャントが光る。
「ハッ!」
剣技は発動させず、ただシンプルに剣を横に振りきる。それだけに、剣は早く、鋭い。
魔王の腹を切り裂き、鮮血が飛び散った。初めてダメージらしいダメージを与えた。
「ガッ!」
魔王が苦しそうな声を出す。
そこに飛び込んだのは、回復が済んだバルだ。
「まだ終わんねぇぞ! 【獅子斬釘撃】!」
魔力付与した土の直接攻撃の剣技が、アレクの与えた傷目掛けて発動し、さらにその傷を広げる。
そして、バルの後ろから暁斗が飛び込んだ。その聖剣は、先ほど魔力の津波を断ち切ったときのように、魔力が流され強く輝いている。
「これで終わりだっ!」
暁斗が叫んで、剣を繰り出す。
それに合わせて、泰基は《氷の竜巻》に更なる魔力を込めた。リィカの《水蒸気爆発》も、同様に威力が上がる。
これで決まりだと、泰基は思った。右手は《氷の竜巻》、左手は《水蒸気爆発》を防ぐために使われ、腹部には大きな傷ができている。そこにさらに攻撃を加えられれば、持つはずがない。
だが、魔王の魔王たる所以を、泰基は思い知らされることになる。
「我を、舐めるなっ!!!」
魔王の一括とともに、《氷の竜巻》と《水蒸気爆発》が消え失せる。
同時に、魔王が発したのは、小さな魔力の刃のようなものだった。
「うわああぁぁぁっ!?」
「暁斗っ!?」
正面から魔王に攻め入っていた暁斗が、それをまともに受ける。泰基の目に、全身から血を流す暁斗が目に入る。
「くっ!」
「ぐわっ!」
暁斗だけではない。近い距離にいたアレクとバルも大きなダメージを受けている。
泰基は、とっさに自らの魔剣に手を触れる。
「デフェンシオ!」
「《水防御》!」
かけた守りは自分に対してだ。ギリギリ間に合った。
ユーリは、距離があったから何とかなっただろう。自分と似たり寄ったりの距離にいたリィカは、防御を張っていた。が、しかし。
「きゃあっ!」
おそらくあまり魔力を込められなかったのだろう。あっさりと壊されたようだ。暁斗たちほどではないが、ダメージを受けている。
それでも、優先するべきは暁斗たちだ。そのために、自分を防御したのだ。泰基が暁斗を回復するべく動こうとしたときだ。魔王から、さらなる魔力が吹き出した。
「受けて見よ!!!」
「《結界》!!」
魔王の声とともに魔法を唱えたのは、後方にいたユーリだ。泰基の前面に……、いや、仲間たち全員を守るように、そして魔王を囲むように三百六十度全方位に《結界》が張られた。
同時に魔王から、先ほどの魔力の津波が、全方位に発動されたのだった。
泰基は、暁斗の放った衝撃波を受け止める魔王を見て、改めてそう思う。
ゲームでもフィクション作品でも何でもなく、現実としての魔王を見て、心からそう思ったのだ。
暁斗の放った衝撃波は、側で見ているだけでもその威力には汗が流れる。よくあんな威力を出せるものだと思う。
それをたった右腕一本で受け止める魔王。だが、それが魔王にとってやりやすい防御なのだということに、泰基は気付いていた。
もし両手で防御しようとすれば、両手に魔力を集めなければならない。それよりは、右手だけに絞って防御する方がやりやすいのだ。
しかし、だからこそ隙も生まれる。右側に魔力が集中しているから、左側は無防備だ。一気に倒せなくてもいい。確実に隙をついていけばいい。
「《氷の竜巻》!」
四天王フロストックとの戦いで使えるようになった混成魔法。泰基が使える魔法の中で、一番強力な魔法を、無防備な左側に放った。
だが、魔王は冷静だった。
暁斗の放った衝撃波が、一瞬で消え失せる。そして、泰基の放った《氷の竜巻》を見て、体をひねり右手を向けた。その瞬間だった。
「《水蒸気爆発》!」
リィカが無防備な左側へ混成魔法を放った。
魔王が目を見開き、左手を前に出す。《水蒸気爆発》を受け止めた。そして同時に、その右手は氷の竜巻を受け止めていた。
「お、おおぉぉ、おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
魔王が叫ぶ。
《氷の竜巻》だけではなく、《水蒸気爆発》も魔王を貫けない。その手で受け止められている。だが、その威力はまだ残っている。
「《風の付与》!」
両手が塞がった魔王の元に、アレクが飛び込んだ。エンチャントを唱える。さらに、アレクが魔剣に魔力を流したのが分かった。同時に、緑色の風のエンチャントが光る。
「ハッ!」
剣技は発動させず、ただシンプルに剣を横に振りきる。それだけに、剣は早く、鋭い。
魔王の腹を切り裂き、鮮血が飛び散った。初めてダメージらしいダメージを与えた。
「ガッ!」
魔王が苦しそうな声を出す。
そこに飛び込んだのは、回復が済んだバルだ。
「まだ終わんねぇぞ! 【獅子斬釘撃】!」
魔力付与した土の直接攻撃の剣技が、アレクの与えた傷目掛けて発動し、さらにその傷を広げる。
そして、バルの後ろから暁斗が飛び込んだ。その聖剣は、先ほど魔力の津波を断ち切ったときのように、魔力が流され強く輝いている。
「これで終わりだっ!」
暁斗が叫んで、剣を繰り出す。
それに合わせて、泰基は《氷の竜巻》に更なる魔力を込めた。リィカの《水蒸気爆発》も、同様に威力が上がる。
これで決まりだと、泰基は思った。右手は《氷の竜巻》、左手は《水蒸気爆発》を防ぐために使われ、腹部には大きな傷ができている。そこにさらに攻撃を加えられれば、持つはずがない。
だが、魔王の魔王たる所以を、泰基は思い知らされることになる。
「我を、舐めるなっ!!!」
魔王の一括とともに、《氷の竜巻》と《水蒸気爆発》が消え失せる。
同時に、魔王が発したのは、小さな魔力の刃のようなものだった。
「うわああぁぁぁっ!?」
「暁斗っ!?」
正面から魔王に攻め入っていた暁斗が、それをまともに受ける。泰基の目に、全身から血を流す暁斗が目に入る。
「くっ!」
「ぐわっ!」
暁斗だけではない。近い距離にいたアレクとバルも大きなダメージを受けている。
泰基は、とっさに自らの魔剣に手を触れる。
「デフェンシオ!」
「《水防御》!」
かけた守りは自分に対してだ。ギリギリ間に合った。
ユーリは、距離があったから何とかなっただろう。自分と似たり寄ったりの距離にいたリィカは、防御を張っていた。が、しかし。
「きゃあっ!」
おそらくあまり魔力を込められなかったのだろう。あっさりと壊されたようだ。暁斗たちほどではないが、ダメージを受けている。
それでも、優先するべきは暁斗たちだ。そのために、自分を防御したのだ。泰基が暁斗を回復するべく動こうとしたときだ。魔王から、さらなる魔力が吹き出した。
「受けて見よ!!!」
「《結界》!!」
魔王の声とともに魔法を唱えたのは、後方にいたユーリだ。泰基の前面に……、いや、仲間たち全員を守るように、そして魔王を囲むように三百六十度全方位に《結界》が張られた。
同時に魔王から、先ほどの魔力の津波が、全方位に発動されたのだった。
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