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第十三章 魔国への道

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「リィカ、使った魔法は……」
「生活魔法の《ファイア》だよ」

 とりあえず食事をしながら、ということで、朝食を食べながら話をする。しかし、他の誰もが顔色が悪い。
 ユーリの質問に、リィカが答えた内容に驚愕が走った。先ほどのリィカの魔法は、上級魔法並の威力があったのだ。

「……生活魔法で、あれですか。魔力暴走の一歩手前といったところでしょうかね」

 リィカがコクンと頷いた。

「なんか、魔力がおかしいなって思って。体はどこも何ともないんだけど、違和感がひどくて、使ってみたらあんな感じになっちゃった」

 リィカがうつむき加減にポソポソと話す。その言葉に、さらに他の皆の表情が暗くなっていく。
 そんな中、バナスパティが口を開いた。

『あれだけ生命力を使ったのだ。命があっただけで満足しろ、と言いたいところではあるがな』
「……はい、そうですね」

 リィカは顔を上げて笑う。
 反論できない。全くもってその通りだからだ。

『早とちりするな。コントロール出来なくなったなら、また出来るようになれば良いだけだ。魔道具、と言うたか。あれはコントロールに良い練習であろう?』

 リィカは目を見開く。
 暗い顔をしていた他の皆も、驚いてバナスパティを凝視する。それをバナスパティはフンと鼻を鳴らすが、これは照れくさいのをごまかしているのか。

『魔力量が多いからコントロールも苦労するであろうが、やってやれぬことはなかろう。魔道具作りであれば、魔法を使うよりは安全に練習できるはずだ』
「はいっ、ありがとうございます! がんばります!」

 リィカが大きく言って、頭を下げる。
 もう一度、バナスパティがフンと鼻を鳴らした。

『まあ良い。土産があるのだ。それを使って練習するが良い』
「みやげ……?」

 リィカが首を傾げる。
 バナスパティが口を開け、そこから出てきたのは大量の果物と、魚介類……ではなく海の魔物たち。

「………………」
『状況が状況なので、渡し損ねておった。魔物はBランクがほとんどだが、Aランクも混じっておるはず。練習には十分であろう』
「………………」
『では、我はそろそろ戻る。息災で……』
「待って下さい。多過ぎです。全部の解体が終わるまで、見張りしてて下さい」

 果物はとりあえず良いとして、魔物達はバナスパティが倒したそのままだ。解体などされているはずもない。
 練習と言ってくれるなら、魔石くらい取り出しておいてほしい。

 ここは魔族の勢力圏だし、いつ魔物が来るかも分からない場所でこんな大量の解体など、条件が整わなければできない。

 その条件をクリアするため、言うだけ言って帰ってしまいそうなバナスパティ見張り役を、リィカは引き留めたのだった。


※ ※ ※


「……大量だったな」
「……大量でしたね」
「……大量過ぎんだろ」

 解体が終わって、戻っていくバナスパティの後ろ姿を見送りながら、アレク、ユーリ、バルがぼやいた。

 一言で言えば、大変だった。すでに昼時である。
 魔物が大量だし、魔石も大量である。Bランクは数えるのも面倒だ。Aランクも十個くらいある。

「サムさんが知ったら、くれって言うのかなぁ」
「言うでしょうね、間違いなく」

 リィカのつぶやきに、ユーリが苦笑する。
 そのまま解体したばかりの魔物の肉を手をとった。

「このまま昼食にしましょうか」
「そうだな」

 アレクが頷いた。
 そして、Bランクの魔石を手に取って、リィカに渡す。

「リィカ、何個壊しても構わない。無理しなくてもいい。……だが、こんな事を言って悪いが、リィカを頼りにしているんだ。リィカの代わりは、誰もいない」

「うん。ありがとう、アレク」

 何を謝るのか。頼りにしていると言われて、嬉しくないはずがない。

 魔石に魔力を込める。今までだったら何てことなく出来たのに、荒れる魔力にリィカは息を呑む。
 Bランクの魔石が、一瞬で崩れ落ちた。

「まだ、これからだ」

 リィカは、魔力暴走を起こした所から始まったのだ。そこから魔法の練習をして、今に至っている。
 最初に戻っただけだ。またそこから始めればいい。

 アレクに、自分だけだと言ってもらえて嬉しいから。そして、泰基や暁斗が自分を責めてしまわないように。

 リィカは、次の魔石を手に取った。


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