465 / 637
第十三章 魔国への道
闇の上級魔法
しおりを挟む
それは、聖地にいたときに、不死が巣くう教会に乗り込んだ時の事だ。
ダランが使った状態異常の魔法が、麻痺か眠りかだけだったから、暁斗は毒状態にする魔法も「見たい」と言った。
それに対するダランの返答が「見た目が不気味になる」というものだった。
そうでなくても、不死の魔物に囲まれて怖いのに、さらに不気味になったらかなわないと思って、それ以上のリクエストはしなかった。
それが今、放たれた。
「……あっ!?」
息が苦しい。
先ほどの《死》とは違う。呼吸ができないわけじゃない。けれど、苦しい。寒い。ガタガタと体が震える。
知らず、膝をつく。
状態異常の魔法は、相手が強いとかかりにくい。
本来であれば、暁斗くらいの強さがあればそう掛かりはしない。けれど、戦闘の意思がない暁斗には、まともに抵抗することさえできなかった。
「あーあ、こんな一方的じゃつまんない。まだ見せてない上級魔法も見せてあげるからさ、ちゃんと抵抗してよ、アキト」
「………………!」
「一つ目ね。《暗黒物質爆》」
それは、一言で言うなら、黒い原爆、だろうか。
暁斗を囲むように黒い光が取り囲み、それが中央に収縮していく。そして最後に、周囲を巻き込むように大きな爆発を起こした。
「ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ」
防御も出来ず、まともに受けてしまった暁斗は、体のあちこちから出血していた。呼吸が荒いのは、《毒》のせいもあるだろうか。
「抵抗しないと、次で死ぬんじゃない? 二つ目だよ。《闇の死神鎌》」
「《防、御》……!」
息を切らしながら、何とか唱える。
暁斗の周囲に、黒く光を放つ鎌が多数出現した。ゼェゼェと息をしながら、驚愕する。
闇の攻撃魔法は、光のそれとそっくりだ。
聖地で見た闇魔法はそっくりだったし、一つ目の《暗黒物質爆》は光魔法の《閃光瞬爆》とよく似ていた。
だけど、これは似ているというのだろうか。
これは、《光の断罪》と対を成す魔法だろう。でも、あれは光の斧が出現する魔法だ。こちらは黒い鎌。正直そっくりとは思えなかった。
「…………………!」
黒い鎌が、暁斗の《防御》に直撃する。それに対抗するように魔力を込めるが……ピシリ、と音がした。
「……………ぁ……」
ピシピシと音が響く。《防御》のあちこちに罅が入っていき……そして、破られた。
「う、ぐううううぅぅぅ……」
痛くて苦しくて、まともに悲鳴すら上げられない。黒い鎌が消えると同時に、暁斗は前のめりに倒れ込んだ。
指一本すら、まともに動かせない。
暁斗の虚ろな目から、涙が零れた。
「結局、全然攻撃してこなかったね。まあいいや、ボクの勝ちだよ」
ダランの声が上から聞こえても、もう暁斗にはどうすることもできなかった。
そのまま、静かに目を閉じた……その時だった。
「いけえええぇぇぇぇぇぇっ!!」
大きく叫ぶ声。
――バリイィィィィィン!!
大きな音を立てて、結界が壊れる。
崩れていく結界の向こう側に、リィカがいた。
ダランが使った状態異常の魔法が、麻痺か眠りかだけだったから、暁斗は毒状態にする魔法も「見たい」と言った。
それに対するダランの返答が「見た目が不気味になる」というものだった。
そうでなくても、不死の魔物に囲まれて怖いのに、さらに不気味になったらかなわないと思って、それ以上のリクエストはしなかった。
それが今、放たれた。
「……あっ!?」
息が苦しい。
先ほどの《死》とは違う。呼吸ができないわけじゃない。けれど、苦しい。寒い。ガタガタと体が震える。
知らず、膝をつく。
状態異常の魔法は、相手が強いとかかりにくい。
本来であれば、暁斗くらいの強さがあればそう掛かりはしない。けれど、戦闘の意思がない暁斗には、まともに抵抗することさえできなかった。
「あーあ、こんな一方的じゃつまんない。まだ見せてない上級魔法も見せてあげるからさ、ちゃんと抵抗してよ、アキト」
「………………!」
「一つ目ね。《暗黒物質爆》」
それは、一言で言うなら、黒い原爆、だろうか。
暁斗を囲むように黒い光が取り囲み、それが中央に収縮していく。そして最後に、周囲を巻き込むように大きな爆発を起こした。
「ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ」
防御も出来ず、まともに受けてしまった暁斗は、体のあちこちから出血していた。呼吸が荒いのは、《毒》のせいもあるだろうか。
「抵抗しないと、次で死ぬんじゃない? 二つ目だよ。《闇の死神鎌》」
「《防、御》……!」
息を切らしながら、何とか唱える。
暁斗の周囲に、黒く光を放つ鎌が多数出現した。ゼェゼェと息をしながら、驚愕する。
闇の攻撃魔法は、光のそれとそっくりだ。
聖地で見た闇魔法はそっくりだったし、一つ目の《暗黒物質爆》は光魔法の《閃光瞬爆》とよく似ていた。
だけど、これは似ているというのだろうか。
これは、《光の断罪》と対を成す魔法だろう。でも、あれは光の斧が出現する魔法だ。こちらは黒い鎌。正直そっくりとは思えなかった。
「…………………!」
黒い鎌が、暁斗の《防御》に直撃する。それに対抗するように魔力を込めるが……ピシリ、と音がした。
「……………ぁ……」
ピシピシと音が響く。《防御》のあちこちに罅が入っていき……そして、破られた。
「う、ぐううううぅぅぅ……」
痛くて苦しくて、まともに悲鳴すら上げられない。黒い鎌が消えると同時に、暁斗は前のめりに倒れ込んだ。
指一本すら、まともに動かせない。
暁斗の虚ろな目から、涙が零れた。
「結局、全然攻撃してこなかったね。まあいいや、ボクの勝ちだよ」
ダランの声が上から聞こえても、もう暁斗にはどうすることもできなかった。
そのまま、静かに目を閉じた……その時だった。
「いけえええぇぇぇぇぇぇっ!!」
大きく叫ぶ声。
――バリイィィィィィン!!
大きな音を立てて、結界が壊れる。
崩れていく結界の向こう側に、リィカがいた。
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

知らない異世界を生き抜く方法
明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。
なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。
そんな状況で生き抜く方法は?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる