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第十三章 魔国への道
アレク、バルVSヤクシャ、ヤクシニー④
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「アレク!」
「兄さん!」
バルとヤクシニーの叫びが重なる。
お互いに駆け寄ろうとして……同時に目の前の敵に気付いて動きを止める。
「勝った方が、味方を助けられる。それでいいな」
「分かりやすいわね。ええ、それでいいわ」
バルとヤクシニーは対峙し……先に動いたのは、ヤクシニーだった。
※ ※ ※
ヤクシャとヤクシニーに良いように翻弄されて、このままでは不利だ、どうにかこの状況を変えなければ、と考えていたのはバルも一緒だ。
どうするか。そう考えたのは、一瞬だった。
アレクは動く。間違いなく。受けに回ったら駄目だと、アレクならきっと攻勢に出る。
だから、バルは逆に出た。ひたすらに守勢に回ったのだ。
アレクの位置に気をつけつつ、ヤクシニーの攻撃がアレクに行かないように立ち回り続けた。
予想通りにアレクは攻撃に転じた。それを察しつつ、ヤクシニーの邪魔をし続けた。それでも、一度だけ抜かれてしまったが。
自分の判断は間違っていなかった。たった一つ、アレクの剣の寿命を考慮していなかったことを除けば。
バルも、父からもらった剣が二つに折られたとき、呆然として動けなかった。アレクだって同じようになることくらい、予想できたはずなのに。
(――今は、それを言ってもしょうがねぇか)
ヤクシャのことを兄と呼んだヤクシニーを見据える。まさか兄妹だとは思わなかったが、それもどうでもいい。
早く倒して、アレクの元に駆け付けるだけだ。
※ ※ ※
「シッ!」
ヤクシニーが小さく息を吐いて、拳を振るってきた。
バルは大きく息を吸って、体に力を込める。
ドン、という鈍い音がする。痛みはあるが、我慢できないほどではない。
ヤクシニーの拳の動きは速い。だが、一つ一つの攻撃は軽い。
バルの剣は大剣だ。細かい動きは苦手だ。であれば、体に力を入れて、そのまま体で攻撃を受けてしまった方が面倒がない。
魔道具の自動回復もあるから、ダメージもそんなに蓄積していかない。それよりも、攻撃するチャンスを逃さないようにする方が、よほど重要だ。
「……チッ」
ヤクシニーが小さく舌打ちしたのは、自分の攻撃がたいしたダメージになっていないことに気付いたからか。
ヤクシニーの右拳が、光を帯びた。黄色の光。土の属性の魔力だ。
バルは口の端を上げた。待っていたのは、これだ。
拳に魔力を纏わせての攻撃は、連打してこない。威力は大きくても、一撃だけだ。
バルも、剣に魔力を纏わせる。土の魔力だ。
振るわれる拳に合わせて、バルも剣を振る。
「セイッ!」
「【獅子斬釘撃】!」
土の、直接攻撃の剣技を発動させた。
先ほどの再現のような形になっている。拳と剣の激突だ。
ただし、アレクとヤクシャの激突と違うのは、バルの剣は魔剣だということだ。
「フォルテュード!」
「……………!」
バルがその銘を叫ぶ。ヤクシニーが驚愕の表情を浮かべた。
剣すら破壊する強度となった魔剣フォルテュードは、ヤクシニーの拳を破壊したのだった。
「兄さん!」
バルとヤクシニーの叫びが重なる。
お互いに駆け寄ろうとして……同時に目の前の敵に気付いて動きを止める。
「勝った方が、味方を助けられる。それでいいな」
「分かりやすいわね。ええ、それでいいわ」
バルとヤクシニーは対峙し……先に動いたのは、ヤクシニーだった。
※ ※ ※
ヤクシャとヤクシニーに良いように翻弄されて、このままでは不利だ、どうにかこの状況を変えなければ、と考えていたのはバルも一緒だ。
どうするか。そう考えたのは、一瞬だった。
アレクは動く。間違いなく。受けに回ったら駄目だと、アレクならきっと攻勢に出る。
だから、バルは逆に出た。ひたすらに守勢に回ったのだ。
アレクの位置に気をつけつつ、ヤクシニーの攻撃がアレクに行かないように立ち回り続けた。
予想通りにアレクは攻撃に転じた。それを察しつつ、ヤクシニーの邪魔をし続けた。それでも、一度だけ抜かれてしまったが。
自分の判断は間違っていなかった。たった一つ、アレクの剣の寿命を考慮していなかったことを除けば。
バルも、父からもらった剣が二つに折られたとき、呆然として動けなかった。アレクだって同じようになることくらい、予想できたはずなのに。
(――今は、それを言ってもしょうがねぇか)
ヤクシャのことを兄と呼んだヤクシニーを見据える。まさか兄妹だとは思わなかったが、それもどうでもいい。
早く倒して、アレクの元に駆け付けるだけだ。
※ ※ ※
「シッ!」
ヤクシニーが小さく息を吐いて、拳を振るってきた。
バルは大きく息を吸って、体に力を込める。
ドン、という鈍い音がする。痛みはあるが、我慢できないほどではない。
ヤクシニーの拳の動きは速い。だが、一つ一つの攻撃は軽い。
バルの剣は大剣だ。細かい動きは苦手だ。であれば、体に力を入れて、そのまま体で攻撃を受けてしまった方が面倒がない。
魔道具の自動回復もあるから、ダメージもそんなに蓄積していかない。それよりも、攻撃するチャンスを逃さないようにする方が、よほど重要だ。
「……チッ」
ヤクシニーが小さく舌打ちしたのは、自分の攻撃がたいしたダメージになっていないことに気付いたからか。
ヤクシニーの右拳が、光を帯びた。黄色の光。土の属性の魔力だ。
バルは口の端を上げた。待っていたのは、これだ。
拳に魔力を纏わせての攻撃は、連打してこない。威力は大きくても、一撃だけだ。
バルも、剣に魔力を纏わせる。土の魔力だ。
振るわれる拳に合わせて、バルも剣を振る。
「セイッ!」
「【獅子斬釘撃】!」
土の、直接攻撃の剣技を発動させた。
先ほどの再現のような形になっている。拳と剣の激突だ。
ただし、アレクとヤクシャの激突と違うのは、バルの剣は魔剣だということだ。
「フォルテュード!」
「……………!」
バルがその銘を叫ぶ。ヤクシニーが驚愕の表情を浮かべた。
剣すら破壊する強度となった魔剣フォルテュードは、ヤクシニーの拳を破壊したのだった。
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