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第十三章 魔国への道

泰基VSフロストック⑤

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 氷の竜巻同士がぶつかり合い、周囲に氷の破片を散らす。

「やってくれるわい。そんな混成魔法を隠し持っていたとはの」
「誰が隠すか。持っていたら、もっと早くに使ってるさ。使えるようになったのは、つい今さっきだぞ」
「ヒョッ!?」

 驚くフロストックに、泰基はフンと鼻で笑う。

「すぐその場で混成魔法を使うのが、リィカの専売特許だとでも思ったのか? だったら残念だったな」

 言って、さらに《氷の竜巻ブライニクル》に魔力を込める。同時に、フロストックも魔力を込めたのが分かる。

――バアアアァァァァァァァァァアァン!!

 氷の竜巻は、双方とも小さな氷の破片となって、消え失せた。

「ヒョー……」

 キラキラと舞い落ちる氷の破片を、フロストックが呆然として眺めている。

(今だ!)
「《水の付与アクア・エンチャント》!」

 エンチャントを唱えるのと同時に、足で結界の壁を思い切り蹴る。再び氷が滑るのを利用して、フロストックに肉薄する。
 光の魔力を付与し、さらに唱えた。

「【光輝突撃剣こうきとつげきけん】!」

 光の突き技の剣技。
 水のエンチャントが鋭く尖り、さらに内側から光り輝く。

「ヒョッ……しまっ……!」

 呆然としていたフロストックが気付いた時には遅かった。
 泰基の剣は、その心臓を貫いていた。


※ ※ ※


 泰基はわずかに顔をしかめる。
 肉を斬る感覚と流れる出血に、気分が悪くなる。

 これまで沢山の相手と戦ってきた。
 最初にパールと戦ったとき、そのトドメは暁斗にさせた。魔王を倒すということは暁斗が選んだ道だ。
 その道を行くのに、人と似ているからという理由でトドメをさせないのでは、この先戦っていくことは不可能だからだ。

 その後も戦ってきたが、幸か不幸か、泰基が魔族にトドメをさす場面はなかった。これが初めてだ。

 バタン、とフロストックが後ろに倒れた。

「……みごと……じゃ……」

 口から血を吐き出した。

「ちょうど、よかった、じゃろうて。……としよりの、ワッシが、いつまでも……いきてるもんじゃ……」

 力尽きたように、言葉はそこで途切れた。
 結界に罅が入り、崩れ落ちた。

「ふぅ……」

 泰基が息を吐く。
 その瞬間だった。

――バリイィィィィィン!!

 大きな音を立てて何かが割れた。

「リィカ!!!」

 暁斗が声まで蒼白にして、悲鳴を上げている。

 泰基が目にしたのは、驚愕の表情のダランと、リィカに駆け寄る暁斗。そして、地面に倒れ伏すリィカの姿だった。


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