450 / 637
第十三章 魔国への道
泰基VSフロストック①
しおりを挟む
泰基は目の前の魔族を見据えた。
暁斗のことは、リィカに任せる。大丈夫だ。リィカなら……凪沙なら、きっと暁斗を助けてくれる。
リィカの言うように、今は自分のことだけに集中するべきだ。暁斗を気にしすぎて、自分がやられてしまっては意味がない。
剣を抜いて、地面の氷に突き刺す。
魔力を流して爆発させるようにして氷を壊せば、両足の自由が戻った。
「ヒョッヒョッ、簡単に壊しおったな。まあ、一時的に動きを止められれば、それで十分ではあったが」
「詠唱もなしに魔法を使えるのは、なんでだ」
「さぁてのぉ。教える必要を感じないのぉ」
「そうか。だったら別にいい」
泰基は切り捨てた。
相手はおそらく魔法使い系だろう。であれば、接近戦で勝負を仕掛けるだけだ。
だが、先ほど氷付けにされた足が強張っている。少し動かしてみる。問題なさそうだ。
一歩踏み出そうとして……途端に凍えるような寒さを感じて、動きを止めた。
「なっ!?」
結界の中が、一面銀世界になっている。
さっきまでは何もなかったはずだ。だというのに、突然雪に覆われた。
「確かに、ワッシは剣士と戦いの相性は良いとは言えぬ。だが、寒さというのは、人の動きを鈍くするでの。これをワッシは『氷の世界』と呼んでおる」
ガチガチと歯がぶつかりそうになるが、それを食いしばって考える。
何も詠唱はなかった。だが、これはどう考えても魔法による現象だ。
氷だ。
最初から、この老人は氷を使っている。氷の塊、足を氷付けにする、そしてこの『氷の世界』とやら。
氷は水魔法だ。であれば、この老人は水属性なのか。だが、どれも既存の魔法にはないものばかり。
となれば、混成魔法か、と考えるが、混成魔法を完全な無詠唱で発動するのは無理だろう。あのジャダーカでさえ唱えていたのだ。
ならば、一体これは……。
「来ぬなら、こちらから行くぞ」
「――!! 《結界》!」
吹き付けてきたのは、吹雪だ。
慌てて防御する。
相当の威力だ。
だがそれはいい。問題は、これが何なのかということだ。
確かに魔力は動いた。だから魔法である事に変わりはない。
それを、詠唱も何もしないのは……。
「……そうか! ユニーク魔法か!」
ルベルトスも詠唱も何もしないで、光の剣を生み出していた。
それと同じだ。
「なーんじゃ。あっさり気づきおったな。じゃが、気付いたからといって、どうすることも出来まい」
さらに吹雪が強くなる。《結界》にさらに魔力を込める。
つまりは、この老人は氷魔法のユニーク魔法の使い手だということだ。
どうすることも出来ないことなどない。分かっているといないとでは大違いだ。
『タイキ、ボクの力使って』
(ああ。そうさせてもらう)
魔剣デフェンシオのデビュー戦だ。
暁斗のことは、リィカに任せる。大丈夫だ。リィカなら……凪沙なら、きっと暁斗を助けてくれる。
リィカの言うように、今は自分のことだけに集中するべきだ。暁斗を気にしすぎて、自分がやられてしまっては意味がない。
剣を抜いて、地面の氷に突き刺す。
魔力を流して爆発させるようにして氷を壊せば、両足の自由が戻った。
「ヒョッヒョッ、簡単に壊しおったな。まあ、一時的に動きを止められれば、それで十分ではあったが」
「詠唱もなしに魔法を使えるのは、なんでだ」
「さぁてのぉ。教える必要を感じないのぉ」
「そうか。だったら別にいい」
泰基は切り捨てた。
相手はおそらく魔法使い系だろう。であれば、接近戦で勝負を仕掛けるだけだ。
だが、先ほど氷付けにされた足が強張っている。少し動かしてみる。問題なさそうだ。
一歩踏み出そうとして……途端に凍えるような寒さを感じて、動きを止めた。
「なっ!?」
結界の中が、一面銀世界になっている。
さっきまでは何もなかったはずだ。だというのに、突然雪に覆われた。
「確かに、ワッシは剣士と戦いの相性は良いとは言えぬ。だが、寒さというのは、人の動きを鈍くするでの。これをワッシは『氷の世界』と呼んでおる」
ガチガチと歯がぶつかりそうになるが、それを食いしばって考える。
何も詠唱はなかった。だが、これはどう考えても魔法による現象だ。
氷だ。
最初から、この老人は氷を使っている。氷の塊、足を氷付けにする、そしてこの『氷の世界』とやら。
氷は水魔法だ。であれば、この老人は水属性なのか。だが、どれも既存の魔法にはないものばかり。
となれば、混成魔法か、と考えるが、混成魔法を完全な無詠唱で発動するのは無理だろう。あのジャダーカでさえ唱えていたのだ。
ならば、一体これは……。
「来ぬなら、こちらから行くぞ」
「――!! 《結界》!」
吹き付けてきたのは、吹雪だ。
慌てて防御する。
相当の威力だ。
だがそれはいい。問題は、これが何なのかということだ。
確かに魔力は動いた。だから魔法である事に変わりはない。
それを、詠唱も何もしないのは……。
「……そうか! ユニーク魔法か!」
ルベルトスも詠唱も何もしないで、光の剣を生み出していた。
それと同じだ。
「なーんじゃ。あっさり気づきおったな。じゃが、気付いたからといって、どうすることも出来まい」
さらに吹雪が強くなる。《結界》にさらに魔力を込める。
つまりは、この老人は氷魔法のユニーク魔法の使い手だということだ。
どうすることも出来ないことなどない。分かっているといないとでは大違いだ。
『タイキ、ボクの力使って』
(ああ。そうさせてもらう)
魔剣デフェンシオのデビュー戦だ。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

隣国から有能なやつが次から次へと追放されてくるせいで気づいたらうちの国が大国になっていた件
さそり
ファンタジー
カーマ王国の王太子であるアルス・カーマインは父親である王が亡くなったため、大して興味のない玉座に就くことになる。
これまでと変わらず、ただ国が存続することだけを願うアルスだったが、なぜか周辺国から次々と有能な人材がやってきてしまう。
その結果、カーマ王国はアルスの意思に反して、大国への道を歩んでいくことになる。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

知らない異世界を生き抜く方法
明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。
なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。
そんな状況で生き抜く方法は?

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる