転生ヒロインと人魔大戦物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~

田尾風香

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第十三章 魔国への道

泰基VSフロストック①

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 泰基は目の前の魔族を見据えた。
 暁斗のことは、リィカに任せる。大丈夫だ。リィカなら……凪沙なら、きっと暁斗を助けてくれる。

 リィカの言うように、今は自分のことだけに集中するべきだ。暁斗を気にしすぎて、自分がやられてしまっては意味がない。

 剣を抜いて、地面の氷に突き刺す。
 魔力を流して爆発させるようにして氷を壊せば、両足の自由が戻った。

「ヒョッヒョッ、簡単に壊しおったな。まあ、一時的に動きを止められれば、それで十分ではあったが」
「詠唱もなしに魔法を使えるのは、なんでだ」
「さぁてのぉ。教える必要を感じないのぉ」
「そうか。だったら別にいい」

 泰基は切り捨てた。
 相手はおそらく魔法使い系だろう。であれば、接近戦で勝負を仕掛けるだけだ。

 だが、先ほど氷付けにされた足が強張っている。少し動かしてみる。問題なさそうだ。
 一歩踏み出そうとして……途端に凍えるような寒さを感じて、動きを止めた。

「なっ!?」

 結界の中が、一面銀世界になっている。
 さっきまでは何もなかったはずだ。だというのに、突然雪に覆われた。

「確かに、ワッシは剣士と戦いの相性は良いとは言えぬ。だが、寒さというのは、人の動きを鈍くするでの。これをワッシは『氷の世界アイス・ワールド』と呼んでおる」

 ガチガチと歯がぶつかりそうになるが、それを食いしばって考える。
 何も詠唱はなかった。だが、これはどう考えても魔法による現象だ。

 氷だ。
 最初から、この老人は氷を使っている。氷の塊、足を氷付けにする、そしてこの『氷の世界アイス・ワールド』とやら。
 氷は水魔法だ。であれば、この老人は水属性なのか。だが、どれも既存の魔法にはないものばかり。

 となれば、混成魔法か、と考えるが、混成魔法を完全な無詠唱で発動するのは無理だろう。あのジャダーカでさえ唱えていたのだ。
 ならば、一体これは……。

「来ぬなら、こちらから行くぞ」
「――!! 《結界バリア》!」

 吹き付けてきたのは、吹雪だ。
 慌てて防御する。

 相当の威力だ。
 だがそれはいい。問題は、これが何なのかということだ。

 確かに魔力は動いた。だから魔法である事に変わりはない。
 それを、詠唱も何もしないのは……。

「……そうか! ユニーク魔法か!」

 ルベルトスも詠唱も何もしないで、光の剣を生み出していた。
 それと同じだ。

「なーんじゃ。あっさり気づきおったな。じゃが、気付いたからといって、どうすることも出来まい」

 さらに吹雪が強くなる。《結界バリア》にさらに魔力を込める。

 つまりは、この老人は氷魔法のユニーク魔法の使い手だということだ。
 どうすることも出来ないことなどない。分かっているといないとでは大違いだ。

『タイキ、ボクの力使って』
(ああ。そうさせてもらう)

 魔剣デフェンシオのデビュー戦だ。

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