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第十二章 帝都ルベニア

他のメンバーの剣

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「父さん、どんな剣にしようって思ったの?」
「……さあな」
「えー、いいじゃん。教えてよ」
「わたしも知りたい」
「……そう言われてもな」

サムの家から出て、今リィカたちは皇城に戻ってきていた。

泰基の”魔石に願いを込める”作業が終了したら、サムに「邪魔だ」と追い出された。

ルードリックやルシア、ケイトリンまで同じように追い出していたのはどうかと思うが、彼らはすべてを悟った様子で、何も言わずに黙って帰途についたのだ。

「出来上がるまで、多分一週間くらいだ」

一応、サムはそれだけは教えてくれた。
それだけ言って、ピシャッとドアを閉められた。

皇城に戻り、その一週間をどうするかという話をする予定だったのだが、その前に暁斗が泰基に興味津々に質問した。

リィカも暁斗に乗っかったが、泰基は浮かない顔をしていた。

「別に、こんな剣と思ったわけじゃない。本当に、ただ言われたとおりに昔のことを思い返していただけだ。それで一体どんな願いが込められたのやら、聞きたいのは俺の方だ」

「えー? でもさ、何かあるじゃん。どんな事を考えてたの? どのアニメ? 小説? 漫画? オレの知ってるヤツ?」

どうして、昔のことと聞いて出てくる選択肢がその三つなのか。
けれど、何を考えていたかなど話すことなどできないから、どこか安心した。

「さあな」
「いいじゃん、教えてってばー。あ、分かった、ゲームだ!」

だから違うと内心でだけ言い返しつつ、相変わらずな暁斗にホッとする。その代わりに、何かを察したのか、リィカの表情は少し硬い。だから、少し笑いかけてやれば、リィカも笑ったのだった。

そのやり取りに気付いているのかいないのか、話はさらに続く。

「俺も興味があるな。どんな剣になるのか」
「アレクは俺の剣じゃなく、自分の剣の心配をした方がいいんじゃないか?」

アレクの剣が寿命だという話。
そして、ククノチの言っていた魔剣らしい存在が、さらに北の森にあるかもしれないという話。
その森には、行くと言うことで話は決まっている。

「そうだな。別に魔剣じゃなくていいんだから、予備の剣でも作ってもらったらいいんじゃねぇの?」

「あの人がアレクを見て、果たして”予備”で納得するかどうか、謎だぞ」

「そうか。絶対また魔剣がどうのと言い出すな」

バルと泰基のやり取りに、アレクは苦笑が零れ出る。
あの場でアレクはほとんど傍観に徹していただけだったが、サムの強いこだわりは感じられた。

サムに自分の手を見せたとき、どんな反応をするのか。
こいつは駄目だ、と思われてもショックだが、魔剣作りに固執されても面倒だ。

「予備の剣は、店売りの剣でも買っておくさ。……魔剣を、手に入れるまで保てばいい」

後半、アレクの表情が決意と緊張に満ちる。
思い詰めたような顔になるアレクに、リィカが手を伸ばした。

「アレクなら大丈夫だよ」
「……ああ、ありがとな」

自分の手に触れるリィカの手を、握り返す。
たったその一言で、本当に大丈夫だと思えるんだから、不思議だ。

「なんでしたら、僕の剣も持ちますか、アレク?」
「は? ああ、ユーリのもロングソードだったな」

すっかり忘れていたな、と思いながら、アレクは返す。
そして、二人の剣の話を思い出した。

あの時は、リィカの持つ剣をユーリにあげるという話をしていたが、そのリィカの剣が失われた。
であれば、ユーリの剣もどうするかを考えなくてはならない。

「リィカとユーリは、剣はどうするんだ? 一緒に武器屋を見てみるか?」

ここはルバドール帝国の帝都だ。
武器屋もきっと充実しているだろう。手に合う剣も見つかるはずだ。

「それなんですけどね。……リィカ、僕と一緒にサムさんに剣を作って下さいってお願いしてみません?」
「へ?」

唐突に話を振られて、リィカが素っ頓狂な声を上げた。

「ほら、リィカがジャダーカと戦うときに使ったエンチャント。あれをするのに、普通の剣よりも魔石で作られた剣の方が、絶対使いやすいと思うんですよ」

「あ、確かにそうかも。魔力も通しやすいしね」

リィカがジャダーカと戦った時に使った《風の付与ウインド・エンチャント》と《土の付与アース・エンチャント》。

風の付与ウインド・エンチャント》をムチのように伸ばして使ったり、《土の付与アース・エンチャント》を長く伸ばして使ったり。
炎でも水でも色々使えるし、もちろん光でも使える。

剣での戦いだけじゃない。普通の戦いの中でも、いくらでも使い道があるのだ。
魔法と組み合わせるかどうかはともかくとして、使いやすい剣を持っていた方がいい。

が、問題がある。

「わたしたちみたいな素人にも作ってくれるかな?」
「だから、一緒に頑張ってお願いしましょうよ」

ユーリには珍しい精神論だ。
つまりは、理屈では無理だと思っているんだろう。

サムのこだわりを見れば、自分たちなど手を一瞥して、そのまま無視されて終わりそうだ。

「……まあ、お願いしてみるだけなら」

望み薄だが、ちょっとした期待も込めて、リィカは頷いた。



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