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第十二章 帝都ルベニア

水の問題への方針

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夕食は、本来であれば皇太子ルードリックと供にする予定だったが、断った。
理由はリィカである。
毛布を掛けただけのリィカに、参加させられるはずもない。

非はルバドール帝国側にあるせいか、何も言ってくることはなかった。


※ ※ ※


「明日以降の予定はどうなるんだ?」

アレクの部屋で皆で夕飯を食べながら、話を切り出したのは泰基だった。
本来であれば、ルードリックとの食事の時にそう言った話も出たのだろうが、それがなくなってしまったので、まるで今後の予定が分からない。

「鍛冶士のところへは案内してもらうしかないだろうな。……自分たちで探そうと思えば探せるだろうが」

アレクが答える。

ルードリックの父親、元皇族の鍛冶士が、本当に聖地で紹介されたサムなのかどうかは、行って会ってみなければ分からない。しかし、泰基の剣の事があるから、そこは外したくない。

案内してもらえば早いだろうが、街の人たちに話を聞きながらでも探せるような気はする。

「水の問題はどうするの?」
「それは、明日のあいつらの態度次第だな」

暁斗の問いに、アレクは簡潔に答える。
リィカの応対についての処罰がどうなされるのか、それ次第では水の問題は無視して先に進むのもありだと、アレクは本気で考えている。

ずっと背中を向けていた暁斗は、リィカが毛布を被ってからは流石に正面を向いた。
だが、それでもできるだけリィカを見ないようにしている。

「……そっか」
「何かあるの、暁斗?」

アレクの答えに何かを考えるように言った暁斗に、リィカが問いかける。

リィカは、食事をするにあたって、何とかアレクの腕から解放してもらう事には成功した。だが、毛布が落ちないように押さえながらの食事なので、食べにくそうだ。

そのリィカに話しかけられて、暁斗の顔が赤くなる。

「う、ううん! な、なにってわけじゃ、なくて……!」

あくまでリィカの方を見ようとしない暁斗は、別に紳士というわけではなく、ただの奥手である。
毛布を被っているわけだし、そういう態度を取られるとリィカも恥ずかしい。

(――あ、そういえば)

ふと、ルバドールの国境でトラヴィスから水の問題について話を聞いたとき、思った事を思いだした。

「ねえ、七色に光るゾウだっけ? それ、暁斗の聖剣が知ってるってこと、ないかな? もしかして、バナスパティたちみたいに異界から召喚された存在じゃないかなって思ったの」

現在では、勇者を呼ぶための陣と言われている召喚の魔方陣。
それが、過去では色々な存在が異界から召喚されていた。それが、ユグドラシルであり、バナスパティだ。
他にも召喚されているという話だったから、その可能性はある。

リィカの言葉に一行が驚く中、暁斗が頷いた。

「……うん、そうみたい。聖剣は知ってる」
「そうなのか!?」

声を上げたのはアレクだが、皆も似たような気持ちだ。
暁斗は若干言いにくそうにしている。

「アレク。絶対ってわけじゃないけど、グラムは……聖剣は行きたいって言ってる。一応約束したことがあるからって。その、だから……」
「そういうことはもっと早く言え。だったら、行く方向で話を持っていくだけだ」
「なんか……色々あるし、言うの悪いかなぁって」

最初は、行く方向に話が進んでいたから、わざわざ言う必要もなかった。
けれど、ルバドールに着いてから色々あった。

暁斗は自分の発言がどれだけ周囲への影響が強いのか、理解しているつもりだ。
仲間内の今ならともかく、自分が「行く」と言えば、アレクたちが何をどう思おうと、行かざるを得なくなる。

「変な遠慮はするなよ、アキト。行くなら、せいぜい恩を売りつけてやればいいだけだ」
「どうやって?」

悪気のない暁斗の質問にアレクはウッと言葉に詰まる。
目を泳がせて、言葉を絞り出した。

「ま、まあ話の流れ次第だな。それ次第でどうやるかも変わってくる」
(それってつまり、出たとこ勝負ってことじゃん)

そう思いはしても、懸命に口を噤んだ暁斗だが、その気遣いはまったく意味を成さなかった。

「つまり、成り行き任せってことですね」
「行き当たりばったりじゃねぇの?」
「いいだろうが! 余計な事言うな!」

ユーリとバルに茶々を入れられ、アレクは叫んだのだった。


※ ※ ※


そして、何事もなく夜。
各々が与えられた部屋へ戻っていくも、アレクの部屋にはリィカだけが残った。

「こんな格好じゃ部屋に帰れないし……いろんな人に姿見られたから、一人で部屋にいるの、怖い」

リィカを「こんな格好」のままにさせた張本人であるアレクは、何も言えない。

「だから、アレク。――この部屋に、泊めて下さい」

リィカのお願いに、アレクはすぐ言葉が出てこなかった。


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