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第十二章 帝都ルベニア
鏡ができた後
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「………………………」
出来上がった鏡を、ルードリックは呆然と見つめた。
決して疑っていたわけではない。
だがやはり目の前で見せられると、驚愕だった。
そもそも、凸凹した形の魔石が、綺麗な長方形になった所から驚いた。
その長方形が水でタプタプし出したと思ったら、気付けば水が固まっていた。
「――うん、できた」
極めつけは、その鏡を両手で高く上げた、満足そうな少女の笑顔だったかもしれない。
(確かにこれは、ルビーの好みど真ん中だな)
トラヴィスから渡された、リヒトーフェン公爵の手紙の内容を思い出す。
ルビーと呼ばれることを、ルベルトス本人は「女みたいで嫌だ」と嫌っているが、本人がいない所ではそう呼んでいる。
ルベルトスの気持ちまでしっかり書かれた手紙を読んだときは、またかとしか思わなかったが、実際に会ってみれば頷けてしまったのだった。
※ ※ ※
「皇太子ルードリックの妹、ルシアと申します。この皇城にいる間、皆様方のお世話をさせて頂きます。お見知りおき下さいませ」
会議室を出たリィカたちは、一人の女性と顔を合わせた。
皇女ルシアだった。
ルシアに、各人に用意された部屋に案内される。
その後、ルシアからの提案に一同驚いた。
「皆様方、まずはご入浴などいかがでしょうか」
砂漠地帯で水がないと言っているのに、入浴ができるのか。
だが、その驚きを分かっていたかのように、ルシアが説明してくれた。
過去、アルカトル王国へ行った皇族の一人が、入浴設備に感動して職人を呼び寄せて作った。
水の供給は魔石からなされるから、雨が降る降らないに関係なく、入浴はできるらしい。
「今以上に水不足になれば、その水も飲み水に回されるでしょうが、現状は問題ございません」
それで、遠慮なく入浴させてもらう事にした。
※ ※ ※
「ふーっ」
入浴を済ませると、アレクは大きく息を吐いて勢いよくソファに腰掛ける。
「行儀悪いですよ」
「いいだろう、別に。大体なぜ皆ここにいるんだ?」
アレクが与えられた部屋であるはずだが、そこにはリィカ以外の全員がいた。
それぞれが一部屋ずつ与えられたはずなのにだ。
「今後のことを話し合った方がいいと思ってな」
泰基に申し訳なさそうに言われれば、アレクもそれ以上反論できない。
先ほどの会議は、リィカが鏡を作った時点で終了した。
場が騒然となって収まりがつかなくなってしまったからだ。
「――その、良かったら、こちらも差し上げます」
リィカが作ったばかりの鏡を差し出しながら、いともあっさりそう言い放った事も、騒然となった原因の一つだろう。
暁斗と泰基がそれに同意したので、献上した鏡の数は四枚になった。
そのため、水の問題についてなど、途中で終わってしまった話もある。また話があるだろうから、その前に仲間内だけで話をしておいたほうがいいだろう。
「……後はリィカだけか」
「女性ですからね。入浴には時間がかかるでしょう。ゆっくり待ちましょう」
「そうだな」
ユーリの言葉にアレクは頷き、何となく皆の姿を眺める。
自分も含め、用意された衣装に着替えている。ゆったりした服で体にピッタリしない服は、何となく収まりが悪いが、生地はとても良い物を使っているのが分かる。
皆がこうした服を着ているので、これがルバドールの衣装なのだろうと思えば、受け入れるしかない。
リィカは果たしてどんな服を着てくるんだろうか。
聖地でデートしたときのリィカの姿を思い浮かべながら、アレクは顔がニヤけたのだった。
出来上がった鏡を、ルードリックは呆然と見つめた。
決して疑っていたわけではない。
だがやはり目の前で見せられると、驚愕だった。
そもそも、凸凹した形の魔石が、綺麗な長方形になった所から驚いた。
その長方形が水でタプタプし出したと思ったら、気付けば水が固まっていた。
「――うん、できた」
極めつけは、その鏡を両手で高く上げた、満足そうな少女の笑顔だったかもしれない。
(確かにこれは、ルビーの好みど真ん中だな)
トラヴィスから渡された、リヒトーフェン公爵の手紙の内容を思い出す。
ルビーと呼ばれることを、ルベルトス本人は「女みたいで嫌だ」と嫌っているが、本人がいない所ではそう呼んでいる。
ルベルトスの気持ちまでしっかり書かれた手紙を読んだときは、またかとしか思わなかったが、実際に会ってみれば頷けてしまったのだった。
※ ※ ※
「皇太子ルードリックの妹、ルシアと申します。この皇城にいる間、皆様方のお世話をさせて頂きます。お見知りおき下さいませ」
会議室を出たリィカたちは、一人の女性と顔を合わせた。
皇女ルシアだった。
ルシアに、各人に用意された部屋に案内される。
その後、ルシアからの提案に一同驚いた。
「皆様方、まずはご入浴などいかがでしょうか」
砂漠地帯で水がないと言っているのに、入浴ができるのか。
だが、その驚きを分かっていたかのように、ルシアが説明してくれた。
過去、アルカトル王国へ行った皇族の一人が、入浴設備に感動して職人を呼び寄せて作った。
水の供給は魔石からなされるから、雨が降る降らないに関係なく、入浴はできるらしい。
「今以上に水不足になれば、その水も飲み水に回されるでしょうが、現状は問題ございません」
それで、遠慮なく入浴させてもらう事にした。
※ ※ ※
「ふーっ」
入浴を済ませると、アレクは大きく息を吐いて勢いよくソファに腰掛ける。
「行儀悪いですよ」
「いいだろう、別に。大体なぜ皆ここにいるんだ?」
アレクが与えられた部屋であるはずだが、そこにはリィカ以外の全員がいた。
それぞれが一部屋ずつ与えられたはずなのにだ。
「今後のことを話し合った方がいいと思ってな」
泰基に申し訳なさそうに言われれば、アレクもそれ以上反論できない。
先ほどの会議は、リィカが鏡を作った時点で終了した。
場が騒然となって収まりがつかなくなってしまったからだ。
「――その、良かったら、こちらも差し上げます」
リィカが作ったばかりの鏡を差し出しながら、いともあっさりそう言い放った事も、騒然となった原因の一つだろう。
暁斗と泰基がそれに同意したので、献上した鏡の数は四枚になった。
そのため、水の問題についてなど、途中で終わってしまった話もある。また話があるだろうから、その前に仲間内だけで話をしておいたほうがいいだろう。
「……後はリィカだけか」
「女性ですからね。入浴には時間がかかるでしょう。ゆっくり待ちましょう」
「そうだな」
ユーリの言葉にアレクは頷き、何となく皆の姿を眺める。
自分も含め、用意された衣装に着替えている。ゆったりした服で体にピッタリしない服は、何となく収まりが悪いが、生地はとても良い物を使っているのが分かる。
皆がこうした服を着ているので、これがルバドールの衣装なのだろうと思えば、受け入れるしかない。
リィカは果たしてどんな服を着てくるんだろうか。
聖地でデートしたときのリィカの姿を思い浮かべながら、アレクは顔がニヤけたのだった。
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