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第十二章 帝都ルベニア
帝都ルベニア到着
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「まず、皆様方を皇城へご案内させて頂きます」
トラヴィスの発言に、リィカが背筋をピンと伸ばす。
必死に虚勢をはっているが、顔が強張っている。
皇族への献上品とするはずだった鏡だが、少しだけ方向性が変わった。
献上は献上でも、皇家ではなく、帝国への献上にさせて頂けないか、と話があったのだ。
「それって、何か違うんですか?」
リィカからすれば、相手が皇族だろうと国だろうと、何も変わらない。
むしろ、何でわざわざ話をする必要があるのかが分からなかった。
「皇家への献上という形をとれば、それを使えるのは皇族だけです。ですが、帝国への献上という形であれば、帝国側が自由にその使い道を決められます」
つまりは、皇家に献上という形にしてしまうと、バシリスク対策として鏡を使えなくなってしまう、ということだ。
「……どっちでも好きに使っていいと思いますけど」
「そういうわけにいかないのが、国とか王族とか貴族の面倒な所だな」
アレクが苦笑しながら、口を出す。
リィカの言いたいことは理解できるし、アレク自身も正直言えば賛同できるのだが、国とか王侯貴族というのは面倒な決まり事が多いのだ。
今回の件だと、勇者一行が皇家へと献上した品を、壊れるかもしれない魔物との戦いに使用したなんて事になれば、相当な非難を受けることになる。
「献上した側がお好きにどうぞって言えば、済む話?」
「残念ながら、済まない話だ」
「……そうなんだ」
うわぁ面倒くさい、という感想は飲み込んだ。
だが、それが分かったようにアレクは苦笑する。
「気にするな。ルバドール側には大きな違いだが、俺たち側からしたら、ほとんど何も変わらない。献上する相手の名前を皇帝や皇太子ではなく、ルバドール帝国とする程度だ」
その辺りはアレクがやってくれるらしい。
それでも、作成したリィカが全く話をしないわけにはいかない。
一応、人となりを聞きはしたが、だからといって緊張がなくなるわけではない。
バクバクする心臓をなだめようと、必死に深呼吸するものの、効果らしい効果は見られなかった。
※ ※ ※
皇城に到着して、トラヴィスが要件を伝える。
ルベニア到着時にすでに身分は明かしていたから、連絡は来ていたのだろう。バタバタすることもなく、すんなりと皇城へと招き入れられた。
リィカたちは広く立派な一室に通され、そこでしばし過ごすように言われたのだった。
そして、勇者一行と別れたトラヴィスは、皇太子ルードリックと面会していた。
「そうか。防衛線は保ちそうか」
皇太子ルードリックが、安心したように息を吐き出した。
その安堵は防衛線だけではなく、弟であるルベルトスが無事である事への安堵もあっただろう。
「はっ、皇太子殿下。四天王ジャダーカと名乗った男。倒すことこそ叶いませんでしたが、勇者様のご一行のお一人であるリィカ嬢の活躍により、かなりの傷を負って下がっております。前線に出てくることは、まずございません」
「そうか。――で、それが、そのリィカ嬢が作った鏡か」
何とも複雑な顔をして、ルードリックはトラヴィスの持つ鏡を見る。
もちろん、謁見してその場で献上する予定のものなのだが、何せ物が物である。
皇太子に一度見せて、根回ししておく必要を感じたのだ。
「はい。勇者様親子のご提案通りにバシリスクを相手に試してみたところ、確かに石化攻撃に対して絶大な効果がございました。厄介なバシリスクへの対策として、これ以上のものは現状ございません」
「……そうだな。確かにそうだろうが……本当にその娘が、鏡を作ったと?」
ルードリックの疑念は最もだろう。
トラヴィスとて、実際に見ていなければまず間違いなく疑った。
それを理解した上で、しっかり頷いた。
「はい、間違いございません。彼女は、魔法の腕も魔道具を作る腕も、とても素晴らしい魔法使いです」
「なるほど。そうか、分かった」
ルードリックは頷くと立ち上がった。
「勇者様のご一行とお会いする。謁見の間にご案内を」
「はっ」
ルードリックの言葉に、周囲が慌ただしく動き始めたのだった。
トラヴィスの発言に、リィカが背筋をピンと伸ばす。
必死に虚勢をはっているが、顔が強張っている。
皇族への献上品とするはずだった鏡だが、少しだけ方向性が変わった。
献上は献上でも、皇家ではなく、帝国への献上にさせて頂けないか、と話があったのだ。
「それって、何か違うんですか?」
リィカからすれば、相手が皇族だろうと国だろうと、何も変わらない。
むしろ、何でわざわざ話をする必要があるのかが分からなかった。
「皇家への献上という形をとれば、それを使えるのは皇族だけです。ですが、帝国への献上という形であれば、帝国側が自由にその使い道を決められます」
つまりは、皇家に献上という形にしてしまうと、バシリスク対策として鏡を使えなくなってしまう、ということだ。
「……どっちでも好きに使っていいと思いますけど」
「そういうわけにいかないのが、国とか王族とか貴族の面倒な所だな」
アレクが苦笑しながら、口を出す。
リィカの言いたいことは理解できるし、アレク自身も正直言えば賛同できるのだが、国とか王侯貴族というのは面倒な決まり事が多いのだ。
今回の件だと、勇者一行が皇家へと献上した品を、壊れるかもしれない魔物との戦いに使用したなんて事になれば、相当な非難を受けることになる。
「献上した側がお好きにどうぞって言えば、済む話?」
「残念ながら、済まない話だ」
「……そうなんだ」
うわぁ面倒くさい、という感想は飲み込んだ。
だが、それが分かったようにアレクは苦笑する。
「気にするな。ルバドール側には大きな違いだが、俺たち側からしたら、ほとんど何も変わらない。献上する相手の名前を皇帝や皇太子ではなく、ルバドール帝国とする程度だ」
その辺りはアレクがやってくれるらしい。
それでも、作成したリィカが全く話をしないわけにはいかない。
一応、人となりを聞きはしたが、だからといって緊張がなくなるわけではない。
バクバクする心臓をなだめようと、必死に深呼吸するものの、効果らしい効果は見られなかった。
※ ※ ※
皇城に到着して、トラヴィスが要件を伝える。
ルベニア到着時にすでに身分は明かしていたから、連絡は来ていたのだろう。バタバタすることもなく、すんなりと皇城へと招き入れられた。
リィカたちは広く立派な一室に通され、そこでしばし過ごすように言われたのだった。
そして、勇者一行と別れたトラヴィスは、皇太子ルードリックと面会していた。
「そうか。防衛線は保ちそうか」
皇太子ルードリックが、安心したように息を吐き出した。
その安堵は防衛線だけではなく、弟であるルベルトスが無事である事への安堵もあっただろう。
「はっ、皇太子殿下。四天王ジャダーカと名乗った男。倒すことこそ叶いませんでしたが、勇者様のご一行のお一人であるリィカ嬢の活躍により、かなりの傷を負って下がっております。前線に出てくることは、まずございません」
「そうか。――で、それが、そのリィカ嬢が作った鏡か」
何とも複雑な顔をして、ルードリックはトラヴィスの持つ鏡を見る。
もちろん、謁見してその場で献上する予定のものなのだが、何せ物が物である。
皇太子に一度見せて、根回ししておく必要を感じたのだ。
「はい。勇者様親子のご提案通りにバシリスクを相手に試してみたところ、確かに石化攻撃に対して絶大な効果がございました。厄介なバシリスクへの対策として、これ以上のものは現状ございません」
「……そうだな。確かにそうだろうが……本当にその娘が、鏡を作ったと?」
ルードリックの疑念は最もだろう。
トラヴィスとて、実際に見ていなければまず間違いなく疑った。
それを理解した上で、しっかり頷いた。
「はい、間違いございません。彼女は、魔法の腕も魔道具を作る腕も、とても素晴らしい魔法使いです」
「なるほど。そうか、分かった」
ルードリックは頷くと立ち上がった。
「勇者様のご一行とお会いする。謁見の間にご案内を」
「はっ」
ルードリックの言葉に、周囲が慌ただしく動き始めたのだった。
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