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第十一章 四天王ジャダーカ
魔国にて④
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「戻ったぞ、カストル。魔道具の作り方を教えろ」
「……お待ち下さい、ジャダーカ様。魔王様へのご挨拶、及びリィカを倒せなかった事への謝罪をするのが先です」
魔国に戻るなり、自分の要望を真っ先に口にしたジャダーカに、クナムは頭を抱えた。
魔王は気にしないかもしれないが、だからこそ通すべき筋は通さなければならない。
そんな二人を見て、カストルは苦笑する。
「ジャダーカ、魔王様がお待ちだ。話はその後だ、いいな」
「……めんどくせぇな。分かったよ」
渋々頷くジャダーカに、カストルは思う。
もしここが、日本のファンタジーにあるような悪の組織であったなら、敵を倒すことができずに戻ってくる羽目になったジャダーカは、こんな態度は取れないだろうな、と。
※ ※ ※
「戻ったか、ジャダーカ」
「おう。……一応、謝っとく。倒せなかった。何もできずに帰ってきた。悪かった」
魔王の第一声に、ジャダーカはそれでも謝罪の言葉を口にする。
それに、魔王は少し口の端を上げる。
「倒せなかったじゃなく、倒さなかったの間違いじゃないのか?」
「勘弁してくれ。そりゃまあ、最初っから魔法の打ち合いを楽しまずに、全力で攻撃してりゃ倒せたかもしれないが、それじゃあ面白くない」
魔王の揶揄する口調に、ジャダーカは困った口調ながらも、否定しない。
さらに持論を重ねる。
「それに倒してたら、俺は混成魔法以外の魔法の可能性なんか考えもしなかった。すげぇよ、リィカは。《天変地異》もあっさり使っちゃったんだぜ?」
「お前らしいな、ジャダーカ」
興奮して言い募るジャダーカに、魔王は苦笑した。そして、カストルに視線を向ける。
カストルは頷いて、ジャダーカの希望に添う言葉を口にした。
「ジャダーカ、オルフが魔道具作成の指導をする。好きなだけ教えを請え」
「お、話が早いな。助かるぜ。んじゃあ行ってくる」
「あっ! ジャダーカ様!」
さっさと出て行ったジャダーカに、クナムが慌てて追いかける。
慌てながらも、魔王とカストルに一礼するのを忘れないあたりは流石だ。
バタバタ出て行くのを見送ると、部屋には魔王とカストルの二人きりになる。
「ホルクス、あれで良かったのか?」
「うん」
主語のないカストルの問いに、魔王は迷いなく頷いた。
「どんな形にしろ、ジャダーカは人間と仲良くなったんだ。再会の約束までしてた。だったら、それをいつか果たしてほしい」
魔王はどこか嬉しそうな表情だが、カストルの心中は複雑だった。
「再会したところで、失恋の結果は変わらないだろうがな」
「兄者、それは言っちゃダメだって」
兄弟二人、顔を見合わせて笑う。
幼なじみの初恋が叶って欲しい気持ちはあったのだが、おそらくそれは無理だという事は分かった。
ジャダーカの前では言わないようにしよう、と決めていたのだが、いなくなれば口から突いて出る。
「ジャダーカも、当分魔道具作りか」
「ダランも、娘の話を伝えたらやり始めたからな。だが、魔力付与さえできるようになれば良いわけだからな……」
カストルは腕を組んで考える。
魔道具そのものを仕上げる必要性はまったくないのだ。それは慣れた者がやっている。
魔力量が多すぎると細かい魔力操作ができず、それでジャダーカは断念したようなものだ。
ダランは何度やってもコツを掴めずに、結局諦めた。
果たして、彼らが魔力付与をできるようになるのか。
「……まあ、しばらくは様子を見るか」
それで魔力操作が上手くいくようになって、魔法の腕も上がるなら文句はない。
急ぐことはないだろう。
勇者一行が魔国へ到着するには、まだ猶予がある。
戦力が強化されるなら、それに越したことはない。
ーーーーーーーー
以上で十一章が終わります。
「……お待ち下さい、ジャダーカ様。魔王様へのご挨拶、及びリィカを倒せなかった事への謝罪をするのが先です」
魔国に戻るなり、自分の要望を真っ先に口にしたジャダーカに、クナムは頭を抱えた。
魔王は気にしないかもしれないが、だからこそ通すべき筋は通さなければならない。
そんな二人を見て、カストルは苦笑する。
「ジャダーカ、魔王様がお待ちだ。話はその後だ、いいな」
「……めんどくせぇな。分かったよ」
渋々頷くジャダーカに、カストルは思う。
もしここが、日本のファンタジーにあるような悪の組織であったなら、敵を倒すことができずに戻ってくる羽目になったジャダーカは、こんな態度は取れないだろうな、と。
※ ※ ※
「戻ったか、ジャダーカ」
「おう。……一応、謝っとく。倒せなかった。何もできずに帰ってきた。悪かった」
魔王の第一声に、ジャダーカはそれでも謝罪の言葉を口にする。
それに、魔王は少し口の端を上げる。
「倒せなかったじゃなく、倒さなかったの間違いじゃないのか?」
「勘弁してくれ。そりゃまあ、最初っから魔法の打ち合いを楽しまずに、全力で攻撃してりゃ倒せたかもしれないが、それじゃあ面白くない」
魔王の揶揄する口調に、ジャダーカは困った口調ながらも、否定しない。
さらに持論を重ねる。
「それに倒してたら、俺は混成魔法以外の魔法の可能性なんか考えもしなかった。すげぇよ、リィカは。《天変地異》もあっさり使っちゃったんだぜ?」
「お前らしいな、ジャダーカ」
興奮して言い募るジャダーカに、魔王は苦笑した。そして、カストルに視線を向ける。
カストルは頷いて、ジャダーカの希望に添う言葉を口にした。
「ジャダーカ、オルフが魔道具作成の指導をする。好きなだけ教えを請え」
「お、話が早いな。助かるぜ。んじゃあ行ってくる」
「あっ! ジャダーカ様!」
さっさと出て行ったジャダーカに、クナムが慌てて追いかける。
慌てながらも、魔王とカストルに一礼するのを忘れないあたりは流石だ。
バタバタ出て行くのを見送ると、部屋には魔王とカストルの二人きりになる。
「ホルクス、あれで良かったのか?」
「うん」
主語のないカストルの問いに、魔王は迷いなく頷いた。
「どんな形にしろ、ジャダーカは人間と仲良くなったんだ。再会の約束までしてた。だったら、それをいつか果たしてほしい」
魔王はどこか嬉しそうな表情だが、カストルの心中は複雑だった。
「再会したところで、失恋の結果は変わらないだろうがな」
「兄者、それは言っちゃダメだって」
兄弟二人、顔を見合わせて笑う。
幼なじみの初恋が叶って欲しい気持ちはあったのだが、おそらくそれは無理だという事は分かった。
ジャダーカの前では言わないようにしよう、と決めていたのだが、いなくなれば口から突いて出る。
「ジャダーカも、当分魔道具作りか」
「ダランも、娘の話を伝えたらやり始めたからな。だが、魔力付与さえできるようになれば良いわけだからな……」
カストルは腕を組んで考える。
魔道具そのものを仕上げる必要性はまったくないのだ。それは慣れた者がやっている。
魔力量が多すぎると細かい魔力操作ができず、それでジャダーカは断念したようなものだ。
ダランは何度やってもコツを掴めずに、結局諦めた。
果たして、彼らが魔力付与をできるようになるのか。
「……まあ、しばらくは様子を見るか」
それで魔力操作が上手くいくようになって、魔法の腕も上がるなら文句はない。
急ぐことはないだろう。
勇者一行が魔国へ到着するには、まだ猶予がある。
戦力が強化されるなら、それに越したことはない。
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以上で十一章が終わります。
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