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第十一章 四天王ジャダーカ

魔石で作られた剣

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「父に弟弟子などいたのか」
「ルバンザム殿下が鍛冶士としてどこでどう修行してきたのかは、全くの不明ですからね」

勇者一行の説明を受けたルベルトスが、驚いたように言った。
リヒトーフェンも、それに追随する。

主に説明を担った泰基は、困惑した顔だ。

「名前がサムというだけで、本当にその殿下のことかは分かりませんが……」
「ですが、帝都にいるサムという鍛冶士で腕がいい、となれば、思い浮かぶのはルバンザム殿下だけです」

リヒトーフェンは言い切った。
それに、さらに泰基は戸惑う。
元皇族の鍛冶士など本当に信用できるのか、と言ってしまえば、それは偏見なのだろうが……。

「魔剣を求めているわけではないのですが」

一番はそこかもしれない。
泰基は普通の剣が手に入れられれば、それでいいのだ。

「その辺りは父次第ですが、普通の剣を打っても、父の腕はいいです。魔剣作成に色々金がかかるから、金策のために普通の剣も作っています。主な買い取り先は皇宮ですが」

「相手が殿下だ、という事もなくもないですが、剣の質はいいですから。ルバンザム殿下が作った剣を与えられた兵士は、喜んでいます」

「そうですか」

ルベルトス、リヒトーフェンに保証されれば、泰基も納得するしかない。
正直言えば、他にいるんじゃないのか、という考えも抜けていないが、後はもう会ってから確認するしかないだろう。

「ルベルトス殿の剣は特別だというが、普通の剣とは違うのか?」

今度はアレクが質問した。
どんな剣を作るのか見たい。
泰基のためでもあるが、純粋にどう特別なのか、アレク自身の興味でもある。

「ああ、そうだな。ここで剣を抜かせて頂くことになるが、ご覧になるか?」

人の集まっている場で剣を抜く事になるからか、ルベルトスが確認を入れる。
それにアレクが頷くと、ルベルトスは持っていた剣を抜いて、テーブル上に置いた。

「魔力を込めすぎると壊れてしまうのだ。だから、父はオレの剣に関しては、質より量を優先してくれている。いずれは、オレが全力を出しても壊れない剣を作ってくれる、と言ってくれているが」

ヒドラとの戦いで、壊してしまった。
だから、予備として持ってきていた剣を持っているのだ。

「普通の剣だな……?」

アレクが、疑問形でつぶやいた。
テーブルの上に置かれた剣は、何か特別なようには見えない。どこにでもある剣だ。
あえて言うなら、普通の剣についている魔石が、この剣には付いていない。

「……違う。これ、剣の部分、魔石じゃない?」
「分かるのか!」

リィカのつぶやきに、ルベルトスが大きく反応した。
身を乗り出されて、リィカの腰が引けている。

「魔石?」
「そうだ。どうやっているのかは不明なのだが、オレの使う剣の刀身は、魔石でできている。とても使いやすくてな、気に入っている」

アレクの反問に、ルベルトスが答えた。

魔石は加工できない。
切れないし、叩いても壊れない。火の中に落としてみても、解けることもない。

その魔石をどう刀身に加工しているのかルベルトスも知らないが、そういうものだと納得することにしている。
使いやすいのだから、それでいい。

「………………………」

そう語るルベルトスに、リィカとユーリ、泰基がコソッと目配せをする。
魔石を加工したければ、魔力を付与するしかない。

話を聞いただけなら信じられなかったかもしれないが、実際に目の前に成功品がある。

「Cランクかな」

リィカが、その魔石の強さを推し量る。

Cランクの魔石と言えば、自分たちに魔道具作成を教えてくれたサルマたちも、まだ扱えないと言っていた魔石だ。
それを、その元皇族は、扱っているということだ。

「そんなことまで分かるのか!」
「え、はい、その、何となくですが……」

またもルベルトスが身を乗り出して、リィカは怯みながらも返答する。

「いや、素晴らしい! どうだろう、もし良かったら、オレと一緒に来て、いずれはオレの妃に……いでぇっ!!」

「殿下! ああもう、油断しました」

「分かった! バジェット、分かったから手を離せ! つねられると、地味に痛いんだぞ!」

「……こっちは渾身の力でつねっているのに、地味にしか痛くないのですね」

「だから、力を入れるんじゃない! 痛い! 痛いから!!」

ルベルトスとバジェットの主従のやり取りを見ながら、リィカは首を傾げていた。

「きさき……?」

きさきとは何だろうか。
奇跡の間違い? それとも、切っ先? 
どちらも「オレのきさきに……」のくだりには合わない。

「リィカ、考えるな。今すぐ忘れろ」
「え、でも」
「忘れろ。いいな」

アレクの低い声に、戸惑う。
相手は皇子だ。いいのかなぁ、と思うが、アレクも王子様だから、いいのだろうか。

首を傾げるリィカの他に、もう一人、内心で首を傾げている者がいた。

(きさき……ってなんだっけ?)

ピンときてない勇者様だった。


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