上 下
382 / 629
第十一章 四天王ジャダーカ

ヒドラとの戦い

しおりを挟む
「「《火の付与フレイム・エンチャント》!」」

ヒドラを前に、アレクと暁斗は同時にエンチャントを唱える。
その様子を見て、ルベルトスは不思議そうにしていた。

「あの、一体何を……」
「ヒドラと同じく、再生する首を持つ魔物と戦ったことがあったんですよ。その魔物は、切ったあとに火で焼くと、首が再生しなかったんです」

ルベルトスの疑問に答えたのは、泰基だった。
相手が皇子だからか、泰基の言葉も心持ち丁寧だ。

「まさか、そんなことが……!」

驚くルベルトスに、泰基は苦笑する。

「ヒドラが同じかどうか分かるのは、これからですけねど」

言って、ヒドラを注視する。
ユグドラシルの島で戦ったキリムと同じく、火しか効果がないなら、自分のできることは、相手を牽制するだけだ。

味方の動きと敵の動き。
それらをしっかり見定める必要があった。


※ ※ ※


アレクは、暁斗と同時にヒドラに斬りかかる。
すると、ヒドラが、何かに怯んだように、僅かに後退する様子を見せた。

(――行ける!)

後退しようとするのを許さず、さらに踏み込む。

ザンッ、と剣を振るう。
斬ったところが、燃え上がる。

「ギィヤアアアアァァァァァァァァァ!!」

ヒドラが叫んだ。
先ほど後退しかけていたのが、長く首を伸ばし、威嚇しているようだ。
その声は怒りに彩られていた。

「再生、しないね」
「ああ」

様子を見ていた暁斗の言葉にアレクは一言返事をして、またヒドラに斬りかかる。
その後を暁斗も続いた。


アレクが一本の首に狙いを定めて、斬りかかる。
その横から、違う首がアレクに大きく口を開けて向かってきた。

「《輪光リング・ライト》!」

唱えられた魔法が横から来た首に命中し、そのできた隙に、アレクは狙い違わず切り落とす。

「ユーリ、助かった!」
「フォローは任せて!」

その答えを聞いて、アレクはまた別の首に狙いを定める。
そう、任せて大丈夫だ。
他は、後衛がたたき落としてくれるから。


※ ※ ※


八本の首を落とすのに、そんなに時間は掛からなかった。
キリムとは違って、自ら焼けた首を噛みちぎって、焼けた面をなくして再生させる、という手を使ってこなかったのもある。

残ったのは、本体と、他の首より一回り大きい首のみ。

「止めを!」
「感謝する!」

アレクの叫びに、ルベルトスも叫んで返す。
ルベルトスの右手に、光の剣が現れた。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

気合いを入れて叫ぶと、その光の剣が長く伸びる。

ヒドラの巨体をその一太刀で断ち切れるほどにまで長くなると、ルベルトスはヒドラに向かって駆け出した。
剣の重さを感じている様子は、まるでない。

「ギィヤアアアアァァァァァァァァァ!!」

ヒドラが叫び、残った首が炎を吐く。
ルドルトスは、それをジャンプして躱した。

「くらえっ!!」

そのまま剣を振り下ろす。

「ギィヤッ!!」

ヒドラがその口の牙で、剣を受け止めた。
だが、一瞬だった。

「ギィッ!?」

光の剣は、その牙すら切り裂く。

――ザンッ!

まさに音を立てて、ヒドラを切り裂いたのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

Sランク冒険者の受付嬢

おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。 だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。 そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。 「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」 その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。 これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。 ※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。 ※前のやつの改訂版です ※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。

追放された陰陽師は、漂着した異世界のような地でのんびり暮らすつもりが最強の大魔術師へと成り上がる

うみ
ファンタジー
 友人のサムライと共に妖魔討伐で名を馳せた陰陽師「榊晴斗」は、魔王ノブ・ナガの誕生を目の当たりにする。  奥義を使っても倒せぬ魔王へ、彼は最後の手段である禁忌を使いこれを滅した。  しかし、禁忌を犯した彼は追放されることになり、大海原へ放り出される。  当ても無く彷徨い辿り着いた先は、見たことの無いものばかりでまるで異世界とも言える村だった。  MP、魔術、モンスターを初め食事から家の作りまで何から何まで違うことに戸惑う彼であったが、村の子供リュートを魔物デュラハンの手から救ったことで次第に村へ溶け込んでいくことに。  村へ襲い掛かる災禍を払っているうちに、いつしか彼は国一番のスレイヤー「大魔術師ハルト」と呼ばれるようになっていった。  次第に明らかになっていく魔王の影に、彼は仲間たちと共にこれを滅しようと動く。 ※カクヨムでも連載しています。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

大精霊の導き

たかまちゆう
ファンタジー
冒険者ルークは、突出した能力を何も持っていなかった。 そんな彼は、聖女と呼ばれ崇められている冒険者と出会い、自身の隠れた才能を見出される。 そして、ルークは世界最強の力を手に入れた。 この世界では、強い力を持っている者に、それ相応の社会貢献が求められる。 しかし、力の制御に不安のあるルークには、その力とは釣り合わない依頼が与えられた。 さらに、成り行きでパーティーを組んだ女性達は、能力や性格に難のある者ばかりだった。 この力を手に入れたのが自分で、本当に良かったのか? そんな疑問を抱えながらも、ルークは成功を積み重ね、やがて多くの人々から尊敬される冒険者になっていく……。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

処理中です...