転生ヒロインと人魔大戦物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~

田尾風香

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第十一章 四天王ジャダーカ

魔法の可能性

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「行くよ、ジャダーカ」

言って、リィカは自らの周囲を周回している凝縮魔法四発を、一直線にジャダーカに向けて発射した。

「《防御シールド》」

対するジャダーカが唱えたのは、シンプルな防御魔法だ。
アレクと戦ったときの《防御シールド》よりも強固になっているように、リィカには見えた。

それでも動揺することはない。
一発ずつ、寸分違わず同じ場所に、魔法を《防御シールド》にぶつける。

三発目でヒビが入った。
最後の四発目で、《防御シールド》を破壊する。

それを見て、再びリィカは四つの凝縮魔法を発動させる。

「いけっ!」

がら空きのジャダーカへ、魔法を放つ。
だが、ジャダーカは慌てる様子を見せなかった。

「《絶対零度アブソリュート・ゼロ》」

アレクに対して使った魔法を、再び発動させる。

凝縮魔法が凍らされ、霧散する。
同時に、ジャダーカの魔法も消えてなくなった。

「《砂塵嵐ダスト・ストーム》」

間髪入れずジャダーカが唱えた魔法は、かつてユーリと戦ったアルテミが使った混成魔法。
風と土の混成魔法だ。

「………………っ……」

リィカは、つい同じ魔法を唱えたくなるのを、必死に堪える。
ジャダーカと同じ土俵に立ったところで、敵わないのはすでに分かりきっている事だ。

再び凝縮魔法を放つ。

「…………………!」

だが、小さな凝縮魔法は《砂塵嵐ダスト・ストーム》の渦に飲まれ、消えていく。
小さな爆発が見えたから、全く効果がないわけではなさそうだが、おそらく相性が悪いんだろう。

(――だったら、やったことはないけど)

リィカは剣を抜いた。

暁斗を刺した剣。
もう使えない、と思っていた剣なのに、当の暁斗に手渡された剣は、人を刺した痕跡など何もなく、綺麗になっていた。

教わりながら綺麗にしたんだ、と微妙に顔を赤くして、視線を逸らしながら言った暁斗は可愛かった。母親精神のままに抱き締めようかと思ったが、その前にアレクに邪魔されて、何もできなかったが。

「剣で何をする気だ?」
「こうするの」

揶揄してくるジャダーカに軽く返して、リィカは一瞬だけ目を瞑る。
この旅の中、散々見てきたのだ。
使えるはずだ。

「《風の付与ウインド・エンチャント》!」

魔法は魔法でも、これまで全く使おうとさえしなかった魔法、エンチャント。
それを、リィカは唱えた。

剣の周りに、風の渦ができる。
成功した。

さらに、リィカはエンチャントに魔力付与を施す。
そして、剣の切っ先を横薙ぎに斬り払った。

「いけっ!」

先ほどと同じかけ声が出る。

剣の切っ先から、風がムチのように伸びた。
それが《砂塵嵐ダスト・ストーム》とぶつかり、大きな爆発音が響く。

それでも《砂塵嵐ダスト・ストーム》は消滅しない。
けれど、それは《風の付与ウインド・エンチャント》も同じだ。

先ほどは左から右に払った剣を、今度は逆に払う。
再び風のムチが伸びて、爆発を起こす。

(これで、最後!)

上から下に切り下ろす。
そして起こった爆発で、《砂塵嵐ダスト・ストーム》は消滅した。

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