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第十章 カトリーズの悪夢
VSヒドラ②
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リィカは走り出した。
その走った方向を見て、ユーリも走り出す。
向かう先は、魔封陣の中央だ。
ヒドラが移動したから、今その中央は空いている。
「ギィヤァァァ! ギヤァァァァァッァァァァ!」
案の定、慌てた様子でヒドラがついてきた。
当然だろう。ヒドラはそこを守っていたのだ。自分が離れた隙に、攻撃されるわけにはいかないのだろう。
さすが、Aランクの魔物だと思う。
知能だって高い。
こちらが何をやろうとするのか、すぐに理解してくる。
どこが中央なのかはすぐに分かった。
魔力が、濃い部分がある。
間違いなく、そこが魔封陣の中央だ。
リィカが、ユーリが、そこに魔法を打ち込もうとするが、ヒドラが炎を吐いて、阻止された。
さらに、ヒドラがその巨体を割り込ませる。
攻撃を打ち込むべき中央部分は、ヒドラの体の下になった。
けれど、それでいい。
これで、ヒドラは容易にこの場所から動けなくなったはずだ。
「リィカ、何をするつもりですか?」
ユーリにもすぐに意図は分かったのだろう。
確かに、ヒドラが動かなければ、自分たちは遠距離からの攻撃ができる。炎の攻撃にさえ気をつけていれば、ダメージは受けない。
だが、同時にこちらの攻撃も通じないのだ。
最初に戻っただけだ。
リィカは気を引き締めた。
「一つ、思い付いたの。集中したいから、ヒドラに動かれると困る」
そして、思い付いた事を口にする。
「なるほど。試してみる価値は、ありそうですね」
ユーリは目を見張り、すぐにニッと笑った。
※ ※ ※
ヒドラは警戒した。
目の前の二体のニンゲン。
自分を従わせる、膨大な魔力を持ったマゾクに、この場所の死守を命じられた。
理由は知らない。興味もない。
ただ、守れと言われた場所の魔力が濃いから、何かあるのだろうとは分かった。
目の前に現れたニンゲンは、使う技は大したことないが、自分を倒せるだけの魔力を持っている。
放置できないと思って追い掛けた。
倒せると思ったのに、しぶとかった。
自分が守るべき場所に攻撃をしようとしてきたから、慌ててその場所に覆い被さった。
この場所から離れれば、ニンゲンが攻撃する。
それが分かった以上は、離れられない。
ニンゲンの使う技は、痛くもかゆくもない。この場所から動かなくても、どうにでもなる。
そう判断したのに、なぜか痛みが走った。
「ギィヤアァァァァァァァ!?」
次々に痛みが走る。
痛みが、段々と増してきて、悲鳴を上げた。
※ ※ ※
リィカが思い付いた事は、簡単だ。
初級魔法にさらに魔力を込めると、一回り大きくなる。
でも、所詮は初級魔法。込められる魔力など、限られている。
だったら、魔力を込めて増大させるのではなく、凝縮させることはできないのか。
リィカは、《火球》を発動させる。
手の平に乗るサイズの大きさ。
これに魔力を込めると、一回りくらい大きくなる。
それを放っても、なんのダメージにもならなかった。
では、逆にこれを小さくしたのなら。例え、威力の弱い初級魔法でも、それを小さく凝縮すれば、もっと威力が上がるはずだ。
やってみたら、すぐにコツを掴んだ。
魔力を込めてはダメだ。
するべきは、魔力付与だ。
《火球》に魔力の付与で、干渉する。
その大きさが、少し小さくなる。
それを、ヒドラに打ち込んだ。
「ギャアァ?」
違和感があったのか、ヒドラが声を出す。
それを見て、リィカは確信する。
(――いける!)
もう一度、《火球》を使う。
魔力を付与する。
(――もっと! もっと、小さく!)
先ほどよりも、小さくなった。
元の大きさの、半分近くにまでなる。
ヒドラに放つ。
「ギィヤアアァァ!?」
先ほどより、反応が強い。
ヒドラの目がリィカを睨み、炎を吐いてきたが、それを避ける。
そして、さらにまた《火球》を発動させる。
再び、魔力付与を行う。
(小さく! 小さく!!)
ひたすらそれを念じて、魔力付与を続けた。
(――できた!!)
分かる。
これ以上は凝縮できない。
手の平に包み込めるくらいにまで、小さくなった。
ヒドラに放つ。
同時に、ユーリも同じくらいにまで小さくなった《光球》を、ヒドラに放っていた。
一瞬、リィカとユーリの視線が交わり、二人でニッと笑みを交わす。
凝縮された《火球》と《光球》は、ヒドラの固い皮膚を破り、さらにその奥にまで突き入った。
「ギィヤアァァァァァァァ!?」
ヒドラが叫びを上げた。
リィカとユーリは、魔法を打ち込んでいった。
※ ※ ※
戦いは、リィカとユーリの一方的なものとなった。
二人は近づかない。
遠くから、凝縮した初級魔法を放つだけ。
何発も打つ内に、その行程もスムーズになった。
魔法を発動させてから、魔力付与をして、凝縮させて、という流れを、最初から凝縮させた状態で生み出すことが可能となっていた。
ヒドラは、その場から動かない。
魔封陣の中央を守る必要上、動けないと言った方が正しい。
リィカとユーリが近づかないから、してくる攻撃は炎の攻撃だけだが、距離があるから、躱すのも難しくない。
一度、キリムがやったみたいに、前足を高々と上げて叩き付けて、地面を揺らしてきた。
そこで足を取られたところを、炎で攻撃してきた。
キリムの時にされたことに、またも嵌まってしまったリィカとユーリだが、凝縮した魔法が役に立った。
連発することで、炎を相殺できた。
「ギィィィヤァァァァァァァァァァァァ……!」
断末魔を上げて、ヒドラは倒れたのだ。
※ ※ ※
はぁはぁはぁはぁ
はぁはぁはぁはぁ
リィカとユーリは、二人揃って息を切らしていた。
最後は一方的だったとは言っても、油断は出来なかったし、その前までにダメージを受けている。
慣れない魔法発動をしたことでの疲労もある。
けれど、座り込む訳にはいかない。
ヒドラが倒れて、魔封陣の中央、魔力の濃い部分がはっきり分かる。
二人は同時に走り出した。
その走った方向を見て、ユーリも走り出す。
向かう先は、魔封陣の中央だ。
ヒドラが移動したから、今その中央は空いている。
「ギィヤァァァ! ギヤァァァァァッァァァァ!」
案の定、慌てた様子でヒドラがついてきた。
当然だろう。ヒドラはそこを守っていたのだ。自分が離れた隙に、攻撃されるわけにはいかないのだろう。
さすが、Aランクの魔物だと思う。
知能だって高い。
こちらが何をやろうとするのか、すぐに理解してくる。
どこが中央なのかはすぐに分かった。
魔力が、濃い部分がある。
間違いなく、そこが魔封陣の中央だ。
リィカが、ユーリが、そこに魔法を打ち込もうとするが、ヒドラが炎を吐いて、阻止された。
さらに、ヒドラがその巨体を割り込ませる。
攻撃を打ち込むべき中央部分は、ヒドラの体の下になった。
けれど、それでいい。
これで、ヒドラは容易にこの場所から動けなくなったはずだ。
「リィカ、何をするつもりですか?」
ユーリにもすぐに意図は分かったのだろう。
確かに、ヒドラが動かなければ、自分たちは遠距離からの攻撃ができる。炎の攻撃にさえ気をつけていれば、ダメージは受けない。
だが、同時にこちらの攻撃も通じないのだ。
最初に戻っただけだ。
リィカは気を引き締めた。
「一つ、思い付いたの。集中したいから、ヒドラに動かれると困る」
そして、思い付いた事を口にする。
「なるほど。試してみる価値は、ありそうですね」
ユーリは目を見張り、すぐにニッと笑った。
※ ※ ※
ヒドラは警戒した。
目の前の二体のニンゲン。
自分を従わせる、膨大な魔力を持ったマゾクに、この場所の死守を命じられた。
理由は知らない。興味もない。
ただ、守れと言われた場所の魔力が濃いから、何かあるのだろうとは分かった。
目の前に現れたニンゲンは、使う技は大したことないが、自分を倒せるだけの魔力を持っている。
放置できないと思って追い掛けた。
倒せると思ったのに、しぶとかった。
自分が守るべき場所に攻撃をしようとしてきたから、慌ててその場所に覆い被さった。
この場所から離れれば、ニンゲンが攻撃する。
それが分かった以上は、離れられない。
ニンゲンの使う技は、痛くもかゆくもない。この場所から動かなくても、どうにでもなる。
そう判断したのに、なぜか痛みが走った。
「ギィヤアァァァァァァァ!?」
次々に痛みが走る。
痛みが、段々と増してきて、悲鳴を上げた。
※ ※ ※
リィカが思い付いた事は、簡単だ。
初級魔法にさらに魔力を込めると、一回り大きくなる。
でも、所詮は初級魔法。込められる魔力など、限られている。
だったら、魔力を込めて増大させるのではなく、凝縮させることはできないのか。
リィカは、《火球》を発動させる。
手の平に乗るサイズの大きさ。
これに魔力を込めると、一回りくらい大きくなる。
それを放っても、なんのダメージにもならなかった。
では、逆にこれを小さくしたのなら。例え、威力の弱い初級魔法でも、それを小さく凝縮すれば、もっと威力が上がるはずだ。
やってみたら、すぐにコツを掴んだ。
魔力を込めてはダメだ。
するべきは、魔力付与だ。
《火球》に魔力の付与で、干渉する。
その大きさが、少し小さくなる。
それを、ヒドラに打ち込んだ。
「ギャアァ?」
違和感があったのか、ヒドラが声を出す。
それを見て、リィカは確信する。
(――いける!)
もう一度、《火球》を使う。
魔力を付与する。
(――もっと! もっと、小さく!)
先ほどよりも、小さくなった。
元の大きさの、半分近くにまでなる。
ヒドラに放つ。
「ギィヤアアァァ!?」
先ほどより、反応が強い。
ヒドラの目がリィカを睨み、炎を吐いてきたが、それを避ける。
そして、さらにまた《火球》を発動させる。
再び、魔力付与を行う。
(小さく! 小さく!!)
ひたすらそれを念じて、魔力付与を続けた。
(――できた!!)
分かる。
これ以上は凝縮できない。
手の平に包み込めるくらいにまで、小さくなった。
ヒドラに放つ。
同時に、ユーリも同じくらいにまで小さくなった《光球》を、ヒドラに放っていた。
一瞬、リィカとユーリの視線が交わり、二人でニッと笑みを交わす。
凝縮された《火球》と《光球》は、ヒドラの固い皮膚を破り、さらにその奥にまで突き入った。
「ギィヤアァァァァァァァ!?」
ヒドラが叫びを上げた。
リィカとユーリは、魔法を打ち込んでいった。
※ ※ ※
戦いは、リィカとユーリの一方的なものとなった。
二人は近づかない。
遠くから、凝縮した初級魔法を放つだけ。
何発も打つ内に、その行程もスムーズになった。
魔法を発動させてから、魔力付与をして、凝縮させて、という流れを、最初から凝縮させた状態で生み出すことが可能となっていた。
ヒドラは、その場から動かない。
魔封陣の中央を守る必要上、動けないと言った方が正しい。
リィカとユーリが近づかないから、してくる攻撃は炎の攻撃だけだが、距離があるから、躱すのも難しくない。
一度、キリムがやったみたいに、前足を高々と上げて叩き付けて、地面を揺らしてきた。
そこで足を取られたところを、炎で攻撃してきた。
キリムの時にされたことに、またも嵌まってしまったリィカとユーリだが、凝縮した魔法が役に立った。
連発することで、炎を相殺できた。
「ギィィィヤァァァァァァァァァァァァ……!」
断末魔を上げて、ヒドラは倒れたのだ。
※ ※ ※
はぁはぁはぁはぁ
はぁはぁはぁはぁ
リィカとユーリは、二人揃って息を切らしていた。
最後は一方的だったとは言っても、油断は出来なかったし、その前までにダメージを受けている。
慣れない魔法発動をしたことでの疲労もある。
けれど、座り込む訳にはいかない。
ヒドラが倒れて、魔封陣の中央、魔力の濃い部分がはっきり分かる。
二人は同時に走り出した。
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