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第十章 カトリーズの悪夢
魔法の感想
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――ドォォォォォォォォォォォン!!!!!
リィカの唱えた魔法は、少し前にリィカが初めて《落雷》を使った時よりも、さらに威力が大きく、音も衝撃も大きかった。
トラヴィスは、目を見開いた。
かなり距離が開いているというのに、凄まじい衝撃が伝わってくる。
「少将閣下! お下がり下さい!」
部下が声を掛けてくるが、トラヴィスは動かなかった。
聞いた事のない魔法。初めて見る魔法。
上級魔法など比ではない、その威力。
そんな魔法を目の当たりにしているというのに、後ろに下がるなど、もったいなくてできなかった。
トラヴィス自身がリィカの実力を疑っているか、と言えば、決してそうではない。
ここに至るまでの勇者一行について、情報を集める余裕などなかったので、その実力を知っているわけではない。
だが、勇者一行が遊んでここまで旅をしてこられたはずがない。
彼女が、戦いにおいてただの足手まといに過ぎないとしたら、ここまで来ることはできなかっただろう。
ここにいること。それ自体が、彼女の実力を証明している。
だが、それでもこんな茶番をしたのは、他の兵士達に見せるためだ。
平民の少女、それも困ったことに美少女だ。となれば、変な考えを起こす輩がいないとも限らない。
そんな起こると面倒な事態も、実力を見せられれば起こる可能性は低くなるだろう。
(だが、想像以上だったな)
実力があることを想定していなかったら、本当に腰を抜かしていたかもしれなかった。
音と衝撃が収まる。
地面に大きな窪みが出来ていた。
トラヴィスが兵士達を見てみると、少なくない人数が地面にへたり込んでいた。腰を抜かしたらしい。
そのへたり込んでいる中に、変な考えを起こしそうだと思った輩、いわゆる問題児が沢山いることに気づき、トラヴィスは口の端を上げる。
(鍛え直す、いい口実が出来たな)
頭を悩ませていた問題児の対処まで解決できそうだった。
トラヴィスは、リィカに向かっていった。
すでに、勇者一行が集まっている。
「……やり過ぎだ、リィカ」
「え、ダメだった? 周りに被害はでないようにって思ったんだけど」
「あれで、押さえていたのか……」
その会話が聞こえてきて、トラヴィスは半眼になった。
(あの威力で手加減していたのか)
手加減しなかったら、一体どれだけの威力になるのか。
茶番だと思っていたのに、とんでもなかった。やっておいて良かった。
もし誰かが馬鹿をやらかして、あの魔法が自分たちに向けられるなど、考えたくもなかった。
「リィカ嬢、こちらの勝手な要望に応えて頂いた事、感謝する。
――素晴らしい魔法だった。凡庸な褒め方で申し訳ないが、あの魔法を感じたままに褒めようとすると、いくら時間があっても足りないので、勘弁してくれ」
「――えっ? い、いえ……その、はいっ。あ、ありがとうございます!」
アタフタ言って、大きく頭を下げるリィカを見る。
慣れていないのが丸わかりだ。ある意味で新鮮な反応に、彼女が間違いなく、平民出なのが分かる。
(こういうときのやり取りの仕方くらい、教えてやればいいものを)
王子がいて、貴族が二人もいる。
教えようと思えばできただろうに、その様子はない。
先ほどまで、自分と話をしていたのはアレク一人だ。基本的に、そういった話はアレクが請け負っているのだろう。
だからといって、必要ないかと言えば、そうじゃない。
兵士達は先ほどの魔法で黙るだろうが、プライドの凝り固まった貴族達はそうはいかない。
勇者一行を、最低一度は城に招くことになる。
その時、その馬鹿貴族どもが何もしないという保証がない。
言葉のやり取りを、貴族然とできるだけでも大分変わってくるのだが……。
(――その辺りは、皇女殿下あたりにお伝えしておくか)
男性と女性では、微妙に作法が違っていたりするので、教えるなら同性の方が確実だろう。
トラヴィスはそう結論を出して、改めて勇者一行を見回した。
リィカの唱えた魔法は、少し前にリィカが初めて《落雷》を使った時よりも、さらに威力が大きく、音も衝撃も大きかった。
トラヴィスは、目を見開いた。
かなり距離が開いているというのに、凄まじい衝撃が伝わってくる。
「少将閣下! お下がり下さい!」
部下が声を掛けてくるが、トラヴィスは動かなかった。
聞いた事のない魔法。初めて見る魔法。
上級魔法など比ではない、その威力。
そんな魔法を目の当たりにしているというのに、後ろに下がるなど、もったいなくてできなかった。
トラヴィス自身がリィカの実力を疑っているか、と言えば、決してそうではない。
ここに至るまでの勇者一行について、情報を集める余裕などなかったので、その実力を知っているわけではない。
だが、勇者一行が遊んでここまで旅をしてこられたはずがない。
彼女が、戦いにおいてただの足手まといに過ぎないとしたら、ここまで来ることはできなかっただろう。
ここにいること。それ自体が、彼女の実力を証明している。
だが、それでもこんな茶番をしたのは、他の兵士達に見せるためだ。
平民の少女、それも困ったことに美少女だ。となれば、変な考えを起こす輩がいないとも限らない。
そんな起こると面倒な事態も、実力を見せられれば起こる可能性は低くなるだろう。
(だが、想像以上だったな)
実力があることを想定していなかったら、本当に腰を抜かしていたかもしれなかった。
音と衝撃が収まる。
地面に大きな窪みが出来ていた。
トラヴィスが兵士達を見てみると、少なくない人数が地面にへたり込んでいた。腰を抜かしたらしい。
そのへたり込んでいる中に、変な考えを起こしそうだと思った輩、いわゆる問題児が沢山いることに気づき、トラヴィスは口の端を上げる。
(鍛え直す、いい口実が出来たな)
頭を悩ませていた問題児の対処まで解決できそうだった。
トラヴィスは、リィカに向かっていった。
すでに、勇者一行が集まっている。
「……やり過ぎだ、リィカ」
「え、ダメだった? 周りに被害はでないようにって思ったんだけど」
「あれで、押さえていたのか……」
その会話が聞こえてきて、トラヴィスは半眼になった。
(あの威力で手加減していたのか)
手加減しなかったら、一体どれだけの威力になるのか。
茶番だと思っていたのに、とんでもなかった。やっておいて良かった。
もし誰かが馬鹿をやらかして、あの魔法が自分たちに向けられるなど、考えたくもなかった。
「リィカ嬢、こちらの勝手な要望に応えて頂いた事、感謝する。
――素晴らしい魔法だった。凡庸な褒め方で申し訳ないが、あの魔法を感じたままに褒めようとすると、いくら時間があっても足りないので、勘弁してくれ」
「――えっ? い、いえ……その、はいっ。あ、ありがとうございます!」
アタフタ言って、大きく頭を下げるリィカを見る。
慣れていないのが丸わかりだ。ある意味で新鮮な反応に、彼女が間違いなく、平民出なのが分かる。
(こういうときのやり取りの仕方くらい、教えてやればいいものを)
王子がいて、貴族が二人もいる。
教えようと思えばできただろうに、その様子はない。
先ほどまで、自分と話をしていたのはアレク一人だ。基本的に、そういった話はアレクが請け負っているのだろう。
だからといって、必要ないかと言えば、そうじゃない。
兵士達は先ほどの魔法で黙るだろうが、プライドの凝り固まった貴族達はそうはいかない。
勇者一行を、最低一度は城に招くことになる。
その時、その馬鹿貴族どもが何もしないという保証がない。
言葉のやり取りを、貴族然とできるだけでも大分変わってくるのだが……。
(――その辺りは、皇女殿下あたりにお伝えしておくか)
男性と女性では、微妙に作法が違っていたりするので、教えるなら同性の方が確実だろう。
トラヴィスはそう結論を出して、改めて勇者一行を見回した。
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