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第八章 世界樹ユグドラシル
VSキリム⑦
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アレクが首を落とす。
だが、別の首が焼けた部分を噛みきり、また首が再生する。
いたちごっこだった。
(このままでは、埒があかないな)
かと言って、どうするべきかも思い浮かばない。
「これじゃ、ずっと同じ事の繰り返しだよね」
暁斗が、アレクが思ったことと同じような事を言う。
「首と戦ってるだけじゃ、多分終わんない。本体を攻めた方がいいかも」
同じかと思ったら、さらに言葉が続く。
アレクが質問する。
「本体って、あの首が出てる胴体部分か?」
「うん。どうにか首を掻い潜って、行けないかな?」
言いたいことは分かった。
このまま同じ事を繰り返していれば、自分たちの体力と魔力が先に切れてしまう。
「分かった。俺が突っ込む。アキトはフォロー頼む。リィカも」
言って返事を待たずに文字通り一直線に、キリムに向かって走る。
「えっ!? オレが言い出したのに……」
暁斗が何やら言っているが、別に考えなしなわけじゃない。
リィカは当然、暁斗も無詠唱で魔法を使う。魔法の腕は、アレクより暁斗の方が上だ。
だったら、暁斗には魔法で援護してもらって、自分が突っ込んだ方がいいだろう、と思っただけだ。
「《炎の槍》!」
案の定、暁斗が魔法でキリムの首に攻撃する。
「《岩石砲》!」
リィカからも援護が飛ぶ。
魔法の援護で、そしてアレク自身が剣を振るい、キリムの足下にたどり着く。
(本当に、でかいな)
そう思いながら、剣を振るう。
――ガギッ!
嫌な音がして、剣が弾かれた。
「……なっ! エンチャントしていても、駄目なのか!?」
首には通用したのに、胴体には弾かれた。
胴体は首以上に硬いのだ、という事に気付き、しかしキリムの動きに、それ以上考えている余裕はなかった。
キリムが前足の一本を振り上げた。その先に、尖った爪が光る。
「《疾風》!」
アレクに向かって振り下ろされた前足を、リィカの魔法が防ぐ。
その隙に、アレクはキリムの側から脱する。
「エンチャントだけじゃ駄目だ。通じない」
暁斗に伝える。暁斗は頷いた。
「分かった。今度はオレが突っ込むから、フォローを……」
言いかけて、黙った。
キリムが、前足二本を大きく前に上げる。
先ほど、大きな地震のような衝撃をもたらした、あの動作だ。
「――――ちっ!」
アレクが動く。再び、キリムに最接近する。
狙いは、大きく前足を上げた事で、見える腹だ。
「【百舌衝鳴閃】!」
風の、縦に切り下ろす剣技。複数打てる所を、大きな一本だけの剣技を放つ。
火のエンチャントとのコンボで、火が渦巻くようにキリムに命中する。
「ギィアアアアアアアアアアアアア!」
キリムが悲鳴を上げた。
だが、キリムは自らを傷つけたアレクを、怨恨の籠もった目で睨み付ける。
高く上げた前足の片方を振り下ろし、今度はそれがアレクに命中した。
「ぐぁっ!」
アレクが跳ね飛ばされる。
キリムは、前足を振り下ろした勢いを利用して、体全体をジャンプするように後退させる。
――ズシィィィィィィィンンン!
またも、大きく地面が揺れる。
暁斗とリィカが体が投げ出されそうになり……何かに支えられた。
『我に掴まっておれ』
「――バナスパティ!」
暁斗が驚いたように名前を呼ぶ。
『別の敵も今のところは来ぬからな。心配いらぬ』
「ありがと」
短くお礼を言った暁斗に、リィカの声が掛けられた。
「暁斗、下がって!」
厳しい言葉に、ハッと気付いてキリムを見る。
キリムが、炎を吐いた。
「《水蒸気爆発》!」
その凄まじい炎に、リィカの魔法が突き刺さる。
カークスの炎を打ち破った魔法だが、キリム相手には分が悪そうだった。
飲み込まれそうなリィカの魔法に、暁斗がギリッと歯ぎしりをして、何かを思いついた様にバナスパティを見る。
「バナスパティ、オレをキリムの上まで連れてって! できる?」
『――良かろう』
重々しく頷いたバナスパティは、暁斗の襟首を口で噛んで体を持ち上げる。
「――うわぁっ!?」
驚く暁斗に構わず、バナスパティはキリムに向かって、その場で大きくジャンプをする。
そして、キリムの真上に来ると一言告げた。
『――落とすぞ』
落としてから告げられたその一言に、暁斗の返答は悲鳴だった。
「うわあああぁぁぁぁぁぁぁ!」
(落とすんじゃなくて降ろしてよ! せめて言ってから落として!)
ある意味真っ当な不満を、暁斗は心の中で漏らす。
ちなみに、単に暁斗の襟足を咥えていたせいで、落とす前に言うことができなかっただけである。
剣を下に向ける。
不満を漏らしている場合ではない。
落下の勢いで、より強く攻撃できると思う事にした。
「【荒鷲尖嘴斬】!」
剣技を発動させる。火の、突き技の剣技だ。
火のエンチャントに、火の剣技が合わさり、炎が大きく燃える。その色が、赤から青い炎へと変わった。
(――そういえば、炎を吐く魔物に、炎が効くのかな?)
首の再生を防止するために、ずっと炎を使っていたから、その続きで炎の剣技を発動させてしまった。
だがもう、今さら変えられない。
――キリムの胴体の中央に、その剣が突き刺さった。
「ギィィィィアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
キリムが、先ほどよりも大きな悲鳴を上げる。
口から吐いていた炎が、途切れたのを確認する。
(――効いてる!)
それを確認して、暁斗はさらに剣に魔力を注ぎ込んだ。
※ ※ ※
炎が途切れた。
だが、吐かれた炎は消えず、リィカに襲いかかる。
「――このっ……!」
その威力に押されそうになるのを、必死に堪える。
負けるわけにいかない。
自分が何もできず、結局魔族の元に一人置いてきてしまったバルとの、キリムを倒すという約束。
自分の身を盾にして守ってくれたユーリのためにも。
「――消えろおおおおおぉぉぉぉぉぉ!」
大きく叫ぶ。
アレクに、まだ魔力がたくさん残っていると言ったのは、嘘でも何でもない。本当のことだ。
世界樹の葉で回復してから、今まで以上に魔力が増えたような気がしている。
だから、まだまだ魔力は余裕があった。
その残っている魔力を、全部《水蒸気爆発》に注ぎ込む。
――バァァァァァン!!
大きな爆発を引き起こし、リィカはキリムの炎を相殺した。
暁斗は、剣に魔力を注ぎ続ける。
内側から焼き尽くす。そのつもりで、魔力を注ぎ続けた。
『アキトよ。上級魔法を使え』
聖剣の声に、ハッとする。
迷わず、唱えた。
「《灼熱の業火》!」
これまで一度も使ったことのない、使おうとしたことのない上級魔法。
それを、剣を起点にキリムの体の中で発動させた。
長く残り続ける、紅蓮の炎がキリムの中で荒れ狂った。
「ギイイィィィィアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァ!!!」
今までよりも長く、大きな悲鳴を上げたキリムは、大きく暴れる。
だが、力尽きたように動きが小さくなり……高く持ち上がっていた首が下に垂れ下がる。
同時に。
「うわぁぁぁっ!?」
キリムの胴体も首に引きずられるように倒れて、その上で剣を突き刺していた暁斗が悲鳴を上げた。
――ズシイイイィィィィィィィィィンンンンンンンンンンンンンン!
倒れる音も、今までの中で一番だった。
バナスパティが、キリムの前足に跳ね飛ばされていたアレクの襟足を口で咥え、揺れる地面に翻弄されそうになっていたリィカを前足で支えた。
暁斗は、横倒しになったキリムに巻き込まれないように、刺さったままの聖剣を掴んでぶら下がっていた。
キリムがそのまま動かないことを確認して、体に反動をつける。
剣が刺さっているすぐ近くに、左足を乗せて蹴り出すように反動をつけて、剣を抜く。
そのまま無事に下に着地した。
それをバナスパティは見て、咥えていたアレクを下に落とし、支えていたリィカから前足を離す。
アレクは「どわっ?」と声を上げたが、足からきちんと着地していた。
暁斗が駆け寄ってきた。
「やったよ!!」
満面の笑みで、Vサインをした。
※ ※ ※
「そうだ、ユーリは……」
三人でひとしきり喜び合った後、リィカが駆け出した。
アレクと暁斗も、その後を追う。
「……泰基、ユーリは」
「大丈夫だ。まだ目は覚めないが、治る。心配するな」
「……うん、ありがとう」
またもリィカは泣きそうになるが、それを必死に堪える。
確かに、ユーリは良くなっているのが分かった。
「……あー、それでな、リィカ。毛布でも何でもいいから、何か一枚出しといてくれ」
「え? なんで?」
言いにくそうな泰基の言葉に、リィカが不思議そうに反問する。
泰基は微妙にリィカから視線を逸らしつつ、答えた。
「……つまり、服もボロボロに焼けてしまったわけで。回復するのはいいが、そうするとだな……」
途中で言葉を切った泰基だが、リィカの顔が真っ赤になった。
ユーリの服は焼けてしまった。正確には、焼けて無くなったのは後ろ部分だけだが、どちらにしてももう服としては機能しない。何も着ていないも同然なのだ。
ユーリから視線を逸らして……視界に入ったモノに、顔を歪める。
毛布を一枚取り出して、泰基に渡して声をかけた。
「ユーリのこと、お願いします」
目に入ったのは、魔族の結界。
まだ、バルは戦っていた。
リィカは、そっちに向かって駆け出していた。
だが、別の首が焼けた部分を噛みきり、また首が再生する。
いたちごっこだった。
(このままでは、埒があかないな)
かと言って、どうするべきかも思い浮かばない。
「これじゃ、ずっと同じ事の繰り返しだよね」
暁斗が、アレクが思ったことと同じような事を言う。
「首と戦ってるだけじゃ、多分終わんない。本体を攻めた方がいいかも」
同じかと思ったら、さらに言葉が続く。
アレクが質問する。
「本体って、あの首が出てる胴体部分か?」
「うん。どうにか首を掻い潜って、行けないかな?」
言いたいことは分かった。
このまま同じ事を繰り返していれば、自分たちの体力と魔力が先に切れてしまう。
「分かった。俺が突っ込む。アキトはフォロー頼む。リィカも」
言って返事を待たずに文字通り一直線に、キリムに向かって走る。
「えっ!? オレが言い出したのに……」
暁斗が何やら言っているが、別に考えなしなわけじゃない。
リィカは当然、暁斗も無詠唱で魔法を使う。魔法の腕は、アレクより暁斗の方が上だ。
だったら、暁斗には魔法で援護してもらって、自分が突っ込んだ方がいいだろう、と思っただけだ。
「《炎の槍》!」
案の定、暁斗が魔法でキリムの首に攻撃する。
「《岩石砲》!」
リィカからも援護が飛ぶ。
魔法の援護で、そしてアレク自身が剣を振るい、キリムの足下にたどり着く。
(本当に、でかいな)
そう思いながら、剣を振るう。
――ガギッ!
嫌な音がして、剣が弾かれた。
「……なっ! エンチャントしていても、駄目なのか!?」
首には通用したのに、胴体には弾かれた。
胴体は首以上に硬いのだ、という事に気付き、しかしキリムの動きに、それ以上考えている余裕はなかった。
キリムが前足の一本を振り上げた。その先に、尖った爪が光る。
「《疾風》!」
アレクに向かって振り下ろされた前足を、リィカの魔法が防ぐ。
その隙に、アレクはキリムの側から脱する。
「エンチャントだけじゃ駄目だ。通じない」
暁斗に伝える。暁斗は頷いた。
「分かった。今度はオレが突っ込むから、フォローを……」
言いかけて、黙った。
キリムが、前足二本を大きく前に上げる。
先ほど、大きな地震のような衝撃をもたらした、あの動作だ。
「――――ちっ!」
アレクが動く。再び、キリムに最接近する。
狙いは、大きく前足を上げた事で、見える腹だ。
「【百舌衝鳴閃】!」
風の、縦に切り下ろす剣技。複数打てる所を、大きな一本だけの剣技を放つ。
火のエンチャントとのコンボで、火が渦巻くようにキリムに命中する。
「ギィアアアアアアアアアアアアア!」
キリムが悲鳴を上げた。
だが、キリムは自らを傷つけたアレクを、怨恨の籠もった目で睨み付ける。
高く上げた前足の片方を振り下ろし、今度はそれがアレクに命中した。
「ぐぁっ!」
アレクが跳ね飛ばされる。
キリムは、前足を振り下ろした勢いを利用して、体全体をジャンプするように後退させる。
――ズシィィィィィィィンンン!
またも、大きく地面が揺れる。
暁斗とリィカが体が投げ出されそうになり……何かに支えられた。
『我に掴まっておれ』
「――バナスパティ!」
暁斗が驚いたように名前を呼ぶ。
『別の敵も今のところは来ぬからな。心配いらぬ』
「ありがと」
短くお礼を言った暁斗に、リィカの声が掛けられた。
「暁斗、下がって!」
厳しい言葉に、ハッと気付いてキリムを見る。
キリムが、炎を吐いた。
「《水蒸気爆発》!」
その凄まじい炎に、リィカの魔法が突き刺さる。
カークスの炎を打ち破った魔法だが、キリム相手には分が悪そうだった。
飲み込まれそうなリィカの魔法に、暁斗がギリッと歯ぎしりをして、何かを思いついた様にバナスパティを見る。
「バナスパティ、オレをキリムの上まで連れてって! できる?」
『――良かろう』
重々しく頷いたバナスパティは、暁斗の襟首を口で噛んで体を持ち上げる。
「――うわぁっ!?」
驚く暁斗に構わず、バナスパティはキリムに向かって、その場で大きくジャンプをする。
そして、キリムの真上に来ると一言告げた。
『――落とすぞ』
落としてから告げられたその一言に、暁斗の返答は悲鳴だった。
「うわあああぁぁぁぁぁぁぁ!」
(落とすんじゃなくて降ろしてよ! せめて言ってから落として!)
ある意味真っ当な不満を、暁斗は心の中で漏らす。
ちなみに、単に暁斗の襟足を咥えていたせいで、落とす前に言うことができなかっただけである。
剣を下に向ける。
不満を漏らしている場合ではない。
落下の勢いで、より強く攻撃できると思う事にした。
「【荒鷲尖嘴斬】!」
剣技を発動させる。火の、突き技の剣技だ。
火のエンチャントに、火の剣技が合わさり、炎が大きく燃える。その色が、赤から青い炎へと変わった。
(――そういえば、炎を吐く魔物に、炎が効くのかな?)
首の再生を防止するために、ずっと炎を使っていたから、その続きで炎の剣技を発動させてしまった。
だがもう、今さら変えられない。
――キリムの胴体の中央に、その剣が突き刺さった。
「ギィィィィアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
キリムが、先ほどよりも大きな悲鳴を上げる。
口から吐いていた炎が、途切れたのを確認する。
(――効いてる!)
それを確認して、暁斗はさらに剣に魔力を注ぎ込んだ。
※ ※ ※
炎が途切れた。
だが、吐かれた炎は消えず、リィカに襲いかかる。
「――このっ……!」
その威力に押されそうになるのを、必死に堪える。
負けるわけにいかない。
自分が何もできず、結局魔族の元に一人置いてきてしまったバルとの、キリムを倒すという約束。
自分の身を盾にして守ってくれたユーリのためにも。
「――消えろおおおおおぉぉぉぉぉぉ!」
大きく叫ぶ。
アレクに、まだ魔力がたくさん残っていると言ったのは、嘘でも何でもない。本当のことだ。
世界樹の葉で回復してから、今まで以上に魔力が増えたような気がしている。
だから、まだまだ魔力は余裕があった。
その残っている魔力を、全部《水蒸気爆発》に注ぎ込む。
――バァァァァァン!!
大きな爆発を引き起こし、リィカはキリムの炎を相殺した。
暁斗は、剣に魔力を注ぎ続ける。
内側から焼き尽くす。そのつもりで、魔力を注ぎ続けた。
『アキトよ。上級魔法を使え』
聖剣の声に、ハッとする。
迷わず、唱えた。
「《灼熱の業火》!」
これまで一度も使ったことのない、使おうとしたことのない上級魔法。
それを、剣を起点にキリムの体の中で発動させた。
長く残り続ける、紅蓮の炎がキリムの中で荒れ狂った。
「ギイイィィィィアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァ!!!」
今までよりも長く、大きな悲鳴を上げたキリムは、大きく暴れる。
だが、力尽きたように動きが小さくなり……高く持ち上がっていた首が下に垂れ下がる。
同時に。
「うわぁぁぁっ!?」
キリムの胴体も首に引きずられるように倒れて、その上で剣を突き刺していた暁斗が悲鳴を上げた。
――ズシイイイィィィィィィィィィンンンンンンンンンンンンンン!
倒れる音も、今までの中で一番だった。
バナスパティが、キリムの前足に跳ね飛ばされていたアレクの襟足を口で咥え、揺れる地面に翻弄されそうになっていたリィカを前足で支えた。
暁斗は、横倒しになったキリムに巻き込まれないように、刺さったままの聖剣を掴んでぶら下がっていた。
キリムがそのまま動かないことを確認して、体に反動をつける。
剣が刺さっているすぐ近くに、左足を乗せて蹴り出すように反動をつけて、剣を抜く。
そのまま無事に下に着地した。
それをバナスパティは見て、咥えていたアレクを下に落とし、支えていたリィカから前足を離す。
アレクは「どわっ?」と声を上げたが、足からきちんと着地していた。
暁斗が駆け寄ってきた。
「やったよ!!」
満面の笑みで、Vサインをした。
※ ※ ※
「そうだ、ユーリは……」
三人でひとしきり喜び合った後、リィカが駆け出した。
アレクと暁斗も、その後を追う。
「……泰基、ユーリは」
「大丈夫だ。まだ目は覚めないが、治る。心配するな」
「……うん、ありがとう」
またもリィカは泣きそうになるが、それを必死に堪える。
確かに、ユーリは良くなっているのが分かった。
「……あー、それでな、リィカ。毛布でも何でもいいから、何か一枚出しといてくれ」
「え? なんで?」
言いにくそうな泰基の言葉に、リィカが不思議そうに反問する。
泰基は微妙にリィカから視線を逸らしつつ、答えた。
「……つまり、服もボロボロに焼けてしまったわけで。回復するのはいいが、そうするとだな……」
途中で言葉を切った泰基だが、リィカの顔が真っ赤になった。
ユーリの服は焼けてしまった。正確には、焼けて無くなったのは後ろ部分だけだが、どちらにしてももう服としては機能しない。何も着ていないも同然なのだ。
ユーリから視線を逸らして……視界に入ったモノに、顔を歪める。
毛布を一枚取り出して、泰基に渡して声をかけた。
「ユーリのこと、お願いします」
目に入ったのは、魔族の結界。
まだ、バルは戦っていた。
リィカは、そっちに向かって駆け出していた。
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