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第七章 月空の下で

現状

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アレクとバルが、剣技を発動させる。
魔力付与をしようとして……、できずに結局普通の剣技が発動しただけだ。

「成功しないね」
「本当にできたんですか?」

暁斗がポソッと言って、ユーリが疑わしげな目を向ける。
悔しそうな顔をするアレクとバルは、暁斗を恨めしげに睨む。

「……何でアキトは、普通にできるようになっているんだ」
「ちょっと前まで、お前もこっち側だったじゃねぇか」

「えへへー。才能かなぁ?」
暁斗は、得意げにVサインなどしてみせる。

「メチャクチャ腹立つぞ、コラ」
「絶対できるようになるからな。いい気になるなよ、アキト」

「はいはい、アキトに当たらない。二人とも、練習して下さいよ」
ユーリが呆れたように告げる。


そんな様子を、泰基とリィカは遠くから見ている。
いや、リィカは見ていなかった。風の手紙エア・レター作りに集中していた。


※ ※ ※


王都テルフレイラを出発して、三日。

各自、魔族達と戦ったときの状況については、歩きながら報告し合っている。

何せ自分の戦いに精一杯で、他の人の戦いを気にしてなどいられなかった。
魔族に囚われなかったアレクと泰基、リィカも、自分たちが魔物と対戦しているときは、他の戦いの状況など見ていられなかった。

魔族の固い身体の秘密を聞いて、バルはガックリしていた。
知ったところで、魔力が読めなければ意味がない。
知らないよりはマシというレベルでしかない。

カストルという名前についてはそうかとしか言いようがない。
バルも、アシュラという名前を聞いただけだ。
ユーリに至っては、アイツとだけで、名前すら聞けていない。

ジャダーカの一目惚れ云々の話は、しばしリィカが固まったが、どうやら聞かなかったことにすることで、何とか気を取り直していた。

どうやって魔国に情報が伝わったのか。
魔族も魔道具を知っている、という話から、もしかして何かしらの魔道具で情報が伝えられている可能性が高いのでは、という話をしたが、推測の域は出なかった。


ヘイストの最期の言葉には、誰も何もコメントできなかった。
魔国へ行った時に、一体何を見ることになるのか。ただの魔王討伐ではないのか。
様々な考えが、各自の胸中を巡っていた。


※ ※ ※


泰基は、リィカの魔道具作りを見る。
魔力の流れが不安定だ。
集中もあまり続かないのか、しょっちゅう休憩を入れている。


アレクを見る。
アレクとリィカ、必要があれば会話は普通にしているが、どこか緊張感を孕んでいる。
その時の雰囲気は、お世辞にも良いとは言えない。

それでもアレクはまだ良い。
リィカの不安定さの方が心配だった。
おそらく、夜もまともに眠れていない。眠っていても、魘されている。

それを分かっていても、どうすることもできない。
それが現状だった。


リィカの心より先に、体に限界が来たのは約一週間後。
国境を超えた先での事だった。
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