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第六章 王都テルフレイラ

VSサイクロプス、カークス①

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前話、暁斗の話だったのに申し訳ないですが、今回は、リィカとアレク、泰基サイドの話になります。
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暁斗に続き、バルとユーリまで結界に捕らえられた。

残された三人、リィカとアレク、泰基はゆっくりしていられなかった。
魔族が残していった魔物の卵が、孵化したからだ。

現れた姿を見て、驚愕する。
サイクロプスとカークス。
モルタナで戦った、二体の魔物だった。


「……泰基」
リィカが気遣わしげに、暁斗が捕らえられている結界の前に立ち尽くしている泰基に声をかけた。

Bランクが二体。しかも強化されている可能性もある。守るだけの余裕はないだろう。
どうしても暁斗が心配ならば、せめて《結界バリア》で自分のことを守ってほしい、と思ったが。

「大丈夫だ。Bランク二体の相手をお前らだけにさせないさ」
泰基は振り切るように、暁斗から視線を外した。

モルタナでは、三人で一体と戦った。しかし、今は三人で二体と戦わなければいけない。



「まず、あの二体が、同じように強化された魔物なのかを確認するぞ」
アレクがいつものように指示を出した。

モルタナで戦った時は、普通であればしない攻撃手段を持っていた。
強化されているのか、いないのか。
それによって、戦い方は全然違ってくる。

「どう確認する?」
「サイクロプスを攻撃する。強力な回復能力があったから、傷を負わせれば分かる」

確かに分かりやすい。しかし、
「……強化されてるにしても、同じ強化とは限らないんじゃないか?」

速さや力が強化されているかもしれない。全く違う強化がされているかもしれない。
泰基の質問に、アレクが意表をつかれた顔をした。その可能性は考えていなかったようだ。

「だったらどうする? 何の強化がされているか分からないんじゃ、確認できないぞ?」
「そうだよな……。回復能力だけは確認しておくか?」
「ああ、そうしよう。あれは厄介だ」

泰基に答えて、リィカを振り返る。
「……リィカもいいか?」
アレクの口調には、ためらいがある。

リィカは精神的にかなり堪えてるはずだ。しかも夜だって全く寝てないだろう。
戦えるのか。戦わせていいのか。そう思ってもしょうがない。
しかし、リィカはそんな様子を見せずに頷いた。

「うん、分かった」
いつも通りの返事だった。



サイクロプスがこん棒を大きく振り上げた。
アレクがこん棒を持つ右側に周り、足に剣を振るう。
モルタナで戦った時より、剣が通りやすかった。
大きく切り裂く。

「ぐがああああ!」
サイクロプスが悲鳴を上げて、アレクを攻撃しようとしたが、その前にアレクはサイクロプスの側から離れていた。

「回復は……しないな」
「うん。魔力も動かない。持ってる魔力自体、少ないし」
アレクに答えつつ、リィカは視線を滑らせる。

カークスが三つ首から炎を吐いた。
モルタナでは、三つ首からはきだされた炎がひとつにまとまり、リィカの《水蒸気爆発スチームバースト》と互角に撃ち合った。
しかし、今回はただ普通に三体が同時に炎を吐いただけだ。

「……できるかな」
リィカが小さく呟きつつ、右手を前に出す。

「《水防御アクア・シールド》!」

水の壁が出来て、カークスの炎を受け止める。
リィカは左手で軽くガッツポーズをした。

「…………あー、その魔法は何だ?」
アレクは衝撃を受けたのか、固まってしまった。泰基は困った顔をしている。

「水に水を合わせた混成魔法だよ。泰基もできるんじゃない?」
話を振られた泰基は、簡単に言うな、と思いつつ、さらに疑問を重ねる。

「いつ練習したんだ?」
「全く。できるかなぁ、どうかなぁって思ってたけど、使ったのは初めてだよ」
「…………そうか」
困ったというよりは、もはや諦めた。

(本当に天才だな、リィカは)
一度混成魔法が使えるようになったら、どんどん使い出した。ぶっつけ本番であっさり成功させるのも凄い。

これだけ凄いのに、そう見てもらえないのは損してるよな、と泰基は思わずにいられなかった。


「今のところ、強化されている感じはないな」
リィカの魔法の衝撃から立ち直ったアレクが言った。

「ああ。話しに聞いた普通のサイクロプスとカークスだな」
二体とも、こちらを警戒するように見ていた。
アレクはその二体を、さらに見返す。

「俺はサイクロプス、タイキさんはカークスの相手を。リィカは双方のフォロー。――できるか?」
「「了解!」」

間髪入れず、泰基もリィカも答える。
アレクが二人に笑いかけて、すぐに真剣になった。

「行くぞ!」
サイクロプスとの距離を一気に詰める。
泰基もその後を追って、走り出した。


※ ※ ※


「な……なんじゃ、あの魔法は……!」
「……何なんでしょうね」

国王の悲鳴に、ウォルターは心から賛同してしまった。

「――殿下! 私を中に戻して下さい!!」
ライト侯爵の息子ビリエルは、魔族とBランクの魔物を見てから、ずっと同じ事を叫んでいる。

取り巻きの二人は、諦めたのか大人しいものだ。だが、今リィカが使った水の壁の魔法を見て、驚いた顔をしていた。


魔族が来た、とバルが叫んで走り出し、ユーリと泰基も後を追った。
止める余裕もなく、黙って見送る形になったウォルターは、踵を返しながら、ある指示を出した。

リィカをただの平民と侮り、悪いことをしたとも思っていない奴らに思い知らせてやろうと、強引に外に連れ出した。

ワズワースに言ったら、面白がって協力してくれた。今も国王が逃げ出さないように押さえ込んでくれている。


あの炎の竜巻でも使ってくれれば、派手で分かりやすかったが、仮にも国王であり、貴族だ。
地味ではあるが、リィカの使った水の壁が普通とは違うことくらいは分かるらしい。

「あれも混成魔法なのかのう」
ワズワースは面白そうだった。
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