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第六章 王都テルフレイラ
魔族襲撃
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「「「外に出た!?」」」
朝、報告を受けて、バル、ユーリ、泰基は、声を揃えた。
「「申し訳ありません!!」」
一通りの流れを説明した後に、門番二人も声を揃えて謝罪するが、この二人は別に悪くないし、むしろ被害者だ。
怒ってない、問題ない、と宥めて追い返して、三人はため息をついた。
「駄目なのはリィカだけじゃなかったか」
「アレクは駄目そうかなと思ってましたけど、アキトもですか」
「昨日、かなり気にしてたからな。話はしたんだが……駄目だったか」
バル、ユーリ、泰基と言う。
「……僕たちはどうします?」
ユーリの言葉にバルが悩む。
「とりあえず朝食食べてしまわないか? それで、あいつらの分も何かに詰めてもらってから行こう」
言ったのは泰基だった。
三人が朝食を食べていると、ウォルターがバタバタとやってきた。リィカたちの件の報告を受けたらしい。
居場所を探す、というウォルターにバルが断りを入れる。気配を探って、とっくに見つけている。
しかし突然、バルが立ち上がった。
どうしたのかと聞く前に、バルがそれを伝えた。
「魔族が来たぞ!」
※ ※ ※
膝に顔を埋めていたリィカが、顔を上げた。
「《流星群》!」
土の上級魔法。唱えたのはリィカではない。
アレクと暁斗が立ち上がって、リィカの方に駆け出す。
魔族三体が、姿を突然現して魔法を放ってきた。
降り注いでくる大量の隕石を見ても、リィカは慌てた様子を見せなかった。
「《重力操作》!」
リィカの唱えた魔法で、隕石が空中で止まる。
「《暴風》!」
すかさず次の魔法を使う。
唱えられた風の中級魔法が、隕石を魔族に押し返す。
「「「なっ……!?」」」
聞こえた驚きの声をかき消して、隕石は魔族に命中した。
「あのっ、小娘!」
自分が唱えた魔法を返されて、アルテミは毒づく。
かわすことはできたが、面白いはずがない。
「ジャダーカ様ほどではなくても、お前よりは上だな」
リーダーにあっさりとそれを言われて、アルテミは不満そうにするが、リーダーは気にしない。
「さて、どうする? お前たち二人のお目当てはまだいないようだが」
「あたしは本当はあの娘とやりたいの!」
「やれば良いのではないか? お主が負ける分には、ジャダーカ様も文句は言わぬだろう?」
「仮にも仲間に対して、ひどい物言いね?」
メルクリウスの言葉にアルテミが青筋をたてて文句を言うが、すでにメルクリウスの視線はリーダーだった。
「先に始めていて良いぞ?」
「では、そうさせてもらうとしよう」
リーダーはニヤリと笑った。
※ ※ ※
「「リィカ!」」
駆け寄ってきたアレクと暁斗に、リィカは目をパチパチさせる。
「……早いね?」
というか早すぎる。王宮にいて魔族の気配を察知して、この時間で来るのは絶対に無理だ。
リィカの疑問にアレクと暁斗が顔を見合わせて、二人揃って頭を下げた。
「ごめん!」
「……実はずっと後ろからリィカを見てた」
暁斗が勢いよく謝って、アレクが言いにくそうに伝える。
「…………ずっと?」
「リィカが王宮を出て一時間後くらいに俺たちも出て、それからずっと」
「……けっこうな時間なんだけど」
とりあえず突っ込んでおく。
声を掛けてくれれば、とは言えない。掛けられても、まともな対応ができたとは思えない。
「心配かけちゃって、ごめんね」
アレクも暁斗も悪くない。
悪いのは夜中に外出した自分だ。そう思って謝罪すれば、二人は何とも言えない顔をした。
「おしゃべりとは随時余裕だな?」
魔族から声が掛かった。
「その余裕、後悔させてやろう」
「……そんな余裕ないけど」
わりと本気でリィカは呟いた。コンディションはどう考えても悪い。だからといって、素直に倒されるつもりもないけれど。
「《風の千本矢》!」
女魔族が風の中級魔法を放った。アレクと暁斗は回避で動く。
「《砂嵐》!」
リィカは土の中級魔法を使う。女魔族が放った魔法を全て消し去る。
だが。
「――体がっ!」
暁斗の悲鳴のような声が聞こえて、そちらに慌てて視線を向ける。
「貴様らが離れるのを待っていた。――私に付き合ってもらうぞ、勇者」
一体の魔族が暁斗の前に立ちふさがっていた。
ニヤリと嗤う。
「<決闘場開場>」
魔族の男が魔法とも違う何かを唱えた瞬間、男と暁斗の周囲に、黒色の透明な囲いが出現した。
リィカが叫んだ。
「暁斗、逃げて!」
「体が動かないんだ……!」
暁斗の叫びに、リィカよりもアレクが動く方が早かった。暁斗に向かって走る。
「無駄だ」
その囲いが一気に拡がり、ぶつかったアレクが弾き飛ばされる。
それは十メートル四方程にまで拡がった。
「――暁斗!? 何なのこれ!?」
広がったそれを叩きながら、リィカが叫ぶ。
「これは、我ら魔族が古来より一対一の決闘を行う時に用いてきた、一種の結界。中からも外からも壊せん。
出られるのは、どちらかが死んだ場合。あるいは、どちらかが降伏した場合。ただし降伏した者は勝者の奴隷となり、決して逆らう事はできなくなる」
その魔族は一度言葉を切る。暁斗を見据えた。
「体が動かなくなるのは、決闘の相手を逃がさぬため。結界が成れば普通に動く。――勇者よ、我が名はヘイスト。お相手願おうか」
魔族のリーダーの男は剣を抜き放った。
朝、報告を受けて、バル、ユーリ、泰基は、声を揃えた。
「「申し訳ありません!!」」
一通りの流れを説明した後に、門番二人も声を揃えて謝罪するが、この二人は別に悪くないし、むしろ被害者だ。
怒ってない、問題ない、と宥めて追い返して、三人はため息をついた。
「駄目なのはリィカだけじゃなかったか」
「アレクは駄目そうかなと思ってましたけど、アキトもですか」
「昨日、かなり気にしてたからな。話はしたんだが……駄目だったか」
バル、ユーリ、泰基と言う。
「……僕たちはどうします?」
ユーリの言葉にバルが悩む。
「とりあえず朝食食べてしまわないか? それで、あいつらの分も何かに詰めてもらってから行こう」
言ったのは泰基だった。
三人が朝食を食べていると、ウォルターがバタバタとやってきた。リィカたちの件の報告を受けたらしい。
居場所を探す、というウォルターにバルが断りを入れる。気配を探って、とっくに見つけている。
しかし突然、バルが立ち上がった。
どうしたのかと聞く前に、バルがそれを伝えた。
「魔族が来たぞ!」
※ ※ ※
膝に顔を埋めていたリィカが、顔を上げた。
「《流星群》!」
土の上級魔法。唱えたのはリィカではない。
アレクと暁斗が立ち上がって、リィカの方に駆け出す。
魔族三体が、姿を突然現して魔法を放ってきた。
降り注いでくる大量の隕石を見ても、リィカは慌てた様子を見せなかった。
「《重力操作》!」
リィカの唱えた魔法で、隕石が空中で止まる。
「《暴風》!」
すかさず次の魔法を使う。
唱えられた風の中級魔法が、隕石を魔族に押し返す。
「「「なっ……!?」」」
聞こえた驚きの声をかき消して、隕石は魔族に命中した。
「あのっ、小娘!」
自分が唱えた魔法を返されて、アルテミは毒づく。
かわすことはできたが、面白いはずがない。
「ジャダーカ様ほどではなくても、お前よりは上だな」
リーダーにあっさりとそれを言われて、アルテミは不満そうにするが、リーダーは気にしない。
「さて、どうする? お前たち二人のお目当てはまだいないようだが」
「あたしは本当はあの娘とやりたいの!」
「やれば良いのではないか? お主が負ける分には、ジャダーカ様も文句は言わぬだろう?」
「仮にも仲間に対して、ひどい物言いね?」
メルクリウスの言葉にアルテミが青筋をたてて文句を言うが、すでにメルクリウスの視線はリーダーだった。
「先に始めていて良いぞ?」
「では、そうさせてもらうとしよう」
リーダーはニヤリと笑った。
※ ※ ※
「「リィカ!」」
駆け寄ってきたアレクと暁斗に、リィカは目をパチパチさせる。
「……早いね?」
というか早すぎる。王宮にいて魔族の気配を察知して、この時間で来るのは絶対に無理だ。
リィカの疑問にアレクと暁斗が顔を見合わせて、二人揃って頭を下げた。
「ごめん!」
「……実はずっと後ろからリィカを見てた」
暁斗が勢いよく謝って、アレクが言いにくそうに伝える。
「…………ずっと?」
「リィカが王宮を出て一時間後くらいに俺たちも出て、それからずっと」
「……けっこうな時間なんだけど」
とりあえず突っ込んでおく。
声を掛けてくれれば、とは言えない。掛けられても、まともな対応ができたとは思えない。
「心配かけちゃって、ごめんね」
アレクも暁斗も悪くない。
悪いのは夜中に外出した自分だ。そう思って謝罪すれば、二人は何とも言えない顔をした。
「おしゃべりとは随時余裕だな?」
魔族から声が掛かった。
「その余裕、後悔させてやろう」
「……そんな余裕ないけど」
わりと本気でリィカは呟いた。コンディションはどう考えても悪い。だからといって、素直に倒されるつもりもないけれど。
「《風の千本矢》!」
女魔族が風の中級魔法を放った。アレクと暁斗は回避で動く。
「《砂嵐》!」
リィカは土の中級魔法を使う。女魔族が放った魔法を全て消し去る。
だが。
「――体がっ!」
暁斗の悲鳴のような声が聞こえて、そちらに慌てて視線を向ける。
「貴様らが離れるのを待っていた。――私に付き合ってもらうぞ、勇者」
一体の魔族が暁斗の前に立ちふさがっていた。
ニヤリと嗤う。
「<決闘場開場>」
魔族の男が魔法とも違う何かを唱えた瞬間、男と暁斗の周囲に、黒色の透明な囲いが出現した。
リィカが叫んだ。
「暁斗、逃げて!」
「体が動かないんだ……!」
暁斗の叫びに、リィカよりもアレクが動く方が早かった。暁斗に向かって走る。
「無駄だ」
その囲いが一気に拡がり、ぶつかったアレクが弾き飛ばされる。
それは十メートル四方程にまで拡がった。
「――暁斗!? 何なのこれ!?」
広がったそれを叩きながら、リィカが叫ぶ。
「これは、我ら魔族が古来より一対一の決闘を行う時に用いてきた、一種の結界。中からも外からも壊せん。
出られるのは、どちらかが死んだ場合。あるいは、どちらかが降伏した場合。ただし降伏した者は勝者の奴隷となり、決して逆らう事はできなくなる」
その魔族は一度言葉を切る。暁斗を見据えた。
「体が動かなくなるのは、決闘の相手を逃がさぬため。結界が成れば普通に動く。――勇者よ、我が名はヘイスト。お相手願おうか」
魔族のリーダーの男は剣を抜き放った。
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