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第六章 王都テルフレイラ
失敗
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「父上、どうされたのですか?」
ウォルターが父王に声をかけた。
驚きもあるが、どちらかというと面倒そうな声だ。
しかし、国王はそれに気付かず、朗らかに笑った。
「どうも何もなかろう。勇者様がいらっしゃって、魔物どもを倒して我が国を開放して下さったのだろう? なぜ儂に知らせんのだ」
ズカズカと軍議の場に押し入り、泰基と暁斗の前に立つ。
「勇者様。儂が国王のマルマデュークじゃ。此度の件、誠にご苦労じゃった。感謝するぞ」
泰基は無表情を保つが、暁斗がわずかに不快な顔をする。言い方が完全に上からの言い方だ。
ウォルターもそれに気付くが、さすがに口を挟めない。
しかし、それが失敗だった。
勇者一行を見た国王が、リィカを見て顔をしかめたのだ。
「そなた、平民ではないのか? なぜ平民ごときがこの場におる? 今すぐ出て行け!」
「――父上!!」
ウォルターが椅子を倒すほどの勢いで立ち上がった。
幾人か、国王の言葉に同意するように頷いている者に睨みを入れる。
「彼女は、勇者様の一行の一員です。魔物の大半を倒したのも彼女です。テオドアに、魔法が使えるように教えてくれました。この場への参加を許可したのは私です。言葉を取り消して下さい……!」
国王に言葉を取り消せと迫るのは、いかに王太子であっても許される事ではない。
場がざわめいているのが分かる。
しかし、ウォルターとしては譲れなかった。
彼女は平民だ。知識として知らずとも、彼女の髪色は平民としてよくある色だ。見れば誰もがそうと分かるだろう。
彼女は最初から怯えていた。貴族や王族には横暴な者も多い。そうした者に触れてきたとしたら、怯えられてもしょうがない。
だから、できるだけ丁寧に対応した。
勇者が、彼女を対等な存在として接していたからだ。平民と蔑んだ対応をすれば、間違いなく勇者の不興を買う。
そして、その対応は正解だった。ここまでは勇者も自分たちを認めてくれていただろう。
それが、国王の言葉のせいで、すべて台無しになった。
勇者達が、はっきりと国王に嫌悪感を示している。
それを見てとって、ウォルターがさらに言い募ろうとして、しかしそれよりも早く言葉を発した者がいた。
「――申し訳、ございません」
真っ青な顔をしたリィカが、震える声で謝罪して、国王に頭を深く下げた。
そして、頭を上げると同時に身を翻して、扉から出て行った。
「「「「「リィカ!!」」」」」
勇者一行の声が重なる。
「お爺さまのバカ!!」
テオドアが、立ち上がりつつ国王に向かって怒鳴り、そのまま扉から出て行く。
「……ば、バカとは何じゃ、バカとは!」
「バカだからバカと言ったのです。急に現れて、何を考えてらっしゃるんですか」
カトレナも立ち上がりつつ、国王に冷たく言い返す。
ウォルターに目を向けた。
「リィカさんは、私とテオドアで対応致します」
「……分かった。頼む」
ウォルターは力なく頷く。勇者の反応を気にするあまり、肝心の彼女の様子を確認していなかった。
失敗だった。
ウォルターが父王に声をかけた。
驚きもあるが、どちらかというと面倒そうな声だ。
しかし、国王はそれに気付かず、朗らかに笑った。
「どうも何もなかろう。勇者様がいらっしゃって、魔物どもを倒して我が国を開放して下さったのだろう? なぜ儂に知らせんのだ」
ズカズカと軍議の場に押し入り、泰基と暁斗の前に立つ。
「勇者様。儂が国王のマルマデュークじゃ。此度の件、誠にご苦労じゃった。感謝するぞ」
泰基は無表情を保つが、暁斗がわずかに不快な顔をする。言い方が完全に上からの言い方だ。
ウォルターもそれに気付くが、さすがに口を挟めない。
しかし、それが失敗だった。
勇者一行を見た国王が、リィカを見て顔をしかめたのだ。
「そなた、平民ではないのか? なぜ平民ごときがこの場におる? 今すぐ出て行け!」
「――父上!!」
ウォルターが椅子を倒すほどの勢いで立ち上がった。
幾人か、国王の言葉に同意するように頷いている者に睨みを入れる。
「彼女は、勇者様の一行の一員です。魔物の大半を倒したのも彼女です。テオドアに、魔法が使えるように教えてくれました。この場への参加を許可したのは私です。言葉を取り消して下さい……!」
国王に言葉を取り消せと迫るのは、いかに王太子であっても許される事ではない。
場がざわめいているのが分かる。
しかし、ウォルターとしては譲れなかった。
彼女は平民だ。知識として知らずとも、彼女の髪色は平民としてよくある色だ。見れば誰もがそうと分かるだろう。
彼女は最初から怯えていた。貴族や王族には横暴な者も多い。そうした者に触れてきたとしたら、怯えられてもしょうがない。
だから、できるだけ丁寧に対応した。
勇者が、彼女を対等な存在として接していたからだ。平民と蔑んだ対応をすれば、間違いなく勇者の不興を買う。
そして、その対応は正解だった。ここまでは勇者も自分たちを認めてくれていただろう。
それが、国王の言葉のせいで、すべて台無しになった。
勇者達が、はっきりと国王に嫌悪感を示している。
それを見てとって、ウォルターがさらに言い募ろうとして、しかしそれよりも早く言葉を発した者がいた。
「――申し訳、ございません」
真っ青な顔をしたリィカが、震える声で謝罪して、国王に頭を深く下げた。
そして、頭を上げると同時に身を翻して、扉から出て行った。
「「「「「リィカ!!」」」」」
勇者一行の声が重なる。
「お爺さまのバカ!!」
テオドアが、立ち上がりつつ国王に向かって怒鳴り、そのまま扉から出て行く。
「……ば、バカとは何じゃ、バカとは!」
「バカだからバカと言ったのです。急に現れて、何を考えてらっしゃるんですか」
カトレナも立ち上がりつつ、国王に冷たく言い返す。
ウォルターに目を向けた。
「リィカさんは、私とテオドアで対応致します」
「……分かった。頼む」
ウォルターは力なく頷く。勇者の反応を気にするあまり、肝心の彼女の様子を確認していなかった。
失敗だった。
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