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第五章 デトナ王国までの旅路
ユーリの魔道具
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歩きつつ、一行は今晩の予定を考えていた。
街に入るか否か。
これは、ダメ元で入ってみよう、という話になった。宿に泊まれなくても、街の中なら魔物の心配はいらない。外よりはゆっくり休めるはずだった。
「今後も、人がいっぱいで宿に泊まれないと言うことにでもなったら、さすがに辛いな」
アレクの言葉に、全員が嫌そうな顔をした。
あり得そうで嫌だ。
「ユーリの魔道具、進行はどうなんだ?」
「……うーん」
泰基とユーリがそんなやり取りをした。
「ユーリの魔道具?」
バルが驚いたように声を出す。
ルイス公爵の屋敷で、何を作っているか秘密だと言っていた。
魔道具を作っている三人の中で、ユーリだけが一つも成功品を出していないのだ。
「野宿するとき、いちいち見張りをしなくてもいいような魔道具を作りたいんですよ」
ユーリが、そう言って話し始めた。
魔物に襲われることを考えると、どうしても夜は夜番が必要だ。
それを、二人ずつ三組交代で行っているが、毎晩きちんと眠れないのは辛い。
だから、魔物に気付かれないようにするか、魔物に襲われても問題ないほどの強固な結界を作るか。魔物が来たら自動的に攻撃するようにするか。
そして、できれば追加したいのが、体力の回復。
きちんとベッドで休めない分、寝ている間の回復効果を高めるような魔法も追加したい。
「欲張りすぎじゃない?」
リィカが真っ先に思ったのは、それだ。
魔物対策だけに絞った方がいい。
「回復効果を高めるなら、わたしが泰基にもらった魔道具みたいなのでもいいんじゃないの?」
「俺もそう言ったんだけどな。嫌だと言われた」
泰基はやや呆れ気味だ。
「当たり前でしょう。男からもらった装飾品を身に付けて、喜ぶ趣味はありません」
「……理由、そこなの?」
リィカはジト目だ。そこは気にすることなのか。
そもそも、装飾品ではなく魔道具だ。
「……だったら、ユーリが自分で作って自分で身に付ける分にはいいんじゃない?」
思いついた事を提案したリィカだが、ユーリの目は冷たかった。
「僕はそれでも良いですけどね。それだとアレクとかバルとかには何もないじゃないですか」
「ユーリが作ってあげれば……」
「嫌です。何が悲しくて、ごつい男二人に装飾品を作ってあげなきゃいけないんですか」
「「お前な……」」
アレクとバルが同時に突っ込みを入れた。
リィカの顔は引き攣っている。
暁斗が「オレは?」と言っているが、暁斗には泰基がどうにかするだろう。
「そういうわけでして、何としても魔物対策と体力回復、どちらの効果もある魔道具にしたいんですよ」
リィカは引き攣った顔のまま、がんばって、と内心でだけ答えた。
自分なら、そんな面倒そうなことはしない。というか、体力回復は泰基が作ればいいじゃないか。ユーリ本人がいいなら別にいいけど。
「目処は立っているのか?」
放り投げた気分になっているリィカと違って、泰基はきちんと付き合うつもりらしい。
話を切り出したのが泰基であることを考えると、ユーリは泰基に相談をしていたのか。
元々面倒見は良い方だったと思う。それが大人になって、さらに深まったと言うべきだろうか。
「……魔物対策が悩みどころなんですよね。先ほど上げたようにいくつか案はあるんですが、決め手がないと言いますか……」
ユーリの言葉の途中で、アレクとバル、暁斗が立ち上がった。
「どうしました?」
「――魔物が多数こっちに向かっている。それに追われている人もいる。多分、馬車と、馬に乗っている人がいるな」
街道の先を見据えていた。
街に入るか否か。
これは、ダメ元で入ってみよう、という話になった。宿に泊まれなくても、街の中なら魔物の心配はいらない。外よりはゆっくり休めるはずだった。
「今後も、人がいっぱいで宿に泊まれないと言うことにでもなったら、さすがに辛いな」
アレクの言葉に、全員が嫌そうな顔をした。
あり得そうで嫌だ。
「ユーリの魔道具、進行はどうなんだ?」
「……うーん」
泰基とユーリがそんなやり取りをした。
「ユーリの魔道具?」
バルが驚いたように声を出す。
ルイス公爵の屋敷で、何を作っているか秘密だと言っていた。
魔道具を作っている三人の中で、ユーリだけが一つも成功品を出していないのだ。
「野宿するとき、いちいち見張りをしなくてもいいような魔道具を作りたいんですよ」
ユーリが、そう言って話し始めた。
魔物に襲われることを考えると、どうしても夜は夜番が必要だ。
それを、二人ずつ三組交代で行っているが、毎晩きちんと眠れないのは辛い。
だから、魔物に気付かれないようにするか、魔物に襲われても問題ないほどの強固な結界を作るか。魔物が来たら自動的に攻撃するようにするか。
そして、できれば追加したいのが、体力の回復。
きちんとベッドで休めない分、寝ている間の回復効果を高めるような魔法も追加したい。
「欲張りすぎじゃない?」
リィカが真っ先に思ったのは、それだ。
魔物対策だけに絞った方がいい。
「回復効果を高めるなら、わたしが泰基にもらった魔道具みたいなのでもいいんじゃないの?」
「俺もそう言ったんだけどな。嫌だと言われた」
泰基はやや呆れ気味だ。
「当たり前でしょう。男からもらった装飾品を身に付けて、喜ぶ趣味はありません」
「……理由、そこなの?」
リィカはジト目だ。そこは気にすることなのか。
そもそも、装飾品ではなく魔道具だ。
「……だったら、ユーリが自分で作って自分で身に付ける分にはいいんじゃない?」
思いついた事を提案したリィカだが、ユーリの目は冷たかった。
「僕はそれでも良いですけどね。それだとアレクとかバルとかには何もないじゃないですか」
「ユーリが作ってあげれば……」
「嫌です。何が悲しくて、ごつい男二人に装飾品を作ってあげなきゃいけないんですか」
「「お前な……」」
アレクとバルが同時に突っ込みを入れた。
リィカの顔は引き攣っている。
暁斗が「オレは?」と言っているが、暁斗には泰基がどうにかするだろう。
「そういうわけでして、何としても魔物対策と体力回復、どちらの効果もある魔道具にしたいんですよ」
リィカは引き攣った顔のまま、がんばって、と内心でだけ答えた。
自分なら、そんな面倒そうなことはしない。というか、体力回復は泰基が作ればいいじゃないか。ユーリ本人がいいなら別にいいけど。
「目処は立っているのか?」
放り投げた気分になっているリィカと違って、泰基はきちんと付き合うつもりらしい。
話を切り出したのが泰基であることを考えると、ユーリは泰基に相談をしていたのか。
元々面倒見は良い方だったと思う。それが大人になって、さらに深まったと言うべきだろうか。
「……魔物対策が悩みどころなんですよね。先ほど上げたようにいくつか案はあるんですが、決め手がないと言いますか……」
ユーリの言葉の途中で、アレクとバル、暁斗が立ち上がった。
「どうしました?」
「――魔物が多数こっちに向かっている。それに追われている人もいる。多分、馬車と、馬に乗っている人がいるな」
街道の先を見据えていた。
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