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第四章 モントルビアの王宮
モルタナ出発
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一晩ゆっくり休み、次の日、一行は予定通りに出発した。
出発時、ルイス公爵とジェラードから、サイクロプスとカークス二体の魔石をもらった。
実験をされたらしい魔物の魔石など使えるのか、と思った一行だが、熟練の神官にきちんと見てもらい、問題ないと判断されたらしい。
そして、モルタナの街をついに出発した。
「……長かったなぁ」
リィカがしみじみ言った。なんだかんだで、一週間の滞在だ。
「リィカが一番大変だったからな……」
アレクの声が落ち込んでいるので、リィカは慌てて話題を変える。
「次はデトナ王国、だよね」
モントルビア王国の東にある国だ。
モントルビア王国の北は巨大な渓谷があるため、直接北上はできない。デトナ王国に一度入る必要があった。
アレクが今後の予定を語る。
「できるだけ急ぎたいから、デトナ王国はさっさと通り抜けたいな。その北は小国群だが、あちらこちらで小競り合いが起きていて、治安が悪いと聞いたことがあるから、そこも最短距離で通り抜けたい。
小国群を通り抜ければ、ルバドール帝国。魔族との戦いの最前線だ」
※ ※ ※
「一つ聞きたいんだが」
野営の場所で、食事中。
泰基が切り出した。
「この世界では、長い間ずっと人と魔族との戦いが断続的に起こっていたんだろ? その割に魔族の情報が少なくないか? 魔法を無詠唱で使うとか、体が普通では切れないくらいに固い、とか、過去勇者一行が戦った記録はないのか?」
「ない。父上や兄上にも聞いてみたが、そういう記録は一切ないそうだ」
アレクが断言した。
間が約200年も開いてしまうから、単に残してもただ記録が紛失してしまうだけ、という可能性もなくはない。
けれど、建国王アベルについては、その資料がたくさん残されているのだ。だというのに魔族に関しての資料は存在しない。だとすれば、最初から何も残さなかった、と考えた方がスムーズだ。
(残さなかったのか、残せなかったのか……? 色々、面倒ごとが多そうだな)
泰基が考える側で、暁斗は複雑な顔をしていた。
※ ※ ※
夜の見張り番。
六人で三組二人ずつの交代。
リィカと泰基が、今日は三番目の担当だった。
「肩、もう大丈夫か?」
泰基に聞かれてリィカは首をかしげる。
「……肩?」
聞き返せば、泰基が不機嫌になる。
「お前が暁斗の頭を撫でていた時のことだ。肩が痛いのに無理していただろ?」
「……今になってそれ言うの?」
「言うときなかったんだ。暁斗が何を言っても、駄目なときは駄目と言っていいから。今回はあいつに何も言わないが、次に何かあれば言うからな」
「……うん、ごめんなさい。何か、言いにくいというか、希望を叶えてあげたいというか、そんな気持ちになっちゃって」
はあ、と泰基がため息をついた。
「ずいぶん暁斗が懐いちゃったからな。――正直助かってるよ。俺はどうしたって母親にはなれないから。嫌いだなんだと言っていたあいつが、母親を求めるようになったんだ。いい傾向だと思ってる。幼児化するのは、どうかとは思うけどな」
「幼児化って……」
「そうだろ。頑張ったご褒美に頭を撫でろなんて、一体お前はいくつの子供なんだ、と言いたくなる」
「……………………」
それには返さずリィカは視線を逸らす。
パチパチと燃える火に目を向けているようで、何かを考えているようだった。
「なぁ、リィカ」
「…………なぁに?」
呼びかければ、心ここにあらずといった返答。
泰基は、一度深呼吸をして、思い切って言った。
「――お前、凪沙か?」
「…………………………え?」
リィカは、呆然と泰基を見つめ返した。
出発時、ルイス公爵とジェラードから、サイクロプスとカークス二体の魔石をもらった。
実験をされたらしい魔物の魔石など使えるのか、と思った一行だが、熟練の神官にきちんと見てもらい、問題ないと判断されたらしい。
そして、モルタナの街をついに出発した。
「……長かったなぁ」
リィカがしみじみ言った。なんだかんだで、一週間の滞在だ。
「リィカが一番大変だったからな……」
アレクの声が落ち込んでいるので、リィカは慌てて話題を変える。
「次はデトナ王国、だよね」
モントルビア王国の東にある国だ。
モントルビア王国の北は巨大な渓谷があるため、直接北上はできない。デトナ王国に一度入る必要があった。
アレクが今後の予定を語る。
「できるだけ急ぎたいから、デトナ王国はさっさと通り抜けたいな。その北は小国群だが、あちらこちらで小競り合いが起きていて、治安が悪いと聞いたことがあるから、そこも最短距離で通り抜けたい。
小国群を通り抜ければ、ルバドール帝国。魔族との戦いの最前線だ」
※ ※ ※
「一つ聞きたいんだが」
野営の場所で、食事中。
泰基が切り出した。
「この世界では、長い間ずっと人と魔族との戦いが断続的に起こっていたんだろ? その割に魔族の情報が少なくないか? 魔法を無詠唱で使うとか、体が普通では切れないくらいに固い、とか、過去勇者一行が戦った記録はないのか?」
「ない。父上や兄上にも聞いてみたが、そういう記録は一切ないそうだ」
アレクが断言した。
間が約200年も開いてしまうから、単に残してもただ記録が紛失してしまうだけ、という可能性もなくはない。
けれど、建国王アベルについては、その資料がたくさん残されているのだ。だというのに魔族に関しての資料は存在しない。だとすれば、最初から何も残さなかった、と考えた方がスムーズだ。
(残さなかったのか、残せなかったのか……? 色々、面倒ごとが多そうだな)
泰基が考える側で、暁斗は複雑な顔をしていた。
※ ※ ※
夜の見張り番。
六人で三組二人ずつの交代。
リィカと泰基が、今日は三番目の担当だった。
「肩、もう大丈夫か?」
泰基に聞かれてリィカは首をかしげる。
「……肩?」
聞き返せば、泰基が不機嫌になる。
「お前が暁斗の頭を撫でていた時のことだ。肩が痛いのに無理していただろ?」
「……今になってそれ言うの?」
「言うときなかったんだ。暁斗が何を言っても、駄目なときは駄目と言っていいから。今回はあいつに何も言わないが、次に何かあれば言うからな」
「……うん、ごめんなさい。何か、言いにくいというか、希望を叶えてあげたいというか、そんな気持ちになっちゃって」
はあ、と泰基がため息をついた。
「ずいぶん暁斗が懐いちゃったからな。――正直助かってるよ。俺はどうしたって母親にはなれないから。嫌いだなんだと言っていたあいつが、母親を求めるようになったんだ。いい傾向だと思ってる。幼児化するのは、どうかとは思うけどな」
「幼児化って……」
「そうだろ。頑張ったご褒美に頭を撫でろなんて、一体お前はいくつの子供なんだ、と言いたくなる」
「……………………」
それには返さずリィカは視線を逸らす。
パチパチと燃える火に目を向けているようで、何かを考えているようだった。
「なぁ、リィカ」
「…………なぁに?」
呼びかければ、心ここにあらずといった返答。
泰基は、一度深呼吸をして、思い切って言った。
「――お前、凪沙か?」
「…………………………え?」
リィカは、呆然と泰基を見つめ返した。
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