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第四章 モントルビアの王宮
フードの男
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ルイス公爵とジェラードが、勇者一行の動きを怪訝そうに眺める。
魔物を二体倒したと思ったら、いきなり移動を始めた。
後を追うと決めて、縄に繋いだ二人を見る。
どうしようかと思っていたら、騎士団員の二人が元気よく言った。
「自分たちが!」
「責任を持って、引っ張っていきます!」
「…………そうか。頼んだ」
ニコニコ楽しそうだ。そこを突っ込むのは野暮というものだろう。
勇者たちの後を追って、走り出した。
※ ※ ※
「……な……なんなんだよ!?」
アレクは自らが剣を突きつけた相手を見る。
隠す何かがあるとでも言うように、フードを真っ先に押さえた。
「何でいきなり、こんなことするんだよ!?」
なおも叫ぶフードを被った男に、追いついたバルが答えた。
「お前とあともう一人いただろ。おれたちが王太子らと対峙してたときから、ここで見てたよな」
「だから、なんだよ? 面白そうな事してると思って、見てただけじゃないか!」
アレクがため息をついた。
「俺も人のことを言えないが、お前、頭悪いだろう。その後でかい魔物が現れたっていうのに、面白がって見物の続きか? 普通なら逃げるはずだ」
「そんなの、どうしようと勝手だろ!?」
「勝手と言われりゃ、そうだけどな」
逆らわず同意する。
バルが視線を動かした。
仲間たちの他、ルイス公爵たちも来ていた。
「ルイス公爵が来てくれたのは、ありがてぇな。……王太子とベネット公爵が縄に繋げられて引っ張られてるが、どういう状況だ?」
「さあな。だが、無事とは悪運強いな」
罪人のように引っ張られる王太子とベネット公爵が目に入る。
魔物が孵化したとき、一番近くにいたというのに無事とは恐れ入る。
「……アレクシス殿、これはどういった状態で? その、彼? ですか? 一体何を?」
ルイス公爵が、アレクが剣を突きつけている相手を見て、疑問を呈する。
アレクはそれには答えず、さらにフードの男に剣を突きつける。
「だから、何するんだよ! オレが何したのか答えろよ!」
喚くフードの男に、反応したのは王太子とベネット公爵だった。
「その声! 貴様、あの時の奴の一人か!?」
「一体どういうことだ!? 何もせぬのに、勝手に孵化したんだぞ! 我々に不良品を押しつけたのか!」
ルイス公爵たちに、驚愕が走る。
アレクとバルは、頷いた。
「やはりそうか。王太子に接触していた得体の知れない奴っていうのが、お前だな」
「もう一人いるはずだがな。戦い終わってみれば、気配が一つ減ってやがった」
「バル。こいつのフード、取れ」
「……な!」
男が反応するが、遅かった。バルがサッとフードを取ってしまう。
現れたのは、白い肌、白い髪、長く尖った耳。
たくさんの息を呑む音が聞こえた。
「――魔族!?」
叫んだのは、ユーリだった。
魔物を二体倒したと思ったら、いきなり移動を始めた。
後を追うと決めて、縄に繋いだ二人を見る。
どうしようかと思っていたら、騎士団員の二人が元気よく言った。
「自分たちが!」
「責任を持って、引っ張っていきます!」
「…………そうか。頼んだ」
ニコニコ楽しそうだ。そこを突っ込むのは野暮というものだろう。
勇者たちの後を追って、走り出した。
※ ※ ※
「……な……なんなんだよ!?」
アレクは自らが剣を突きつけた相手を見る。
隠す何かがあるとでも言うように、フードを真っ先に押さえた。
「何でいきなり、こんなことするんだよ!?」
なおも叫ぶフードを被った男に、追いついたバルが答えた。
「お前とあともう一人いただろ。おれたちが王太子らと対峙してたときから、ここで見てたよな」
「だから、なんだよ? 面白そうな事してると思って、見てただけじゃないか!」
アレクがため息をついた。
「俺も人のことを言えないが、お前、頭悪いだろう。その後でかい魔物が現れたっていうのに、面白がって見物の続きか? 普通なら逃げるはずだ」
「そんなの、どうしようと勝手だろ!?」
「勝手と言われりゃ、そうだけどな」
逆らわず同意する。
バルが視線を動かした。
仲間たちの他、ルイス公爵たちも来ていた。
「ルイス公爵が来てくれたのは、ありがてぇな。……王太子とベネット公爵が縄に繋げられて引っ張られてるが、どういう状況だ?」
「さあな。だが、無事とは悪運強いな」
罪人のように引っ張られる王太子とベネット公爵が目に入る。
魔物が孵化したとき、一番近くにいたというのに無事とは恐れ入る。
「……アレクシス殿、これはどういった状態で? その、彼? ですか? 一体何を?」
ルイス公爵が、アレクが剣を突きつけている相手を見て、疑問を呈する。
アレクはそれには答えず、さらにフードの男に剣を突きつける。
「だから、何するんだよ! オレが何したのか答えろよ!」
喚くフードの男に、反応したのは王太子とベネット公爵だった。
「その声! 貴様、あの時の奴の一人か!?」
「一体どういうことだ!? 何もせぬのに、勝手に孵化したんだぞ! 我々に不良品を押しつけたのか!」
ルイス公爵たちに、驚愕が走る。
アレクとバルは、頷いた。
「やはりそうか。王太子に接触していた得体の知れない奴っていうのが、お前だな」
「もう一人いるはずだがな。戦い終わってみれば、気配が一つ減ってやがった」
「バル。こいつのフード、取れ」
「……な!」
男が反応するが、遅かった。バルがサッとフードを取ってしまう。
現れたのは、白い肌、白い髪、長く尖った耳。
たくさんの息を呑む音が聞こえた。
「――魔族!?」
叫んだのは、ユーリだった。
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