転生ヒロインと人魔大戦物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~

田尾風香

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第四章 モントルビアの王宮

VSカークス④

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リィカは集中する。
自分の中の魔力を感じる。手の平に集めていく。
(――今!!)
集まった魔力を、一気に放出する。

リィカの魔法が大きく威力を増して、カークスの炎を押し返した。
「――グワァッ!?」
カークスが慌てたように声を出した瞬間、押し返された炎とリィカの魔法がカークスに命中し、大爆発が起こった。

(あとは、お願い)
混成魔法は、魔力の消費が激しい。
もうほとんど魔力は残っていなかった。



泰基と暁斗が走る。
爆発が収まって姿を現わしたカークスは、控えめに言っても大ダメージだった。
中央と左の顔は完全に焼け爛れている。肩から胸にかけても、大きくえぐれた様な痕がある。
だが、それでもカークスは立っていた。

走ってくる泰基と暁斗を睨み付ける。
「グワァ!!」
叫びと共に、炎の壁が現れる。

泰基が魔法を唱えた。
「《水の付与アクア・エンチャント》!」
さらに、その上に魔力を纏わせていく。

アレクとバルに、違う属性を組み合わせた、エンチャントと剣技の組み合わせを見せてもらった事がある。
でも、違う属性でなければいけないなど、ないはずだ。
使うのは、水の剣技。

「【旗魚剣尖破きぎょけんせんは】!」
水の付与アクア・エンチャント》の青い魔力に、水の剣技の魔力が重なり、さらに深い蒼に剣が染まる。

研ぎ澄まされた突きの剣技が、炎の壁とぶつかる。
一瞬の拮抗。しかし、剣技が炎の壁を貫き、軽い爆発と共に消え去った。
「――暁斗!!」



「《土の付与アース・エンチャント》!」
炎の壁が現れて、暁斗が唱えたのは土のエンチャント。
切れ味はほとんどない、殴るという方が近い、エンチャント。

だが、そこに水の魔力を付与していく。
剣技とは違う。どちらかと言えば、水のエンチャントに近い。
質量がさらに増し、土のエンチャントが鋭く尖る。

――炎の壁が、破れた。
「――暁斗!!」
父の声を聞き、水の魔力を纏わせる。
カークスの懐に飛び込んだ。

「【天竜動斬破てんりゅうどうざんは】!」
命中の瞬間、水の剣技を発動させる。直接攻撃の剣技だ
リィカの魔法によってえぐれた箇所に、大きな穴が空いた。

「……グ…………ワ……?」
カークスの、残った右の顔の目から光が消える。
大きな音を立てて、後ろに倒れた。



「……たお、したの?」
聖剣を地面に立てて、荒い呼吸をしながら暁斗は誰ともなくつぶやいた。
返事は返ってきた。

「ああ、倒した。――良くやったな、暁斗」
泰基が、暁斗の頭をポンポン叩く。
慣れ親しんだ、父の手だった。


※ ※ ※


暁斗がホッとして地面に座り込もうとした所で、アレクの厳しい声が響いた。
「――タイキさん、《結界バリア》解いてくれ」
「……あ、ああ。………?」
そういえば《結界バリア》を張ったんだったな、と思い出した泰基だが、アレクの険しい顔の意味が分からない。
見れば、バルが太めの、先の尖った木の枝を持っている。やはり顔が険しい。
その二人を、ユーリが怪訝そうに見ている。
分からないながらも、言われた通りに《結界バリア》を解除する。
その瞬間。
バルが持っていた木の枝を、鋭く投げた。
同時に、同じ方向にアレクが一気に走り、木の枝を投げたバルも後を追って走り出す。
残された四人も、訳が分からないまま、とりあえず後を追った。


※ ※ ※


「なぁんだ。カークスも倒されちゃったじゃないか」
フードを被った男は、独りごちる。

「つまんない。――でも、勇者ヘトヘトだなぁ。勇者殺すだけでも、大金星だよねぇ。よぉし、決ぃめた…………って!?」
何かが自分に飛んできた。
その先が尖っていることだけは分かる。

慌てて躱す。
が、さらに、勇者パーティーの男が来るのが見えた。
「………くそっ」
逃げようとしたが、遅かった。

剣の腹で殴られ、地面に倒れ込む。
フードが外れないように押さえた所で、喉元に剣を突きつけられた。
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