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第四章 モントルビアの王宮
使用禁止の牢
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リィカは、改めて王太子のことを話し始めた。
ほんの少し手が震えるが、話すのは普通にできた。
王太子が牢に来たのは、リィカが入れられて少し経ってから。
おそらく昼食だろう食事を配り終えて、間もなくだった。
「ちょっと待って。おそらくって何? 明かり取りの窓があるんだ。その程度は分かるだろう?」
話し始めてすぐ、ジェラードからストップが掛かる。
リィカは、隠し事はムリだと改めて思った。ちょっとした言い回しで、簡単にばれてしまう。
「わたしのいた牢は、特別らしいんです。他の牢にはある窓も、わたしが入れられた所だけはないって、牢番の人に説明されました」
別に頼んだわけじゃないけど、と心の中だけで付け加える。
「……明かり取りのない牢? 父上、そこは……」
「ああ。使用禁止になっているはずの牢だ。作り上、窓を取る事ができず、さらに風が通るせいであの牢は夜間かなり冷える。特にその寒さのせいで、あの牢に入れられた者は衰弱する者が多く出て……」
言いかけたルイス公爵が、途中で言葉を切る。
リィカは、やっぱりあの寒い時間は夜かと思っただけだ。というか、使用禁止とは何だ。
それにしても、窓がないという話から寒かったことまでバレてしまった。
「夜……だったと思いますけど、寒かったです。わたしが寒がっていた所を、牢番さんが面白そうに声をかけてきました。特段冷えるのに、そこの牢だけ毛布も何も置かれないんだと言われました」
どうせばれるなら全部バラしちゃえ、とリィカは開き直る。
アレクの回された手に力が入る。
「……それで寒くて、夜眠れなかったのか」
頷く。
「あの牢の中で毛布もなしに一晩? あり得ない。あいつら、何をやってるんだ!」
ジェラードが吐き捨てる。
「その上で、一切食事も与えられなかった、だったね? 君は、その理由を知っている?」
ためらったが、リィカは頷いた。
ここまで来て、躊躇してもしょうがない。
「……あの王太子の趣味というか、性癖って言えばいいんでしょうか。女を犯すとき、一切の飲み食いを許さない。弱った女を犯す時が最高のひとときなのだと、そう言っていました」
ルイス公爵が目を見開くのが分かった。
何かを言おうと口を動かしかけたが、リィカは言葉を続けた。
「あと、多分みんなが旅に出発するのを引き留められたと思うんですけど、それはそのせいです。わたしが弱るまでの時間が必要だったから……」
「分かった。……すまない。女性に言わせていい言葉じゃなかった」
ルイス公爵が頭を下げたのに、リィカが慌てる。元気なら手や首を横に振りまくっていただろう。
「……い、いえ、わたしは王太子が言ったことをそのまま伝えただけです。そんな、気にして頂かなくて大丈夫なので」
ルイス公爵は、一つ頷いた。
「君に頂いた情報は、必ず活用させてもらう。――屋敷に到着する。食事を用意するから、食べてくれ。本来ならすぐにでも休んで欲しいが、もう少しだけ話を聞かせてもらっていいだろうか?」
まだあるのか、と思ったが、頷いた。
ほんの少し手が震えるが、話すのは普通にできた。
王太子が牢に来たのは、リィカが入れられて少し経ってから。
おそらく昼食だろう食事を配り終えて、間もなくだった。
「ちょっと待って。おそらくって何? 明かり取りの窓があるんだ。その程度は分かるだろう?」
話し始めてすぐ、ジェラードからストップが掛かる。
リィカは、隠し事はムリだと改めて思った。ちょっとした言い回しで、簡単にばれてしまう。
「わたしのいた牢は、特別らしいんです。他の牢にはある窓も、わたしが入れられた所だけはないって、牢番の人に説明されました」
別に頼んだわけじゃないけど、と心の中だけで付け加える。
「……明かり取りのない牢? 父上、そこは……」
「ああ。使用禁止になっているはずの牢だ。作り上、窓を取る事ができず、さらに風が通るせいであの牢は夜間かなり冷える。特にその寒さのせいで、あの牢に入れられた者は衰弱する者が多く出て……」
言いかけたルイス公爵が、途中で言葉を切る。
リィカは、やっぱりあの寒い時間は夜かと思っただけだ。というか、使用禁止とは何だ。
それにしても、窓がないという話から寒かったことまでバレてしまった。
「夜……だったと思いますけど、寒かったです。わたしが寒がっていた所を、牢番さんが面白そうに声をかけてきました。特段冷えるのに、そこの牢だけ毛布も何も置かれないんだと言われました」
どうせばれるなら全部バラしちゃえ、とリィカは開き直る。
アレクの回された手に力が入る。
「……それで寒くて、夜眠れなかったのか」
頷く。
「あの牢の中で毛布もなしに一晩? あり得ない。あいつら、何をやってるんだ!」
ジェラードが吐き捨てる。
「その上で、一切食事も与えられなかった、だったね? 君は、その理由を知っている?」
ためらったが、リィカは頷いた。
ここまで来て、躊躇してもしょうがない。
「……あの王太子の趣味というか、性癖って言えばいいんでしょうか。女を犯すとき、一切の飲み食いを許さない。弱った女を犯す時が最高のひとときなのだと、そう言っていました」
ルイス公爵が目を見開くのが分かった。
何かを言おうと口を動かしかけたが、リィカは言葉を続けた。
「あと、多分みんなが旅に出発するのを引き留められたと思うんですけど、それはそのせいです。わたしが弱るまでの時間が必要だったから……」
「分かった。……すまない。女性に言わせていい言葉じゃなかった」
ルイス公爵が頭を下げたのに、リィカが慌てる。元気なら手や首を横に振りまくっていただろう。
「……い、いえ、わたしは王太子が言ったことをそのまま伝えただけです。そんな、気にして頂かなくて大丈夫なので」
ルイス公爵は、一つ頷いた。
「君に頂いた情報は、必ず活用させてもらう。――屋敷に到着する。食事を用意するから、食べてくれ。本来ならすぐにでも休んで欲しいが、もう少しだけ話を聞かせてもらっていいだろうか?」
まだあるのか、と思ったが、頷いた。
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