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第四章 モントルビアの王宮
勉強嫌い同士
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「では、これで頼む」
渡されたマルティンは、泰基の書いた文字を見て、目を見張る。
「なるほど。建国王アベルの書かれていた文字と、よく似ていますね。手元に彼の方が書かれたものが、何もないのが残念です」
「……そうか。もしかして、タイキさんたちは読めるのか」
「いつか話をしていた、毎日の記録って奴か? でも、もう見ることもできないって話じゃなかったか?」
確か、あれはオリーが言っていたんだよな、と思いながら、泰基が問いかける。
あの時、誰も否定も何もしなかったはずだ。
そう思いながらアレクを見れば、笑いそうな顔になっていた。
「あの時は、言うと面倒な事になりそうだから言わなかったんだ。アベルが書いた記録を、写したものならあるんだよ。ついでに言えば、学園で使っている教科書にも、その一部が載せられているしな」
「アルカトルにいるときに気付けば良かったですね。そうすれば、内容を教えてもらうこともできたのに」
もしもこの場にリィカがいたら、何が何でもやめさせようとしただろう事を、心底残念というように、ユーリがつぶやいた。
泰基が首をかしげた。
「残っているなら、解読しようとか思わなかったのか?」
「やってますが、思うように進んでないようなんです」
へえ、と意外そうに暁斗が言った。
「日本語って分かりやすい、みたいな話を聞いたことある気がするけど」
暁斗の言葉に、思わず泰基がずっこけたくなる。
「お前、一体どこでそんな事を聞いた? 日本語、難しいと言われている言語の一つだぞ」
「そう? でも、テレビなんかでペラペラしゃべってる人、結構多くない?」
「この場合、話す方じゃなくて読み書きだろ。平仮名があって、カタカナがあって、漢字があるんだ。特に、漢字なんか何も知らない人が読もうとしたって、読めるわけない」
暁斗は、遠い目をした。
漢字の読み書きのテストを思い出してしまう。
「……そうだね。日本人だって苦労してるのに」
「お前はもっと勉強しろと言いたいけどな」
「……この世界に来て何がいいって、勉強しなくていいことだと思うんだ」
「……お前がますますバカになっていくみたいで、心配だよ」
はあ、と顔に手をやる泰基に、マルティンが同情の視線を向ける。
「どこの世界でも、親の悩みは似るものですね」
アレクは、「おお!」となぜか感動している。
「そうだよな、アキト。お前もそう思うよな。勉強なんか、しなくていいよな」
「うん、そう思う。勉強しなくても問題ないよ」
手を取ってうなずき合っている二人を、バルとユーリは呆れて、泰基とマルティンは、据わった目で見ていた。
渡されたマルティンは、泰基の書いた文字を見て、目を見張る。
「なるほど。建国王アベルの書かれていた文字と、よく似ていますね。手元に彼の方が書かれたものが、何もないのが残念です」
「……そうか。もしかして、タイキさんたちは読めるのか」
「いつか話をしていた、毎日の記録って奴か? でも、もう見ることもできないって話じゃなかったか?」
確か、あれはオリーが言っていたんだよな、と思いながら、泰基が問いかける。
あの時、誰も否定も何もしなかったはずだ。
そう思いながらアレクを見れば、笑いそうな顔になっていた。
「あの時は、言うと面倒な事になりそうだから言わなかったんだ。アベルが書いた記録を、写したものならあるんだよ。ついでに言えば、学園で使っている教科書にも、その一部が載せられているしな」
「アルカトルにいるときに気付けば良かったですね。そうすれば、内容を教えてもらうこともできたのに」
もしもこの場にリィカがいたら、何が何でもやめさせようとしただろう事を、心底残念というように、ユーリがつぶやいた。
泰基が首をかしげた。
「残っているなら、解読しようとか思わなかったのか?」
「やってますが、思うように進んでないようなんです」
へえ、と意外そうに暁斗が言った。
「日本語って分かりやすい、みたいな話を聞いたことある気がするけど」
暁斗の言葉に、思わず泰基がずっこけたくなる。
「お前、一体どこでそんな事を聞いた? 日本語、難しいと言われている言語の一つだぞ」
「そう? でも、テレビなんかでペラペラしゃべってる人、結構多くない?」
「この場合、話す方じゃなくて読み書きだろ。平仮名があって、カタカナがあって、漢字があるんだ。特に、漢字なんか何も知らない人が読もうとしたって、読めるわけない」
暁斗は、遠い目をした。
漢字の読み書きのテストを思い出してしまう。
「……そうだね。日本人だって苦労してるのに」
「お前はもっと勉強しろと言いたいけどな」
「……この世界に来て何がいいって、勉強しなくていいことだと思うんだ」
「……お前がますますバカになっていくみたいで、心配だよ」
はあ、と顔に手をやる泰基に、マルティンが同情の視線を向ける。
「どこの世界でも、親の悩みは似るものですね」
アレクは、「おお!」となぜか感動している。
「そうだよな、アキト。お前もそう思うよな。勉強なんか、しなくていいよな」
「うん、そう思う。勉強しなくても問題ないよ」
手を取ってうなずき合っている二人を、バルとユーリは呆れて、泰基とマルティンは、据わった目で見ていた。
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