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第四章 モントルビアの王宮
謁見①
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「久しいな、アレクシス殿」
モントルビアの王宮、謁見の間にて、アレクたち五人は、モントルビア国王、ボードウィン・フォン・モントルビアと対面していた。
「ご無沙汰しております、ボードウィン国王陛下。急な来訪にも関わらず、謁見の場を整えて下さり、恐悦至極に存じます」
対応するアレクは、普段からは考えられないほどに、固い声と口調だった。
「うむ」
鷹揚に頷いた国王は、その視線を、暁斗と泰基に向ける。
ずっとベネット公爵が張り付いていたため、個人的に話す時間はまったくなかった。
召喚直後の時の、アルカトルの王宮で見せたような態度を取られたら、フォローできないと思っていたアレクだが、二人は自分たちに合わせて跪いてくれていた。
申し訳ないと思いつつ、感謝もしながら、アレクは口を開く。
「国王陛下。勇者様お二方のご紹介をさせて頂きます。まずは……」
本来であれば、聖剣を持つ暁斗を先に紹介するべきだろう。
だが、あえてアレクは先に泰基を示す。
「まずは、タイキ様。水と光という、二つの属性を持つお方です」
紹介されて、泰基は国王に頭を下げる。
「お初にお目に掛かります。泰基と申します。お目にかかれて光栄です」
無難な挨拶を返してくれる泰基に、アレクはホッとする。
(アキト、挨拶はタイキさんの真似してくれよ)
心の中だけで語りかけて、続けて口を開く。
「そして、タイキ様のご子息の、アキト様。聖剣を持つ勇者様です」
その言葉に、周りが、「おおっ」と声を出す。
暁斗がぎこちなく頭を下げる。
「暁斗、です。……お目にかかれて光栄です」
ギリギリ及第点だろう、という挨拶だが、文句を言われるほどではないだろう。
国王は頷く。
「うむ。勇者様がお二人も召喚されたとは、大変めでたい。魔王の討伐、頼みましたぞ」
上からの物言いに、暁斗は明らかに不満そうな顔を浮かべるが、口は開かなかった。
「――さて、残念な知らせがある。ベネット公爵から聞いたやも知れぬが」
アレクは頷く。
「北の三国が魔王軍に滅ぼされたことは伺いました。我々も、なるべく早く北へ向かいます」
「……うむ」
アレクの言葉に、なぜか国王は躊躇ったような、歓迎できないような表情を浮かべる。
それに構わず、アレクは要件を済ませることにした。
「実は、我々がこちらに伺いましたのは、どうしてもご報告せねばならない要件があったからです。――国王陛下、エブラという村、アルカトル王国から国境を越えた最初の村に、魔族が二体、入り込んでおりました」
謁見の間が、ざわついた。
「――何だと!? どういうことだ、それは!? 真なのか?」
「本当です。村に入った所で攻撃されました。二体とも討ち果たしましたが、詳しい目的は不明です」
「……ふむ。しかし、魔王軍は北の三国を滅ぼしたばかり。こんな所に魔族がいるとは信じられん。アレクシス殿の見間違いでは?」
国王は懐疑的な視線を向けた後、最後は嘲るかのように笑う。周囲からもそんな国王に合わせるように、嘲笑が起こる。
(――くそっ!)
嫌になる。
やってられるか、勝手にしろ、と言いたくなるが、グッと堪える。
モントルビアがどうなろうと知った事ではないが、アルカトルを始め、他の国にまで影響が出てしまう。
何とか気持ちを落ち着けようとした所で、
「国王陛下。発言、よろしいでしょうか」
バルが口を開いた。
※ ※ ※
ガシャーン
大きな音を立てて、扉が閉められる。
リィカの目の前に見えるのは、鉄格子。
両腕を後ろに拘束されたまま、リィカは牢屋に入れられていた。
(――さいあくだ)
本当に色々な事が、最低だった。
モントルビアの王宮、謁見の間にて、アレクたち五人は、モントルビア国王、ボードウィン・フォン・モントルビアと対面していた。
「ご無沙汰しております、ボードウィン国王陛下。急な来訪にも関わらず、謁見の場を整えて下さり、恐悦至極に存じます」
対応するアレクは、普段からは考えられないほどに、固い声と口調だった。
「うむ」
鷹揚に頷いた国王は、その視線を、暁斗と泰基に向ける。
ずっとベネット公爵が張り付いていたため、個人的に話す時間はまったくなかった。
召喚直後の時の、アルカトルの王宮で見せたような態度を取られたら、フォローできないと思っていたアレクだが、二人は自分たちに合わせて跪いてくれていた。
申し訳ないと思いつつ、感謝もしながら、アレクは口を開く。
「国王陛下。勇者様お二方のご紹介をさせて頂きます。まずは……」
本来であれば、聖剣を持つ暁斗を先に紹介するべきだろう。
だが、あえてアレクは先に泰基を示す。
「まずは、タイキ様。水と光という、二つの属性を持つお方です」
紹介されて、泰基は国王に頭を下げる。
「お初にお目に掛かります。泰基と申します。お目にかかれて光栄です」
無難な挨拶を返してくれる泰基に、アレクはホッとする。
(アキト、挨拶はタイキさんの真似してくれよ)
心の中だけで語りかけて、続けて口を開く。
「そして、タイキ様のご子息の、アキト様。聖剣を持つ勇者様です」
その言葉に、周りが、「おおっ」と声を出す。
暁斗がぎこちなく頭を下げる。
「暁斗、です。……お目にかかれて光栄です」
ギリギリ及第点だろう、という挨拶だが、文句を言われるほどではないだろう。
国王は頷く。
「うむ。勇者様がお二人も召喚されたとは、大変めでたい。魔王の討伐、頼みましたぞ」
上からの物言いに、暁斗は明らかに不満そうな顔を浮かべるが、口は開かなかった。
「――さて、残念な知らせがある。ベネット公爵から聞いたやも知れぬが」
アレクは頷く。
「北の三国が魔王軍に滅ぼされたことは伺いました。我々も、なるべく早く北へ向かいます」
「……うむ」
アレクの言葉に、なぜか国王は躊躇ったような、歓迎できないような表情を浮かべる。
それに構わず、アレクは要件を済ませることにした。
「実は、我々がこちらに伺いましたのは、どうしてもご報告せねばならない要件があったからです。――国王陛下、エブラという村、アルカトル王国から国境を越えた最初の村に、魔族が二体、入り込んでおりました」
謁見の間が、ざわついた。
「――何だと!? どういうことだ、それは!? 真なのか?」
「本当です。村に入った所で攻撃されました。二体とも討ち果たしましたが、詳しい目的は不明です」
「……ふむ。しかし、魔王軍は北の三国を滅ぼしたばかり。こんな所に魔族がいるとは信じられん。アレクシス殿の見間違いでは?」
国王は懐疑的な視線を向けた後、最後は嘲るかのように笑う。周囲からもそんな国王に合わせるように、嘲笑が起こる。
(――くそっ!)
嫌になる。
やってられるか、勝手にしろ、と言いたくなるが、グッと堪える。
モントルビアがどうなろうと知った事ではないが、アルカトルを始め、他の国にまで影響が出てしまう。
何とか気持ちを落ち着けようとした所で、
「国王陛下。発言、よろしいでしょうか」
バルが口を開いた。
※ ※ ※
ガシャーン
大きな音を立てて、扉が閉められる。
リィカの目の前に見えるのは、鉄格子。
両腕を後ろに拘束されたまま、リィカは牢屋に入れられていた。
(――さいあくだ)
本当に色々な事が、最低だった。
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