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第三章 魔道具を作ろう

頑張った

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アレクは、ムスッとして、その光景を眺めていた。
視線の先では、暁斗にリィカが付き添って、魔道具作りを手伝っている。

暁斗が右手に魔石を持っていて、向かい合ったリィカの左手が、暁斗の右手の下に添えられていて、二人で集中していた。


※ ※ ※


(やれやれ)
泰基は、いったん魔道具作りを中断していた。
全く、集中できない。

不機嫌を隠そうともしないアレクと、明らかに面白がっているサルマが目に入ってしまって、自分も暁斗の方に顔を向ける。

突然、暁斗がリィカに魔道具作りを教えて、と言い出したのは、驚いた。
リィカも戸惑って、自分でいいのか、と聞いていたが、暁斗がはっきり言った。
「リィカに教えて欲しい」と。

それで、リィカも頷いたのだが、側でそれを見ていた泰基が戸惑った。
暁斗が、リィカに甘えているように見えた。

「――ぐぬぬぬぬぬぬぬ……」
「ほら暁斗。もっと集中して」
「あー、ムリ。ちょっとタンマ」
「もう、しょうがないんだから」

ギブアップした暁斗に、リィカは腰に手を当てて怒っている。
しかし、暁斗は嬉しそうにしている。

「暁斗、笑ってないで? あと少しなんだから、頑張って」
「うん、頑張る。……だから、リィカ、成功したら一つお願いが」

今度は緊張した顔をして、リィカの耳元で暁斗が何かをボソボソしゃべる。
アレクが「あー!」と叫んでいて、うるさい。
リィカが「えっ?」と小さくつぶやくのが聞こえた。

「……ダメ……かな?」
暁斗は、少し顔を赤くしていた。
リィカは、かなり戸惑った顔をしている。

「……えっと……いいけど……わたし? 泰基じゃなくて?」
「うん。リィカがいい」
「……分かった。じゃあ、成功したらね」

そして、また二人で集中を始めた。
一体暁斗は何を言ったんだ、と泰基が思っていると、アレクが近づいてきた。

「(タイキさん、アキトの奴、何をリィカに言ったんだよ?)」
まさに、さっき自分が思ったことと同じ事を聞かれた。

「(さあな。まあ、成功すれば分かるんじゃないか?)」
「(それで手遅れになったら、どうするんだよ!?)」
「(手遅れって、何がだ。リィカの反応見る限りじゃ、お前が心配するような事はないと思うぞ)」

リィカは戸惑っていただけだ。
アレクが心配するような内容だったら、リィカは赤くなっていただろうと思う。

「(本当か? 本当だな?)」
しつこく絡んでくるアレクを、横目でジトッと見てから、さらに考える。

暁斗の頼み事に対して、リィカは自分の名前を出した。
つまり、それは本来なら、自分が頼まれるべき事……?
何となく、心がざわついた気がした。



「――できた……!」
暁斗が喜びの声をあげたのは、それから、かなり時間が経ってからだ。

一度、オークと遭遇したが、数もたいしたことないからと言って、集中したままの二人を抜きで、倒している。
アレクの不機嫌度は、MAXだ。

「おめでとう、暁斗。これで第一段階クリアだね」

リィカの言うように、暁斗が今できたのは、魔石の加工の第一段階だ。
属性を付けることもできなかったので、普通に魔力で魔石の形を整えただけ。
どういう形にするかは迷ったが、とりあえずイメージしやすい円球だ。

「……第一段階、かぁ。でもこれ以上、難しいかも」

ここから、魔法のバッグにしていくのに、属性を付与していくことになる。
けれど、ムリかな、と暁斗は思う。無詠唱は簡単に使えたのに、こっちはまるでピンとこない。

第一段階の成功も、リィカの助力がなかったら、絶対にムリだった。

「そうだね。何というか、暁斗は向いてないのかな。わたしは、次は風の手紙エア・レターを作りたいけど、それが終わったら、魔法のバッグ作り、挑戦してみて良い?」

「うん。リィカだったら、絶対できるよ」
「ありがと、頑張るね。――ええと、じゃあ、どうしよう?」
「オレ、頑張ったよ。リィカが助けてくれなかったらできなかったけど、でも頑張った」

迷いを見せるリィカに、暁斗は顔を緊張させながらも、真剣にリィカを見つめる。
そんな暁斗を見て、リィカは仄かに笑う。

「そうだね。頑張ったね」
言って、リィカは手を伸ばした。
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