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第三章 魔道具を作ろう

魔力病の魔道具

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「……どうやって?」と、リィカ。
「……なんで?」と、暁斗。

バルやユーリ、泰基も、何故、という顔をしている。
サルマは、手をフラフラ振る。

「なにも強制する気はないよ。リィカちゃんが魔法の練習してたみたいに、やることもあるだろうし。ただ、興味持ってくれてるみたいだし、どうかと思ってさ」
なおも訝しげな顔の面々に向かって、言葉を続ける。

「他にももちろん、商品の魔道具はあるけどさ。さっき言ったように開発中のものも多い。ワタシらだけだと限界があんのさ。だけど、ただ詠唱して魔法を使うしかできない連中に、魔道具は作れない。そこに、無詠唱で魔法を使うあんたらが飛び込んできたってわけだ」

「……作れないと言うことはないでしょう? 実際、魔力病の魔道具を作った神官がいるんです。作ったのは、普通の神官ですよ」
ユーリが反論するが、それに返してきたのは、フェイだった。

「残念だけど違う。元々、魔石は魔力を吸収する性質があるから、極端な話、魔石を持ってれば余分な魔力は吸収される。それだと、ただ魔石に魔力をため込むだけで、外に出されないから、その処置が必要なだけ」

あとは分かるでしょう、と言いたげに口を閉じるフェイに、ユーリは、降参とでも言うように、両手を上に上げた。


「どういうことだ?」
聞いたのはバルだが、リィカに暁斗、泰基も不思議そうな顔をしている。

「魔物を倒してそのままの魔石に、魔法を封じようとしてもできません。浄化して、魔物の名残を消さなくてはいけません。でも、完全な浄化はしません。魔力を吸収してため込む性質も、魔物だった頃の名残ですから」

魔石の研究はだいぶ昔にされていて、今の時代は、浄化を行う神官にとっては一般的な知識だ。
どれだけの日数と時間をかければ、どのくらい魔石が浄化されるのか。完全にマニュアル化されている。

浄化していって、最初に消えるのが、魔物の強い怨念とも言うべきもの。これがあるうちに、魔法を封じようとしても、弾かれてしまう。
世間に出回っている魔石は、最初の浄化がされた状態の魔石だ。

そこからさらに浄化をかけていくと、魔力をため込む性質が消えて、最後に魔力を吸収する性質が消える。そこまで消えると魔石はただの石になる。


「……んじゃあ、魔力病の魔道具って」

「出来上がるまで一週間かかったと言っていたでしょう。世間に出回っている状態の魔石から、ため込む性質が消えるまで浄化するのに、3~4日程度掛かります。そこから、おそらく問題なく作動するかの確認と、アクセサリー化する日数を含めれば、一週間程度になるでしょうね」

確かにそれなら、無詠唱など使う必要もなく作ることはできる。
魔道具ではなく、魔石だと言ってしまっても、決して間違いではないレベルの話だ。

「だったら、できるまでの一週間、何個も魔石持たせときゃ良かったんじゃねぇの?」
思わず、バルはそう言ってしまう。

魔力病で倒れた、アレクの兄である王太子の婚約者。

当時、毒殺未遂の後遺症で、婚約者の作った食事しか食べる事のできなかった王太子が、魔道具が出来上がるまでの一週間、吐きそうになりながらも他の人が作った食事を頑張って食べようとしていた。

その様子を目撃してしまったらしいアレクが、自分を責めて、暗い顔をしていたのを思い出してしまう。

「……本当にそうですよね。魔力病には魔道具が必要だ、という思い込みがありますから、誰も気付かないんでしょうね」
ユーリの頭によぎるのも、同じく、アレクの暗い顔だ。

どうやって魔道具を作っているかなど、ユーリも知らなかった。
知っていれば、婚約者の家は、公爵家だ。魔石を大量に用意するなど、簡単だっただろうに。
知らず、ため息が零れた。
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