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第二章 旅の始まりと、初めての戦闘
帰還の手がかり?
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――勇者を、元の世界に戻すための研究をしていた。
そう言われて、リィカがよほど変な顔をしていたのだろう。
フロイドが、笑って説明をしてくれた。
「今もまさにそうですが、250年前も魔王が誕生したときに勇者様が召喚されました。それが、シゲキ・カトウ様です。
勇者様は、神の国から召喚されている、と一般には言われております。しかし、実のところ、勇者様は我々と同じように、普通に人の世界で暮らしており、意味も分からないままにこの世界に召喚された、というのが真実だそうです。
シゲキ様と一緒に旅をした神官が、魔王討伐後に、シゲキ様を何としても元の世界に戻したい、とここで研究を始めました」
手がかりはあった。
旅の途中で手に入れた魔方陣。
かつて「森の魔女」と呼ばれた魔法使いが作り出したと言われるその魔方陣は、異世界から必要な物を取り寄せるために作られた魔方陣だという。
「……必要な物を取り寄せる?」
「必要な物がある世界に人を送り込んで、それを手に入れたら戻ってこられる陣、と言えばいいのでしょうか」
かつて、病気が流行したが、どうしても治す手段が見つからない。
その時、人々が頼った「森の魔女」が、その魔方陣を作り出した。
病気を治す薬がある世界に行って、薬を持って帰ってこられる魔方陣を。
薬を手に入れて、流行病を根絶させることには成功したが、その魔方陣は危険視された。
悪用するために使用されれば、大変な事になる。
そのため、その魔方陣は闇に葬られた。
その魔方陣を、神官が見つけ出した。
そして、異世界に人を送れる部分を残し、返って来られる機能は消えるように魔方陣を改良し、その陣をこの教会の地下に描いた。
そして、いざ勇者を帰還させようとしたが、魔方陣は発動しなかった。
「――何でですか!?」
思わず身を乗り出すリィカに、フロイドは首を横に振った。
「なぜかは分かりません。それ以降も神官は研究を続けましたが、何が原因なのかは分からないままだったそうです。そのうち勇者様がお亡くなりになり、神官も失意のままに亡くなりました」
聞いて落ち込むリィカを、フロイドは不思議そうに見る。
「この教会は、その神官の遺言によって、残されています。陣は発動しなかったけれど、いつか誰かが完成させてくれるかもしれない。魔王討伐を成し遂げてくれた勇者様を、元の世界に帰してあげられる日が来るかもしれない。だから、このまま残して欲しい、と」
そこでいったんフロイドは口を閉じてから、続ける。
「……実際の所、もういいんじゃないか、という話はありますね。この地に通うだけでも大変なのは確かです。他の誰も来たがりませんが……せめて私がいる間だけでも、その神官の願いを叶えたいのですよ」
泰基と暁斗が召喚されたときのやり取りは、リィカも聞いている。
帰してあげられるなら、帰してあげたい。
「……その魔方陣、見せてもらってもいいですか?」
「ええ、どうぞ」
教会の地下、かなり広い場所に、その陣はあった。
(うん。さっぱり分かんない)
色々と複雑な模様やら線やらが書かれているだけだ。
そもそも、魔方陣自体が一般に知られているものではないのだ。
魔方陣とは何なんだ、という所から勉強する必要があるかもしれない。
「これを書き写したいんですけど、何か書くものを頂けませんか?」
「写すのですか!?」
リィカの言葉に、フロイドはかなり驚いたようだ。
しかし、リィカの真剣な顔に何かを感じたように、考え込む。
「……写さなくても、確か紙に記されたものがあったはずです。ちょっと探してみますよ」
「でも、それだと迷惑が……」
「誰も来ないから、暇なんですよ。気にしないで下さい。――その前に、もう一度アレクさんの回復ですね。リィカさんも一度休んで下さい。ここまで大分無理をしてきているでしょう? 休んでいる間に、探しておきます」
リィカは、少し躊躇ったが、確かに身体はひどくだるい。
素直に休む事にした。
コンコン
「――リィカさん、すいません」
ノックと、呼ぶ声にリィカは目を覚ました。
「……フロイドさん?」
寝起きの声のリィカに、フロイドは申し訳なさそうに、
「すいません。実は、リィカさんとアレクさんを探している、という方達が来ていまして……、確認して頂けませんか?」
「…………………………………えっ!?」
寝起きの頭でその意味を理解するまで時間が掛かったが、理解した途端、眠気は吹き飛んだ。
急く気持ちを抑えて、フロイドの後を付いていく。
そして、そこにいたのは。
「「「「リィカ!!」」」」
バル、ユーリ、暁斗、泰基。
旅の仲間達だった。
そう言われて、リィカがよほど変な顔をしていたのだろう。
フロイドが、笑って説明をしてくれた。
「今もまさにそうですが、250年前も魔王が誕生したときに勇者様が召喚されました。それが、シゲキ・カトウ様です。
勇者様は、神の国から召喚されている、と一般には言われております。しかし、実のところ、勇者様は我々と同じように、普通に人の世界で暮らしており、意味も分からないままにこの世界に召喚された、というのが真実だそうです。
シゲキ様と一緒に旅をした神官が、魔王討伐後に、シゲキ様を何としても元の世界に戻したい、とここで研究を始めました」
手がかりはあった。
旅の途中で手に入れた魔方陣。
かつて「森の魔女」と呼ばれた魔法使いが作り出したと言われるその魔方陣は、異世界から必要な物を取り寄せるために作られた魔方陣だという。
「……必要な物を取り寄せる?」
「必要な物がある世界に人を送り込んで、それを手に入れたら戻ってこられる陣、と言えばいいのでしょうか」
かつて、病気が流行したが、どうしても治す手段が見つからない。
その時、人々が頼った「森の魔女」が、その魔方陣を作り出した。
病気を治す薬がある世界に行って、薬を持って帰ってこられる魔方陣を。
薬を手に入れて、流行病を根絶させることには成功したが、その魔方陣は危険視された。
悪用するために使用されれば、大変な事になる。
そのため、その魔方陣は闇に葬られた。
その魔方陣を、神官が見つけ出した。
そして、異世界に人を送れる部分を残し、返って来られる機能は消えるように魔方陣を改良し、その陣をこの教会の地下に描いた。
そして、いざ勇者を帰還させようとしたが、魔方陣は発動しなかった。
「――何でですか!?」
思わず身を乗り出すリィカに、フロイドは首を横に振った。
「なぜかは分かりません。それ以降も神官は研究を続けましたが、何が原因なのかは分からないままだったそうです。そのうち勇者様がお亡くなりになり、神官も失意のままに亡くなりました」
聞いて落ち込むリィカを、フロイドは不思議そうに見る。
「この教会は、その神官の遺言によって、残されています。陣は発動しなかったけれど、いつか誰かが完成させてくれるかもしれない。魔王討伐を成し遂げてくれた勇者様を、元の世界に帰してあげられる日が来るかもしれない。だから、このまま残して欲しい、と」
そこでいったんフロイドは口を閉じてから、続ける。
「……実際の所、もういいんじゃないか、という話はありますね。この地に通うだけでも大変なのは確かです。他の誰も来たがりませんが……せめて私がいる間だけでも、その神官の願いを叶えたいのですよ」
泰基と暁斗が召喚されたときのやり取りは、リィカも聞いている。
帰してあげられるなら、帰してあげたい。
「……その魔方陣、見せてもらってもいいですか?」
「ええ、どうぞ」
教会の地下、かなり広い場所に、その陣はあった。
(うん。さっぱり分かんない)
色々と複雑な模様やら線やらが書かれているだけだ。
そもそも、魔方陣自体が一般に知られているものではないのだ。
魔方陣とは何なんだ、という所から勉強する必要があるかもしれない。
「これを書き写したいんですけど、何か書くものを頂けませんか?」
「写すのですか!?」
リィカの言葉に、フロイドはかなり驚いたようだ。
しかし、リィカの真剣な顔に何かを感じたように、考え込む。
「……写さなくても、確か紙に記されたものがあったはずです。ちょっと探してみますよ」
「でも、それだと迷惑が……」
「誰も来ないから、暇なんですよ。気にしないで下さい。――その前に、もう一度アレクさんの回復ですね。リィカさんも一度休んで下さい。ここまで大分無理をしてきているでしょう? 休んでいる間に、探しておきます」
リィカは、少し躊躇ったが、確かに身体はひどくだるい。
素直に休む事にした。
コンコン
「――リィカさん、すいません」
ノックと、呼ぶ声にリィカは目を覚ました。
「……フロイドさん?」
寝起きの声のリィカに、フロイドは申し訳なさそうに、
「すいません。実は、リィカさんとアレクさんを探している、という方達が来ていまして……、確認して頂けませんか?」
「…………………………………えっ!?」
寝起きの頭でその意味を理解するまで時間が掛かったが、理解した途端、眠気は吹き飛んだ。
急く気持ちを抑えて、フロイドの後を付いていく。
そして、そこにいたのは。
「「「「リィカ!!」」」」
バル、ユーリ、暁斗、泰基。
旅の仲間達だった。
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